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「夜叉の都」伊東潤

さる重要な件で伊東潤さんと連絡を取り合い、その際、新刊ですといただいたこの「夜叉の都」。
凄まじい本だった。遅読の自分があっという間に読了、というよりページを捲るのを止めさせてもらえなかったと言った方が良いかもしれない圧倒的な情報量と速度感。
小学生の頃、夢中になって読んでいた歴史全集の中でも、たぶん数十行で片づけられていた鎌倉三代が、こんなはっきりとした形で甦り、時系列、人間関係などか激流のように頭の中に飛び込んでくるとは思わなかった。
しかし身の毛もよだつほどの凄惨な現実、下剋上の嵐が暴れ始めた鎌倉の武士たちの事件。諍いの解決はすべて殺し殺しの連続。
親子だろうと親戚だろうと一度猜疑心を抱けばそこに殺しのための権謀術数の吹き荒れる鎌倉の府。
あっという間に消え去る頼朝の死から、この本では無意味な戦いであったとされる承久の乱まで尼将軍北条政子の戦は続く。
自分にとっては最大の下剋上とも言える朝廷の錦旗を打ち倒し後鳥羽上皇を隠岐に流し、そしてその姻戚関係までをも各地に配流してしまい、無敵だった朝廷を無力化させ武家の時代を作り上げてしまった承久の乱。保元平治の乱に続く最も重要な戦いだったと思っている。
平安貴族の時代から戦国時代を経た武家の終焉まで、その礎を担った鎌倉に流された血、血、血。
これは姉妹作でもある「修羅の都」も読まずばなるまい。

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