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101回目の「"丁寧な暮らし"をする」宣言

私は「丁寧な暮らし」に、定期的に憧れている。

麻の服を着たり、木のまな板を使ったり、ほうれん草を丁寧に茹でたり、何かを干して旨味を凝縮させたり、木製品に呼吸をさせたり。

そういうことをしている人たちを見ると「あぁ、ちゃんと生きてるな」と思う。

ポリエステルの服を着て、プラスチックのまな板を使い、化学調味料でお味噌汁を作り、木製品にはクロスをかけっぱなしの私は「ちゃんと生きてない」のかと聞かれると、精一杯生きとるわいっ!だからこそ時間がないんだ!とも思うのだけれど、時短や効率ばかりを求めて暮らしのあれこれを選定していると、どうも後ろめたい気持ちや、ホンモノじゃない気持ちが湧いてくる。

やはり、憧れるもんは憧れる。
映画を観たあと、Twitterで見かけたあと、本を読んだあと、よせばいいのに必ずまた「丁寧な暮らしをしたい」病に冒され、「これからはお米をおひつに保存するぞ!」と意気込んで、サワラのおひつを買ったり、「これからは庭のフルーツで手作りジャムを作るぞ!」と意気込んで、レモンの苗を買ったり、大きなガラス瓶を買ったりしてしまう。

届いてすぐは、「よーし!やるぞ」と1度はやってみたりするものの、次には「あぁ…今日はちょっとラップに包んで冷凍しとくか」となり、その次には「お手入れが面倒臭いから土日だけにするか」となり、今ではおひつは棚の一番奥で眠っている。

レモンの木なんてまだ一度も実をつけやしない。それに「我が家の生ゴミを肥料に変えて、より丁寧な暮らしを!」と思って、生ゴミ処理機まで買ったのに、処理後の乾燥したものを根元に撒いていたら、隣のおばさんに「カラスがすごいからそれやめろ」と言われて断念した。

結局ジャムは普通に買っている。なんなら子どもたちにはフルーツのジャムよりヌテラ(チョコレートのクリーム)がいい!と言われている。丁寧な暮らしにはほど遠い。

こんなもんか… 私の「丁寧に暮らしたい」欲は…。こんな簡単に諦めるのか…

いいや! こんなことでは諦めない! 今度こそ、本気だ!

便利なものがあるから、そっちに頼ってしまうんだ! こんなもの!こんなもの!!この家から無くなってしまえ!! 
ゴールデンウィークの最中、私は突然思いついてしまい、家にある便利グッズをどんどん処分することにした。

顆粒だしがあるから、お出汁を取らないんだ。ラップがあるから、ジップロックがあるから、おひつやおじゅうを使わないんだ。電子レンジがあるから、せいろを使わないんだ。

丁寧な暮らしができないことを文明のせいにして、それらがない状態に自分を追い込んでみた。(レンジはさすがに捨てられず、コンセントを抜いて、土間に追いやった)

土鍋でご飯を炊き、煮干しから水出しで出汁をとり、軽く沸騰したところに鰹節を入れて取り出し、美味しい美味しい「丁寧な」お味噌汁を作った。

あぁ。なんて美味しいんだ… 
本物のご飯と、本物のお味噌汁だ。

私は今、丁寧に暮らしている…!

その日は、炊いたお米をお櫃に入れ、残ったおかずは陶器のお重に入れ、保存した。

翌朝、おひつに入れておいたお米は、もちろん冷めても美味しい。昨日の残りのお味噌汁を温め直し、残りのおかずのお重を広げる。

子どもたち、さぁ召し上がれ。

「ママー。ご飯とおかずチンして?」

まって、長男。このご飯はね。冷たくても美味しいんだよ?

「僕グラノーラ」

ねえ、次男。お出汁からこだわったお味噌汁は?


いいや。子どもたちが食べなくたって私が…。

…コーヒー飲みたい…。パン食べたい。


私はコンビニへ行って、ラップとジップロックを買い、ご飯を冷凍した。レンジをキッチンに戻した。

涙をこらえておひつを洗いし、乾かし、新聞紙に包んで、棚の奥の奥の方へしまった…。


はぁ〜。ジップロックって超便利!

ーおしまいー



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