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会社のアイスがしょぼくなった、その後日談

本記事はゆる言語学ラジオ非公式 Advent Calendar 2023 の13日目の記事です。昨日の記事はAchi Fujimuraさんの『新しい私のかたちうつしだす、認知の光あつめる鏡』でした。明日はken-ichiさんの『ゆサD統計データ2023』です。

この記事は、自分が異国で職を失い、職を手に入れた体験談です。


序章「会社のアイスがしょぼくなった」

朝目が覚めて、携帯に手を伸ばして目に入ったのは、個人メール宛に会社からの通達だった。笑いが出た。3月中旬の天気のいい朝だった。

長年勤めてきた会社からの無慈悲な通知ではあるが、どこかで予想していた自分もいて、全然驚きはなかった。それでも身支度して出社した。今日は仕事の進捗をプレゼンする予定だったから、そのプレゼンを引き継ぎに変更するだけだ。

引き継ぎのミーティングは問題なく終わり、さて別れる挨拶をして回ろう。親しい同僚、お世話になった人たちに回っていったが、日本からスイスへの転勤のための受け皿になってくれた元のマネージャーのところに回ったら、涙が初めてこぼれた。そうか、驚きがなかったのではなくて、ショックのあまりに感情に気づかなかっただけか。

その翌日は「ゆサD」で緊急ラジオをして、堀元さんに質問攻めにされて、サポーターコミュニティのみなさんに聞いてもらい、ある程度頭の整理もついた。

さて、ニート生活を満喫するか!ともいかず、外国人の身なので職がなければ在留許可も出ない。今回の記事は短期ニート期間でしたことと、スイスでの就活について書きたいと思う。

あこがれのニート生活

振り返ってみると、首になったけど退職金もかなりもらったし、再就職サポートもあるし、まだなんとかなる。が、まず憧れのニート生活を送りたい!大学を卒業してから長期休暇がなかったため、短期間だけでも1ヶ月ぐらい再就職のことを考えないことにした。

1ヶ月は長くない。でもやりたいことが山ほどある。

まず、北欧に住んでいる友達に会いに行くことにした。2020年の夏に行く予定だったが、某感染症のせいですべての計画が台無しになり、今に至った。が、時間ができたから行こう!そして、時間があるから飛行機じゃなくて電車で行くことにした。ドイツ縦断する電車でとても長かったが、とても楽しく過ごせてとてもよかった。

そして、スイス横断ハイキングの長期企画を6ステージほど進められてとてもよかった。平日もできる身になったから人も少なく快適にハイキングできた。

「ゆさD」での活動もいくつかできた。時差のせいでこちらの夕方は日本の深夜なので、ラジオの企画などはできなかった。今は昼の時間でもコミュニティに参加できるため、「ゆるタイ語ラジオ」を3回と「がちアルゴリズムラジオ」を3回開催した。

こんな感じで1ヶ月半の月日が経ち、そろそろ本格的に就職活動を始めなければならなくなった。

就活

必然性

退職金を1年分ぐらい手に入れた。貯金に気にしなければ単純計算で1年間かなり優雅に遊んで暮らせる。それのに、なぜすぐに仕事を探さなければならなかったのか。答えは路頭に迷わないため、滞在許可のためだ。

海外で生活するために基本的に、めっちゃお金持ちであるか、現地の人や滞在許可所有者の配偶者であるか、留学しているか、仕事しているか、という条件を満たさなければなりない。もちろん、長く住んでいたら永住権というものが手に入れることができるが、悔しいことに5年の滞在歴という条件を満たすまでに半年足りなかった。そのため、無職期間を最小限にしなければならない。

準備

日本での就活と比較したいが、日本での就活経験は無に近いため、自分の経験を語るしかない。みなさまの転職や移住の役に立つかどうかはわからない。

準備とは面接に招いてもらえるようにすることだ。そのために、以下のことをした。

就活用の写真をとってもらった:日本によくある証明写真ではなく、スーツを着て、背景が明るく、自信満々の満面の笑顔の外資系社員(自分もそうだが)の SNS プロフィール写真を想像するといい。

履歴書を書く:自分の仕事歴を振り返り、企業側の立場に立って、どのように書けば採用してもらえるかを考えて書いた。ただただ学歴や職歴だけでなく、その一つ一つどんなことに成功したかとか、何を学んだかとかをできる限り多くかつ簡潔に書くことがとても大事だ。専門家としての自分の来歴を振り返るいいチャンスだった。

LinkedIn のプロフィールを改善する:就活といえば LinkedIn だというところがある。知らない方もいらっしゃるかもしれないが、LinkedIn はプロフェッショナルに特化した Facebook みたいな SNS だ。みんなの投稿が仕事関係、意識高い系ばかり。見るだけで自己肯定感が下がる一方だが、必要悪だと思って自分のプロフィールをブラッシュアップした。

募集を探す

ソフトウェアエンジニアという専門はチューリッヒという都市に相性がいい。というか、今はどこでもソフトウェアエンジニアが募集されているが、チューリッヒはスイスの中で募集している会社のバリエーションが豊かだ。

スイスといえば銀行業。ソフトウェアエンジニアを募集している。

スイスといえば保険屋。ソフトウェアエンジニアを募集している。

スイスといえば連邦工科大学。大学からのスタートアップも多い。ソフトウェアエンジニアを募集している。

ただし、スイスは物価が高いため働きたい人が多い。しかもスイス人やすでにスイスに住んでいる外国人だけでなく、ヨーロッパの国民の多くは、他の地域の国の人たちよりずっと簡単にスイスで働けるため、競争率はその分高くなる。

また、募集の数こそ多いが、チューリッヒの公用語であるドイツ語が条件のところも当然多い。恥ずかしながらドイツ語圏に住んで4年半、ドイツ語で仕事をする自信はない。今までの仕事はずっと英語でやってきて、ドイツ語は必要なかった。東京で働いていたとき、長く東京で勤めてきたのに日本語ができない外国人の同僚に対して、なんで日本語ができないのか、という内心は自分に適応されて悔しい反面、同僚たちに対する同情も感じる。

このような状況下、自分の条件に合っている会社は、海外の会社か、スイスの新しい会社かになる。銀行や保険会社はほとんど排除された。

探し方は主に LinkedIn。この際だからプレミアムにも加入した。自分の職歴やスキルを入力したらそれに合う募集の一覧が見られて、プラットフォーム内でも応募できる。投稿さえ読まなければ便利はところだ。

応募

よし、応募!になってもすぐは応募できない。応募する会社に応じて履歴書をその応募要項に寄せる作業もある。

履歴書が一般的すぎると、特別感がない。「私はあなたの会社とばっちりあってますよ!採用しないと損ですよ!」というアピールもしなければならない。これもまた大変だ。

あれこれして、総応募数は20ぐらいだったかな。半分程度はスタートアップ。それ以外は英語で働ける会社。分野もさまざま。金融、ヘルスケア、インフラ、電子機器メーカー、機械学習に基づいたサービスなど。

面接

面接に招待されたのは6件だった。それ以外はお祈りメールが来たか、音信不通になったか。そういうものかな。ある元同僚の話によると「100:10:1」という法則があって、100件応募して、10件面接に呼ばれ、1件に採用される。こうみると自分の場合はよかったかもしれない。

面接は似たようなパターンだ。書類で通過したらスクリーニング面接。だいたい人事部の人か採用エイジェントの人か。ちゃんと質問に答えられたら難しくない気がする。職歴や経験の質問がメインで、会社に絶対あわない人でない限り大丈夫だろう。

次は技術面接のステージだ。各社に対して2-3回程度。変態に聞こえるが、この段階は正直楽しい。このようなバリエーションを経験した:

プログラミングコンテスト型:グーグルなどの大企業でもこのような面接を行っている。問題や答えがちゃんと定義された課題に対して、それを解決する簡単なプログラムを書けというもの。日本では AtCoder が有名、海外だと LeetCode なところ。アルゴリズムやデータ構造に関する知識やスキルが問われる。

実装型:一見プログラミングコンテスト型に近いが、問題はもっと現実的なもの。プログラムが与えられて、このように改善しろというもの。または、ゼロからこのようなものを作れというもの。アルゴリズムやデータ構造を見るよりも、ソフトウェアエンジニアとしての経験や実装力が問われる。

システムデザイン型:このようなサービスを作りたいから設計しろというもの。実際にコードを書かないが、ホワイトボードで設計図を書いたり、面接官とディスカッションをしたりして、設計するもの。ソフトウェアエンジニアとしての経験や設計力が問われ、仕事や議論のスタイルも見られる。

質問型:何々を説明しろというもの。これも様々な亜種があって、「何々を使ったことがありますか」、「何々のシステムを説明してください」、「何々のスキルというのは何ですか」。特定なものから全体像を問うもの、またはエンジニアとしての心構えみたいな質問もある。

面接に招待された6件の中で、最初の技術面接の段階で落とされたのが1件、最終面接まで進んだ2件の中で1件オファーがもらえ、それで決まったので残りは自分で脱退することにした。

最終章「アイスはないけど楽しい会社」

まあまあうまくいったと思う。オファーをもらった会社に7月下旬に入社した。オファーから入社までの期間も行きたかったアイスランドにも旅行できた。(5月まで元の会社に在籍することになったため)無職期間は(ギリギリ)3ヶ月未満だから、永住権を申請したら数週間で届いた。路頭に迷うこともなく、帰国する羽目になることもなく、無事で生活を続けられてよかった。

ニート期間中、ゆさDコミュニティにたくさん参加できたし、旅行もできたし、楽しく過ごせてよかった。

入った会社はスタートアップで給料は下がり、大企業出身から見たらまだ改善する余地がいっぱいあるけど、同僚もいい人ばかりだし、仕事も楽しい。よかったよかった…


このまで読んでいただき、ありがとうございます。スイスでの就活の話はどれだけ役に立つかわかりませんが、面接のバリエーションの話など、エンジニア職に就職したい方、転職を考えている方、またはエンジニアを採用したい方に1ミリぐらい役に立てたら幸いです。

または、このような事件(?)イベント(?)はゆさDコミュニティで聞けたりするので、興味があって余裕がある方は是非サポーターになることを検討してみてください。


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