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中学三年生の頃だったかな…の続きの話

続きの話だが、この時、オレは初めて触ったギターというものを左手で弾いていたのだった。
小さいときはオレは右利きだったはずだ。ちょっと大きくなって野球に興味を持ち始めオヤジのピクニックなどに連れて行かれると、誰も遊んでくれないので、ひとり野球をやっていた記憶がある。
ひとり野球というのは、見えないボールをピッチャーのオレが投げ、その見えないボール(大リーグボールか?)を、今度、バッターボックスに移動して打ち、今度は外野に回ってその打球を受け、ファーストに投げ、またバッターボックスへ戻り、今度はファーストへ滑り込むといった、とてもエネルギーのいる遊びであったのだ。
当時、オレはかなりの赤毛で、オヤジの仲間にはアメリカ人も多く、周りの日本人からはまったく外人扱いされていたように思う。
家の前でオヤジとキャッチボールをしたり近所の友達連中と野球をやっていたりすると、オレの下手さ?に音を上げてなのか、オヤジはオレのグローブを右手に持たせるように仕向けてきた。そう、その時、オレは左ギッチョに矯正させられたのである。
時が経った後、理由がわかった。すごく単純明快な理由であった。
オヤジは当時、国鉄スワローズに在籍していた往年の左腕の大投手、金田正一の大ファンであったのだった!
左ギッチョが右利きに矯正されるという話はよくある話だが、普通の右利きが左ききに矯正させられてしまうとは・・・!
世の中、右利きと直毛中心に回っているものだ。シャンプーのコマーシャルで、クセッ毛のモデルが出てきた試しはないし、駅の改札口を通る時はいつも横向きにカニ歩きで切符を自動改札に入れねばならない。自動販売機も電話も、ギターのチューナーもすべて右利き用に作られている。
毎年9月16日に、グラムロックイースターというイベントを一緒にやっている秋間経夫は、マーク・ボラン大好き人間なので、実は直毛なのにわざわざずっとパーマをかけていると知ったのは極々最近の話だ。オレも随分と直毛には憧れたし、いまでもストパーをかけたいという誘惑が周期的に訪れる。
雨が近いときはクセがひどくなり、自動的に湿度を感知するらしく、これは便利だと思ったこともあったりしたが、やっぱり風にサラサラとなびく直毛には憧れてならない。
みんな、ないものねだりの人生を送っているのだが、今度生まれて来るときには是非、直毛で生まれてきたいものだ。

※このテキストは、かつて第一興商の音楽ファンサイト「ROOTS MUSIC」に連載されていた文章に、大幅に加筆修正したものです。


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