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ブレワイはいかに初心者をハイラル城本丸へ導いたか


ゲームの目的

ブレワイというゲームの目的、それは「厄災ガノンを討伐すること」である。もちろんこのゲームは自由なので、広い世界を走り回ることや、敵との戦闘、狩りや採集、料理、絶景を見に行くこと、ストーリーを紐解くこと等々、楽しみはたくさんあるが、このゲームのクリア条件が「ガノン討伐」であることはやはり揺るがない。

この文章では、本作が純粋にゲームとしてどういう作りになっているのか、より具体的に言えば、本作がアクションゲーム初心者も含めたすべてのプレイヤーを「ガノン討伐」というゴールまで導くために、ゲーム内の環境や敵、地形などをいかに効果的に設計しているのかを明らかにしたい(いわゆるレベルデザインの話)。

流れとしては、まず典型的な攻略手順に沿って具体的な意図を解釈し、最後に一般的な解釈をしたいと思う。

・本作をクリア済の方が対象
・ゲームの攻略方法自体を示すのが目的ではない
・以下「初心者」は「アクションゲームが苦手な人」を指す
・読了時間 約28分(約14,000字)

ハイラル城直行組が得るもの

パラセールを受け取って、ハイラルの大地に降り立ったとき、すでにガノン討伐が目的だと分かっており、正面のハイラル城にいることも分かっている。行かない理由がない。「実際、行った」という人がそこそこの割合でいると思うが「そのままエンディングを見た」という人はさすがに少数派だろう。

戦力が足りないので、RTA走者並みの操作精度がない限りその時点でのクリアは厳しい。まずそこで「ハイラル城に行く前に戦力を整える必要がある」と気づかされることになる。またハイラル王を始めNPCたちは一様に「ハイラル城は危険だ」と教えてくれるので素直な人ならそもそも行かないだろう。

素直な人のための補足:
神獣を解放せずにハイラル城本丸に入った場合、厄災ガノン戦の前にまず倒していないカースガノンと連戦しなければならない。「神獣解放」のゲーム上の意味は、厄災ガノンの体力をあらかじめ削ること以上に、このカースガノン戦をスキップできるということが大きい。

ハイリアの盾は何のため?

ハイラル城へ直行した場合、そもそも武器が足りないので突入というよりは潜入という形にならざるを得ない。高台に登ればガーディアンの的になり、それから逃れるように自然と地下牢のほうに向かう可能性が高い。そして最深部のスタルヒノックスを倒すと、最強の盾であるハイリアの盾をいきなり入手できる。これで満足して帰っていくというのが大方の流れではないか。

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ハイリアの盾は序盤では明らかにオーバースペックである(新品状態からガーディアンのビームを20発以上耐える)。本来はこれでガーディアンのビームをガードして本丸まで向かいなさいという意図だろう。また厄災ガノンのビームに対してもハイリアの盾が役立つはずだ。

ガーディアンのビームを苦にしない上級者であれば、地下牢には行かず本丸に直行してハイリアの盾には気づかない可能性もある。つまりハイリアの盾が地下牢にある理由は、それを必要とする人はそこへ向かう可能性が高いからだと考えられる。

城内では近衛シリーズの武器も入手できるが、これは能力値が高い代わりに壊れやすいというとがった性能で、やはり厄災ガノン戦のためのものだろう。

序盤のチュートリアルはどこまで?

いわゆる正規ルートと思われるルートについて簡単に確認しておきたい。ハイラル王の指示通りカカリコ村に向かう場合、まず双子馬宿で馬を入手し、カカリコ橋を渡ってカカリコ村に行くのが一番素直なルートとなる(道中にはボックリンもいる)。街道を通ればほとんど障害はない。そこでインパから四神獣解放のクエストを受け、さらにハテノ村のプルアを訪ねるよう言われる。

これも素直に従うなら、まず双子馬宿辺りまで戻り、ハテノ砦を通過してハテノ村まで向かうことになる。道中は敵もいるが街道を馬で走れば全部無視できる。そこでプルアにシーカーストーンの修復をしてもらい、ウツシエとアルバム、ハイラル図鑑が追加される(シーカーセンサーは道中でシーカータワーを起動すれば追加されるが、していない場合はここで追加される)。プルアはゼルダが撮ったであろう写し絵を見て、インパに見せれば何か分かるだろうと言う。

ちなみにインパをスキップしてプルアに会いに行っても「所長は奥(シモン)でございます」と白を切られてしまうので、この時点でインパに会っていないということはない。

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インパに会わずに来た場合の誘導もちゃんとある。

カカリコ村に戻りインパに写し絵を見せると思い出の地巡りのクエストが開放される。これで主な目的地(と移動手段である馬)が出揃うことになるので、ここまでがチュートリアルだと考えることもできるだろう。

なお、このあとプルアに古代素材を提供することでシーカーアイテムの強化ができるが、この中で最も重要なのがビタロック+である。この強化によって敵の動きも止めることができるようになるが、これと古代矢を合わせれば初心者でもガーディアンやライネルに対処できる切り札となる。この時点では知る由もないが。

それからハテノ村の探索を怠っていなければサクラダ工務店のフラグも立てているはずだが、ここで薪の束30個と3000ルピーを集めるという当面の目標値が示される。薪の束については今後たき火でずっと使うので序盤で集めさせるのだろう。

カカリコ村から出てどこへ向かうかと考えたときに、最も近いのはゾーラの里である。しかもご丁寧に村の北側からラネール湿原に飛び立つことができるようになっている。しかしその場合、馬は置いていくことになり、それは道中の敵をスキップしにくいことを意味している。

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カカリコ村北の崖からラネール湿原を望む。

初めての歩行型ガーディアン

初心者にとって鬼門となる歩行型ガーディアン。これと最初に出会う場所として可能性が高いのは、ゾーラの里へ素直に向かった際に通過するラネール湿原ではないか。

ラネール湿原は一面が水辺でアイスメーカーを使用できる環境なので、ここではアイスメーカーを使って隠れることを学べる。プルアのメモに書いてあるので、見逃していなければ早速ここで試せるというわけである。

空中弓からのヘッドショットを繰り返して倒すこともできるのだが、やはり隠れてやり過ごすのが本来の想定だろう。特に道をふさいでいるわけでもないので対峙するかどうかはプレイヤーに委ねられている。

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ちなみに火山に向かう際には登山道をふさぐ形で歩行型ガーディアンが複数配置されている。別ルートもあるが、地形的に一番通りやすいルートに配置されている点から、より存在感を増して対処を迫っているように見える。

しかも登山道の最初のガーディアンの近くには温泉があるのがちょっとした罠である。温泉にはアイスメーカーを使えないのだが、もし湿原でアイスメーカーによる対処を学習したプレイヤーであればここで同じことを試してしまうかもしれない。

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ラネール地方で雨がやまない理由

ルッタが暴れているから。しかしこの文章で求めるのはそういう答えではない。まず崖登りを封じるためだろう。シドによるチュートリアルを迂回されないように誘導していると考えられる。

それから電気属性に関するチュートリアルを行うためというのもあるだろう。シドとの会話イベントをきちんと踏んだ場合、電気属性への警告とともにシビレ薬を渡してくれる。本作では雨天や水辺において電気属性の影響が広範囲に及ぶ仕様があり、ここでそれを教えている。エレキースなど電気属性の敵が多いのはそのせいだろう。

シドの誘導イベントを踏ませるために、ラネール湿原周辺には多数のゾーラ族が配置されている。しかも皆、口をそろえて「シド王子はシーカータワーの近くの橋で待っている」と言う。とりあえずシーカータワーを目指して損することはないのだから、これでシドに出会わないのはひねくれ者だけだろう。ゾーラの里方面を避けてアッカレ地方や森の馬宿に向かう分岐もあるが、そちらへ向かう橋のそばではやはりゾーラ族が待ち構えている。

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余談だが、過去作の時オカやトワプリでは「ゾーラの里の危機」と言えば渇水(凍結)だった。異変を解決することによって水を取り戻すというシナリオ上の意味に加え、水位上昇によって行けるエリアが広がるというゲーム上の意味もあった。しかしブレワイでは里の危機は増水であり、雨が止むことによって崖を自由に登れるようになるという逆転が起こっているのが面白い。
余談の余談だが、雨が止むということ自体が一般的に希望を暗示しているのに加え、ある老ゾーラの台詞に「この雨はミファー様の涙だ」というのがあったり、ミファー自身「昨日までずっと泣いてた」と言っていることから、彼女の魂が癒されたことのメタファーでもあると考えられる。

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最強の垂直移動方法?

ルッタ解放の過程で得るものとして、ミファーの祈りはもちろんシンプルに初心者を助けてくれるが、それ以上に大きいのはゾーラの鎧、その特殊効果である滝登りだろう(ゾーラの鎧も彼女の作だからミファーだけ英傑の加護が二つあるようなものだ)。このゲームにおいて垂直方向の移動手段は貴重である。ハイラル城本丸に向かうショートカットの一つにもなっており、滝登りだけですべての障害をスルーして本丸まで行けてしまう。

滝登りルート。この滝は本丸の堀まで続いている。

それからライネルへの対処を学んだことも貴重な収穫である。雷獣山の電気の矢回収クエストにおいて、倒すにしろやり過ごすにしろプレイヤーの練度に応じて対処法を学んだはずだからだ。

もう一つ重要なのはルッタ戦での空中弓である。シドの背から飛び立って弱点を射るとき、空中弓で狙いを定めることを自然に習得させられている。これは歩行型や飛行型のガーディアンに古代矢でヘッドショットを決めるために必要となる。

ルッタ解放後の進路を考えるとき、徒歩だと来た道を戻るしかないのだが、滝登りの存在を思い出せば、ゾラ台地を越えて北方に簡単に抜けることができる。そこから山麓の馬宿まで飛んでいくのにさほど時間はかからない。つまり次に向かう可能性が高いのはデスマウンテンである。

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ゾラ台地から山麓の馬宿(左下)を望む。

環境が装備のリセットを要求する

デスマウンテンの気候の要点は、まず木とマモノの武器は燃えるので使えないこと。道中で手に入る金属の武器に持ち換えることになる。また、耐火レベルを維持しなければいけない都合上、大妖精でハイリアの服などを強化していたとしても火山では使いにくくなる。

金属の武器は威力も高い傾向なのでこれだけ集めていればいいのかと思いきや、逆に落雷の多いフィローネ地方やアッカレ地方では使いにくいことに気づく。

このように土地の環境が一度集めた装備のリセットを要求するという構造がある。少しでも装備のインフレを抑え、多様な装備を使わせる意図だろう。

ルーダニアの偵察機の意味

火山ではバクダン矢は自爆するので使えない。先にリトの村に行っていた場合、バクダン矢を溜め込んでいるはずだが、もしこれを火山で使えたら少々強すぎる。ユン坊と共に神獣に近づく際に障害となる偵察機のプルペラをなんの工夫もなく倒せてしまうだろう。

プルペラは飛行型ガーディアンに似ている。これをやり過ごすイベントの意図は、ハイラル城で初心者を泣かせることになる飛行型ガーディアンへの対処を予習させることだろう。

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岩オクタの本当の役割?

錆びた装備をきれいにしてくれるというのもあるが、もう一つ大切なことがある。ポイントは岩オクタの倒し方である。岩オクタの吸い込みにリモコンバクダンを投げ込んで起爆するという倒し方。これは明らかに炎のカースガノンの倒し方のヒントになっている。

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炎エリアの敵にバクダンが有効というのはシリーズの伝統でもある。
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実はずっと分からずにいるとダルケルが答えを教えてくれるのだが。

余談だが、公式資料集である「マスターワークス」によれば、この錆びた装備をきれいにするという構想は早い段階であったようだ。当初は鍛冶屋に依頼する形を想定していたが、最終的に鍛冶屋は登場せずオクタを使うようになっている。ちなみに本作のスピンオフである「厄災の黙示録」には鍛冶屋が登場する。

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このタイプのオクタはガードジャスト練習用?

マスターソードをいつ取らせるか

火山攻略後、ゴロンの組長から「退魔の剣は森にある」という情報を聞くことができる。その情報はすぐに役立つ可能性が高い。というのも、次の進路を考えるとき近い順に行くなら次はリトの村を目指すことになり、素直に行くなら一度下山して森の馬宿に立ち寄るはずだからだ。そこで馬宿の老人から迷いの森に関する情報を得られる。

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ちなみにマスターソードに関する族長からのヒントは固定ではなく、これまでに解放した神獣の数によって決まるようである。後半ほど直接的なヒントがもらえるようになる。「森」は二つ目のヒント。

マスターソードは単に強力な武器である以上に、完全に壊れてしまうことがなく、また多様な環境で使えるのが特徴である。これをあまり序盤で手に入れるといろいろな武器を使う理由がなくなってしまうので、すぐには入手できないようにしてあると考えられる。始まりの台地から見たときはハイラル城の裏にあるという地理的な壁と、そこにあることを知るまでの情報の壁がある。さらにたどり着いたとしてもハートが足りないと取ることができない。マスターソードを取るためのハート上限を確保するというのが、先の長い祠探索の中間目標にもなっている。

迷いの森を抜ける際には風の流れていく方へ向かえばよいが、そのためにたいまつの火を使うのが恐らく正攻法である。そして、たいまつと言えば古代炉の青い炎である。プルアとロベリーに青い炎運びを依頼されるイベント、あれは単なるパズルではなく迷いの森を抜けるためのたいまつの扱い方を覚えさせるという意味もあったかもしれない。

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火を灯す、炎を運ぶという課題自体はシリーズの伝統でもある。

ハイラル城北側潜入ルートへ

森の馬宿にはハイラル城への誘導もある。老人はハイラル城には絶対行くなと警告し、若者は北側の船着き場から入り込めるらしいと教えてくれる二面性が面白い。船着き場は森の馬宿からほど近いところにあるので、これに従ってみると比較的簡単に試練の祠までたどり着ける(障害はリザルフォスのみ)。これでハイラル城へのワープポイントを設置できるというのが一番の収穫である。

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船着き場の奥は一見行き止まりだが、マグネキャッチで壁(本棚の裏側)をどかせることに気づけば図書館に侵入できる。図書館から地上に出て道なりに進むと高い塔がそびえているのが目に入るが、この上にゼルダの研究室がある。正門側から向かう場合、研究室は奥まったところにあるが、この北側潜入ルートの場合は目に付きやすい位置となる。

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ちなみにここからパラセールで少し飛べば本丸は目前だが、この塔の周囲には飛行型ガーディアンが旋回しているので、これに対処できない限りは引き返すしかない。研究室にはシナリオ上の重要資料があるので、ここで引き返すことになったとしても不満はないだろう。すでにリーバルトルネードがある場合は飛行型を無視して本丸に直行できる。

初めての飛行型ガーディアン?

リトの村へ向かうためには巨大なククジャ谷を越える必要がある。北から迂回するルートもあるがマップ入手前では気づきにくいだろうから(ヘブラの塔は対岸にある)、普通は南のタバンタ大橋から渡るだろう。

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橋を渡ってすぐの所には二体の飛行型ガーディアンが旋回しており、ハイラル城でいずれ対峙する飛行型への対処を予習させられる。アッカレ砦でも似たような体験はするが、いずれにせよ最も見逃しようのない位置にいる飛行型である。この時点で初心者がこれを倒すのは難しいだろうが、単にやり過ごす方法なら火山のプルペラへの対処で予習している。

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必修テクニック空中弓

テバを説得するために飛行訓練場で空中弓のテストを受ける。このテストの基準は控えめに言って相当甘く設定されており、多くのプレイヤーは何を今更と思うかもしれない。

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しかし、ここで全員が確実に空中弓を覚えさせられるということに意味がある。初心者でもハイラル城本丸までたどり着けるように古代矢が与えられているとしても、当てられなければ意味がない。特に動き回る歩行型や飛行型のガーディアンに対してヘッドショットを決めるのは初心者でなくとも難しいのである。しかし空中弓を覚えれば難易度はぐっと下がる。

メドーの謎解きが簡単な理由?

リーバルトルネードにはこの空中弓を平地でも使えるようにする意味もあるだろう。リーバルがこの技を開発した経緯からして本来は移動手段ではなく戦闘テクニックなのだと考えられる。よって空中弓の起点に使うのも本来の使い方であると言える。

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またもちろん垂直移動手段としてのリーバルトルネードも非常に強力である。滝登りと同じくこれだけでハイラル城本丸まで行けてしまうと言っても過言ではないし、また他の神獣内部の謎解きも一部スキップできてしまう(特にナボリス)。神獣の謎解きは進行不可になる可能性がある数少ないポイントだが、そこに関しても救済措置が設けられていると言える。そして肝心のメドーの謎解きは四神獣の中で恐らく最も簡単に作られている。

なぜゲルドの街にはすぐ入れないか

様々なことから考えて、やはり砂漠は四つの地方の中で一番最後に向かうべきエリアとして設計されているように思う。まず険しいゲルド高地に囲まれており、地形的に入りにくくなっている。さらに仮に入ったとしても、暑さが障害となる。

もちろん火山でも気候対策が要求されるのは同じだが、あちらの場合、料理効果に頼らず強引に集落まで行き服を購入してしまうこともできなくはない。そして服さえ手に入ればもう燃えず薬は不要だった。

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しかしゲルドの街ではなんと門前払いを食らってしまう。今までのような力技は許されないのである。さらにようやく街に入ってもすぐには服が買えないという徹底ぶり。女装にも耐暑効果があるが防御力がほぼゼロなので心もとなく、料理効果に頼ることをより強く促されている。

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一応、アクセサリー屋に火打ち石10個を渡すとお礼として耐暑効果のあるサファイアの頭飾りをもらえるが(正確には三種の中から選ぶ)、これは火山でハイリア人観光客にヒケシトカゲ10匹を渡して耐火装備をもらうイベントとよく似ている。

ヒケシトカゲは燃えず薬の素材だったが、火打ち石にはもちろんヒンヤリ効果はない。しかしよく考えてみると、火打ち石(と薪の束)があればたき火ができる。そして夜間行動を徹底すれば砂漠の暑さはしのげるのである。そういうわけで結局この二つのイベントは同じ構造をしている。

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ちなみに見出しの問いの答えはシナリオ的には「リンクが男だから」だが、また時オカの話をすると、時オカではゲルド族は基本的に敵だったので、そのアジトには敵として潜入しなければいけなかった(ちょうど本作でイーガ団のアジトに潜入するのと同じ感じである)。事情は違えど本作でもゲルドの街に潜入する形になるのはシリーズのお約束ということかもしれない。

四神獣解放した! しかし・・・

四神獣を解放しても、今までガーディアンやライネルからは逃げの一手を打ってきたとしたら、ここで行き詰まることになる。ハイラル城にはガーディアンがうようよしており、特に飛行型への対処は初心者泣かせだろう。ガーディアンをうまくかわしたと思って二の丸や三の丸に入れば閉じ込められてライネルと戦う羽目にもなる(実際には滝登りやリーバルトルネードでスキップしたりビタロックで飛んでいくなど手はたくさんあるが)。

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これらの問題に対して根本的解決をもたらすのが古代矢である。古代矢は宝箱からも少し手に入るが、基本的にはアッカレ地方のロベリーに頼ることになる。ロベリーについては序盤でプルアから聞いているはずだが、忘れていたとしても、プルアから古代素材の提供を求められていたことを覚えていれば、ハテノ村に戻る動機はある。

シーカーアイテムの強化をすべて済ませるとプルアから様々な情報を聞けるようになり、その中でロベリーが古代兵装の研究をしているという話も聞くことができる(実際は最初にプルアにシーカーストーンの修復をしてもらった時点ですでにロベリーも解禁されている)。

またこのときには3000ルピーくらいは稼いでいるだろうから、ハテノ村の家を購入してサクラダ工務店のイベントを進め、アッカレ地方へ向かう動機付けも強化されるだろう。

プルアとロベリーに古代素材を提供するにあたって「初心者はガーディアンを倒せない」というのがネックになるのは当然だが、ハテノ砦周辺やアッカレ砦近くのターリン湿地などにガーディアンの残骸が大量にあるので、そこで拾い集めることができるようになっている。

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ターリン湿地には歩行型2体を含む動いているガーディアンもいるが、雨が降るとラネール湿原と同様アイスメーカーが使用できる環境になるので、初心者でも安全に素材収集ができるようになっている。

また、ダルケルの護りがあれば盾を構えているだけでビームを反射して倒すことも出来る。ダルケルの護りは連続して3回まで使用できるが、これがちょうど歩行型1体をビームの反射のみで倒しきれる回数であるのは偶然ではないだろう。初心者がこれだけでハイラル城へ行くのは心もとないが、古代矢の素材収集用だと考えれば納得できる。

「アッカレ地方には何もない」

アッカレ地方のロベリーを訪ね、古代兵装(というか古代矢)を生成できるようになること。結果的にこれがハイラル城攻略の難易度を大きく下げてくれる(初心者でもクリアできる程度まで!)。

しかしアッカレ地方への誘導は少ないため、ひねくれたプレイヤーでなければ序盤から迷い込むことはないだろう。ちなみに序盤にいきなり行っても研究所にロベリーは不在である。主な誘導はサクラダ工務店のイベントによってされるが、まず家の代金として3000ルピーを払う必要があるため、序盤ではハードルが高い。

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ロベリーのフラグが立つ瞬間(シーカーストーン修復後の会話)

また地形的にも南方にはゾラ台地がそびえ、西方にはデスマウンテンが阻むという、入りにくい作りになっている。ゲームの終わりを確実に近づける古代兵装の入手は、やはりすぐにされては困るということだろう。

実際にはアッカレ地方に行く方法はたくさんあるのだが(ラネール湿原からアッカレ砦の横を抜けていく街道が普通にあったり、ゾラ台地の東の海岸線にアッカレ地方に直通の抜け道が存在したり、ラネール湾からイカダで行けたりする)、どれも初見では気付きにくいようになっている。ゾーラの鎧入手後なら滝登りでゾラ台地を越えていくこともできるが、いずれにせよ動機付けが乏しい。それは意図的なのだろう。

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数少ない誘導のひとつ。

余談だが、アッカレ地方は環境的にもやや厳しい設定になっている。一見穏やかに見えるが雷雨になることが多く、金属武器が使いにくいのがまず一つ。それから至る所に落ち葉が敷き詰められているせいで敵に気づかれやすい。またファイアキースがよく湧くので延焼しやすいなど。

ハイラル城予行演習場?

アッカレ地方のシーカータワーはアッカレ砦跡の頂上にそびえる。ここは飛行型ガーディアンが多数旋回しており、ハイラル城への潜入シミュレーションと言えなくもない。初見でクリアできなかった場合、先にロベリーを訪ねて古代矢を調達してきてから、ここで試し撃ちするというのが基本的な想定ではないか。アッカレ地方のマップ自体はさほど必要性がないという点もその印象に拍車をかけている。

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力の泉周辺にも飛行型ガーディアンが湧くので飛行型への射撃を練習できる。

そしてハイラル城本丸へ

初心者を含むすべてのプレイヤーがハイラル城本丸にたどり着けるように、これだけ至れり尽くせりのアイテムとチュートリアルが提供されているというわけである。しかも紹介したのはほんの一部であり、実際には試練の祠などでも無数のチュートリアルが施されている。

ガーディアンをやり過ごす方法はずっと学んできたし、万が一見つかっても古代矢で倒せるし、エイムが遅くても空中弓があるし、ビタロックを使う手もある。ダルケルの護りで弾くことも出来る。ハイリアの盾を取っていればガードだけでしのぐこともできる。

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平原の歩行型はビームが草地に当たると上昇気流が発生するので、
古代矢があれば空中弓で倒しやすいようになっている(馬からジャンプしてもいい)。

肝心の厄災ガノン戦だが、これはこれまでのカースガノンと歩行型ガーディアンとの戦いを思い出せばよい。すでに四体のカースガノンを倒したのであれば必ず倒せるようになっている。さらにそのあとの魔獣ガノン戦だが、こちらはこれまでの神獣戦を思い出せばよいようになっている。馬上から弓を射るならナボリス戦、ジャンプして空中弓を使うならルッタ戦を思い出せばよい。完全に新しいことは何も要求されていない。

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ナボリス戦は魔獣ガノン戦の予習?

ここまでのまとめ

後半はなんだか攻略サイトのようになってしまった感もあるが、言いたいのは、とにかくこのゲームは初心者をゴールまで連れていくのに本気だということだ。本作は自由なゲームだと言われるが、決してプレイヤーに丸投げではなく、むしろ何パターンも想定してどう行っても最後にはゴールできるように考えられていると思う。

私は3Dゼルダは時オカから全部プレイしてきたが、少なくとも本作以上に初心者にやさしい作品はないと思う。子供の頃にやった時オカやムジュラは謎解きで詰まりながら何か月もかけてクリアした記憶があり、それはもちろん最高の体験だったが、私が幸運にもクリアできたからであって、中には途中で断念した人もいたことだろう。
もちろんブレワイだってクリアできない人がいないとは言わない。しかし以前よりずっと親切な作りになっていることは客観的にも間違いない。特にアクション、敵を倒すことに関しては・・・これは自転車の乗り方みたいなもので、出来る人にとってはなぜ出来ないのか分からないが、出来ない人はどうしても出来ない、そういうものだろう。それを見捨てないで、何とかゴールに連れて行こうという覚悟を本作には感じた。
今までのゼルダでは、事あるごとに密室に閉じ込められて敵をすべて倒さないと出られないというのがお約束だったが、アクションは苦手という人にとってはストレスでしかなかったかもしれない(私の父などはその典型で謎解きだけやらせてくれとぼやいていた)。しかし敵を弱くするのではアクションが好きな人を遠ざけてしまう。そこで敵は据え置き、あるいは強化さえしつつ「でも戦わなくていい。戦ってもいい」と選択肢を与えたのが画期的なのだと思う。

結局のところ本作において初心者の壁となるのはハイラル城のガーディアンなのだが、これに対しても空中弓や古代矢、ビタロック、アイスメーカー、リーバルトルネード、滝登り等々、倒すことに限らない多様な対処方法が用意され、その全てが道中で自然に学べるようになっている。

謎解きについても、たったひとつの謎が解けないだけで進行不可になってしまうことはほとんどない。可能性があるとすれば神獣内部とイーガ団アジトの謎解きだが、これらも完全に新しいものは少なく、ほとんどは試練の祠の謎解きの応用となっている。また神獣の謎解きについてはリーバルトルネードで一部スキップしてしまうことも許されている。

以下ではストーリーラインを離れて本作の構造についてより一般化した話をする。

なぜ敵と戦うのか

本作では進行上避けられない戦闘というのはほとんどないが、なぜ戦うのだろう。戦闘はアクションゲームの醍醐味だからというのはひとつの答えだが、この文章の視点ではない。純粋にゲームとしての目的は、戦った後に何を得たのか考えれば分かるはずだ。

このゲームにおける戦闘の結果とは敵の武器を奪うこと、そして敵の素材を回収することである。ガノン以外の敵は倒す必要がないとは言っても、武器がなければガノンは倒せない。そしてその武器は基本的に敵から奪う必要がある。また、防御力を高めるために服の強化も必要だ。これには大妖精を開放する必要があるが、大妖精はまず開放のためにルピーが必要で、さらに強化のために素材を要求してくる。敵の素材は売ってルピーにするほか、そのまま大妖精に渡すためにも使うことになる。こういうわけで、敵と戦う意味がある。

ちなみにガノン以外でどうしても無視できない敵としては(四神獣解放を目指すのは前提として)、火山の大砲使用時に邪魔になるモリブリン(倒さないとユン坊が怯えてしまう)とプルペラ、それからコーガ様(倒さないと雷鳴の兜の宝箱が出現しない)がいる。その他、神獣内のギミック解除のために怨念の目玉を倒す必要があったりする。逆に言えばそれ以外は全部無視できる。

何をやっても無駄にならない

上記のようなことは、本作をクリア済みのプレイヤーならば今更の確認と思うか、あるいは「言われてみればそうだ」という感じかもしれない。実際、これら全体の流れについて作中で特に説明されることがないので意識していないとしても無理はない。

しかし仮に意識していなくても、このゲームの中で何かをすれば、それはゲームを進めることにつながっている。アイテムにしろマモノの素材にしろ、最終的には装備を強化するのに使うことになる。もちろん使いきれないときもあるだろうが、ルピーに換えることはできる。このゲームで決められているのはゴールだけであり、その過程には制約をほとんど感じさせないが、逆に言うと、何をやっても無駄にならないようになっているとも言えるだろう。

おそらくアクションゲーム慣れしている人ほど、深く考える前にクリアしてしまっていて、これらの構造について考える機会を持てない気がする。

ライネルの本当の役割

上級者にとっては自身の戦闘技術を存分に振るえる格好の的であるライネル。しかしそれが本来の役割ではないことは明らかだ。彼らは基本的に街道から離れたところに分布しており、正規ルートを外れそうになった初心者プレイヤーを足止めするように配置されている。わざわざ立ち塞がって「こっちは正規ルートじゃないよ」と教えてくれているのだ。

たとえばカカリコ村でインパに別れを告げた後、初心者が気まぐれにラネール参道のほうへ向かったとしたら、そこにライネルが待ち構えている。もちろん迂回することも倒すことも可能だが、普通はまず歯が立たないだろうから「こんなのが正規ルートにいるわけないよな・・・」と察することができるだろう。

ちなみにこのライネルの手前に記憶のスポットがあるのでウツシエのヒントでここまで来る可能性は割とあるが、ライネルを越えたとしてもラネール山では耐寒レベル2を要求されるのでどのみち序盤では進みにくいようになっている。

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初心者を追い返す優しいライネル

なお、最後までライネルを倒せるようにならなくてもこのゲームはクリア可能である。ルッタ戦で使う電気の矢を集めるために雷獣山のライネル討伐へ行くイベントがあるが、あれはライネルと対決しなくとも落ちている矢を拾うだけで必要数を回収できるようになっている。またハイラル城内でもライネルが出現するがこれも迂回すればいいだけだ。あるいは古代矢で一撃で倒すこともできる。

移動コストによる誘導

本作では決められたルートというのはなく、崖だろうが川だろうが自由に越えていくことができる。しかしある程度慣れると結局街道を通ることが多くなっていた、という覚えはないだろうか。

崖や川を越えることができるからと言って、そこに何のコストも無いわけではない。馬に乗っていたら下りなければいけないし、越えるのだって相応の時間がかかる。結果的に街道を馬で駆けたほうが早かった、ということもあるかもしれない。何かどうしても回避したい障害があるとか、明らかに直線距離を行ったほうが早いとかいう状況でなければ、移動のコストに見合わないのだ。

しかしそういったコストの判断の結果として街道を通るのと、単にシステム的に崖や川を通ることができないから街道を通るのとでは、雲泥の差がある。そこを道と決めたから道なのではなく、そこが通りやすいから道なのだ。本作はそのリアリティをゲームの中で表現してくれた。そしてこの移動コストの設定が、プレイヤーを正規ルートへ緩やかに誘導しているように感じる。また、先述のライネルの配置に関しても、広義の移動コストであると考えることができるかもしれない。

この話はきちんと考えようとすると大変難しく、たとえば崖を登るのは時間がかかるけれども、その過程で採掘が捗ったり、コログを見つけたりするかもしれない。そういうことまで含めると正解を決めることはできないだろう。でもそれが面白いんじゃないか!

すべてはハイラル城攻略のために

結局ゲームクリアのために本当に必要なのはガノン討伐だけなのだ。RTA走者がしているように。逆に言うとそれ以外の要素はすべてその準備であると言っても過言ではない。最初が難易度100なら、それを50まで下げるか、10まで下げるか、プレイヤーに委ねられている。準備はアイテムを集めることだけでなく必要なテクニックを習得することも含んでいる。

もっとも実際には、この楽しいゲームを終わらせたくないばかりに自分の適正難易度より大きく下げた状態で決戦に臨むパターンが多そうではあるが。【終】


追記(2023年5月) 
この記事は2年前に書いたのですが、ありがたいことにティアキン発売前後にけっこう伸びていました。いま新作プレイ中ですが、ここでは「生活リズムが崩壊した」とだけ。検証が済んだらまたこのような記事を書くかもしれませんが、ゲームのボリュームがボリュームなので・・・また皆が忘れた頃にひっそり投稿することになりそう。→投稿しました。

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