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働く事とは何かを考えさせられた10年前の話

年末に年末感の無いお話を一つ。

かれこれ10年前の話です。東日本大震災が起きた当時の事。

何が起きたのか?

当時、ガラケーのコンテンツを扱う会社でデザイナーとして働いていた頃、2011年3月11日。お昼ご飯を食べ終わって会社に戻りエレベーターに乗ろうとした瞬間に大きな揺れを感じました。慌てて会社の外に出ると電線が大きく波打ち、近隣の会社からも人がゾロゾロと出てきました。ただごとでは無いなと思ったのと、エレベーターに乗ってなくてマジで良かった、と思ったのを覚えています。同僚も会社から出てきて、しばらく会社近くの神社に避難をしていました。当時はまだ今ほどスマホも普及していなかったのでガラケーのワンセグでニュースを見ていたのですが、いまいち情報が掴めない。
時間が経ち会社に戻ると書類がオフィスに散乱していた気がします。

交通機関も麻痺していて、その日家に戻れたのは深夜の3時。人生の中で一番長い夜でした。ちなみに余談ですが、途中まで一緒に帰ってた当時の上司はあろうことか移動中にこむら返りをブチかまして、しばらくの間あだ名が「こむら係長」になっていました。「俺のことは置いていけ!」みたいな事を言ってたような気もしますが今も元気でたまに会うので笑い話になって良かったなと思います。

翌日から2週間ほど自宅待機を命じられました。今でこそリモートワークが普通になっていますが、当時は本当にただの休みでしかなかったです。仕事も出来ないし、まあいっかラッキーぐらいに思っていたのですが、自宅待機が解除され出社して環境が変わった事を思い知らされます。

半分の人間がいなくなる

出社をして会議室に集められたのですが、どうも人が少ない。これは一体何事か?と思った矢先、暗めのトーンで社長が「今日ここにいる人たちは残る人たちです」と開口一番私たちに伝えました。あぁ、そういうことか。

その当時の会社は、コンテンツ配信やEC事業を中心としたビジネスを行っていたのですが、震災の影響により物流が完全に麻痺していました。その結果として今後の売り上げ見込みが壊滅的であること、手元のキャッシュが持たないという事、が主な理由でした。月額コンテンツのビジネスを担当していたものの、スマホのシェアが伸びていく中でガラケーの月額サービスの客単価や継続率の下落は止めようにも止められない状況という事も分かっていたし、それにブレーキをかけるような打ち手も取れていなかったので理屈としては分かっていたつもりでした。

ただ、これまで一緒に働いていた同僚に会う事もなく、いきなり明日から一緒に仕事をしていた同僚がいなくなる事に対して納得できるかと言えばそんなことはなく、怒りと寂しさを感じました。

社長や上司を責めるつもりもないし、何より残った事に対しての安堵が無かったとは言えません。ただ、ぽつりと虚しさを抱えたのです。27歳の僕は。

それから一週間

会社を去る事になった同僚がぱらぱらと荷物を取りにきます。残った側としてはなんて声をかけていいのか、そもそも声をかけていいのか。オフィスにはこれまでに感じた事のない気まずい空気が流れ続けてます。

一人の同僚が荷物を取りにきた時に社長がしばらく続いているこの空気に耐えられなかったのか「もうちょっと働いていけば?」と声をかけたのを僕は聞き逃しませんでした。人間、極限状態になると何を言い出すのかわからないのだなあと思いました。マジでフロアの空気凍りつくからヤメて。

責任を持つという事、自立するという事

この時、僕が学んだことは3つです。

組織に属している事に安心してはいけない
だから自立し続ける必要があるということ
そのために責任を自分で持つということ

どんな仕事をしていようと、どんな肩書きであろうと、組織に属して給料をもらっている以上どうしてもアンコントローラブルな事からは逃れられません。安直に独立しろとか、起業しろとかそういう話ではありません。ちゃんとそれを認識しているかどうかが大事だと思うのです。

あの時、会社を去る事になった人たちが、それが出来ていなかったとは思いません。誰が離れた地の震災で自分の仕事がなくなるなんて想像できたでしょうか。ただ、僕は会社に残ったのと同時にとても強く感じました。良くも悪くも会社は何もしてくれないのだ、と。

あれから10年、世の中は想像している以上のスピードで変化をしてきました。転職自体の意識もかなり変わったのではないでしょうか。実際に企業と労働者の需要と供給のバランスも変わってきています。

だけど結局の所、自分が何をしたいのか、という軸がなければ所属している組織の都合に振り回されてしまうのです。本来、仕事とは働いた対価として金銭や経験を得るものです。そこに上下関係は本質的には存在しないのです。

まとめ

結局僕はその事をきっかけに転職活動をして、別の会社に移りました。その時はちょうどスマートフォン向けのサービスを作っていたのですが、特定のドメインではなく、色んなサービスを作ってみたいという気持ちが強くなっていたので、社長の凍りつくような一言はあくまできっかけです。

それから色んな経験を重ねて自分のやりたいことは何か、というのを意識しながら仕事を続けています。やりたい事を強く望むのはワガママではありません。もちろん、やりたくないことはやらないという意味ではないですが、しかしそれでも自分の軸を持ち続ける事は絶対に必要だと思います。

自分がやりたい事や今後のキャリアを意識するのに連休に少し時間を取ってみるのも良いかもしれません。

デザインやサービス改善、転職ノウハウを実体験を元に書いています。サポート頂けたら嬉しいです。