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天然繊維と化学繊維の比較と選び方

繊維には、天然繊維と化学繊維の2種類があります。

全国クリーニング生活衛生同業組合連合会HPより引用
https://www.zenkuren.or.jp/user/fiber-info

この記事では、天然繊維・化学繊維の中から代表的な素材をピックアップし、その特徴について記載していきます。

自然の恵みを纏う天然繊維

天然繊維は、主原料が天然素材のもので、『植物繊維』と『動物繊維』の2種類に分けられます。
主原料がコットン(綿)・リネン(麻)など植物のものを『植物繊維』といい、熱や洗濯などの摩擦に強い特徴があります。

またシルク(絹)・ウール(羊毛)・カシミヤ(山羊)などが主原料のものを『動物繊維』といい、動物の身を守る機能があるため、保温性や保湿性に優れていることが多く、防寒着として使用されています。

天然繊維の生地は自然界にあるもので作られているため、化学繊維に比べて敏感肌の方でも手を出しやすい素材となっています。
また肌触りがよく着心地がよい点や吸湿性や通気性に優れているなど、天然の機能性を有しているものが多い反面、縮みやすい・耐久性に難があるなどといったデメリットもあります。


最もポピュラーで汎用性の高い綿(コットン)

木綿植物の種子につくふわふわの綿花を紡績して作られます。中が空洞になっており、空気を多く含むため、夏は通気性・吸湿性に優れサラサラ、冬は保温性があり暖かい着心地で、オールシーズンで使いやすい素材だと言えます。

  • 特徴

肌ざわりが良い、通気性・吸水性に優れている、耐久性に優れている、染色しやすい

  • デメリット

縮みやすくシワになりやすい、乾きにくくカビが生じやすい、色落ち・変色することがある

  • 用途

下着、肌着、衣類、タオル、寝具など

◆綿について書いた記事はこちら↓


独特の風合い出しが可能な麻(リネン)

リネンは、亜麻科の植物の茎を使って作られる繊維です。
厳密には衣服で使われる麻には様々な種類がありますが、よく使われている『リネン』は、やわらかくしなやかな風合いで、さらっとした独特の肌触りを持っています。
天然素材のなかで最も丈夫と言われる麻は、きちんと手入れをすれば長持ちし、使うほどに肌に馴染んで味のある風合いになります。
繊維の中が空洞になっている構造のため、吸湿性・速乾性・保温性に優れ、使い心地は一年中快適。暑い夏はひんやりと、寒い冬は温かく使うことができます。
また繊維に含まれる「ペクチン」によって汚れにくく、セルロース系繊維のため防虫効果が期待できることなど、メリットがたくさんあるため、衣類などに幅広く活用されています。

  • 特徴

丈夫で長持ちする、汚れにくい、水分の吸湿・発散性に優れている、通気性が良い、肌触りがよい

  • デメリット

シワになりやすい、保湿に乏しい、摩擦に弱い

  • 用途

シャツ、ストール、ハンカチなど


高級感あふれるシルク(絹)

古来より繊維の中でもっとも美しい繊維とされています。豊かな吸湿性・通気性・保温性を持ち、気品のある優雅な光沢やしなやかな肌ざわりで世界中の人々に愛され続けています。
蚕の繭から繰り取った糸を生糸(きいと)といい、1粒の繭から約800~1,500m程の細く長い糸が取れます。
シルクは肌の成分に近い約20種のアミノ酸を含んだタンパク質繊維です。繊維素材としてだけではなく、肌や健康にもよい多くの機能を持っています。

  • 特徴

美しい光沢がある、保温性・吸放湿性に優れている、なめらかな肌触りで風合いがよい、紫外線(UV)カット、静電気が起きにくい、雑菌の繁殖を抑えて肌の清潔を保つ

  • デメリット

虫に食われやすい、縮みやすい、色落ちしやすい、摩擦に弱い、やわらかく縫製が難しい、黄変しやすい、経年できしみがでる

  • 用途

スカーフ、ブラウス、ドレス、着物など


暖かさと柔らかさのウール(羊毛)

ウールは、羊の毛を原料とする動物繊維です。
「クランプクリンプ」と呼ばれる縮れた構造になっており、繊維内に空気を含むことで、暖かく熱を逃がしにくい構造になっています。
ウールは水をよく弾くため汚れがつきにくく、吸湿性にも優れた素材のため、暖房の効いた室内で汗をかいても蒸れずに気持ちよく着ることができます。また弾力性があり、シワになりにくい特徴もあります。

基本的にウールは水洗いに不向きな素材で、水で洗うとフェルト化して固くなり、繊維自体が縮んでしまいます。また油分が失われるとウール本来のふんわりとした風合いがなくなってしまう可能性もあるため、洗濯などの際は専用の洗剤を使用する事が望ましいです。
またウールは主成分がタンパク質で虫食いが起きやすいため、保管時は防腐剤を入れるなど注意が必要です。

近年では、ウールのナチュラルな消臭性、難燃性などが評価されており、アウターからインナーまで様々な製品にしようされるようになりました。

  • 特徴

保温効果が高く暖かい、シワになりにくく型崩れしにくい、湿気をよく吸収する、汚れがつきにくい、染色しやすく色落ちしにくい、消臭性がある、燃えにくい

  • デメリット

虫がつきやすい、縮みやすい、毛玉(ピリング)ができやすい

  • 用途

セーター、毛布、ラグマットなど


日々発展・進化する化学繊維

化学繊維は、主原料が石油・人工的に作られる高分子からなり、『合成繊維』『半合成繊維』『再生繊維』『無機繊維(衣料用途では無い)』の4種類に分けられます。

ポリエステル・ナイロンなどは、石油系を原料とする『合成繊維』、レーヨン・テンセルは天然の木材などから精製された『再生繊維』です。
『再生繊維』に似た繊維として、アセテートに代表される『半合成繊維』というものもあります。セルロースを溶解しそのまま再利用したものが『再生繊維』であるのに対し、セルロースを溶解した後に処理を加え化学反応をさせたものが『半合成繊維』と呼ばれます。

加工できる機能(冷感、発熱、速乾、形状記憶など)が豊富にあり、大量に生産することができるため、天然繊維に比べて比較的安価で流通しています。また糸の形状を変化させることも可能なので、中空タイプにしたり、扁平型にしたりするアレンジも可能です。

しかし、吸湿性が少なく静電気が発生しやすいことや、化学薬品を使用しているため、環境汚染やアレルギーなどの肌荒れを引き起こしやすいというデメリットがあります。


天然原料が由来のレーヨン(再生繊維)

レーヨンは、木材パルプを主原料に人工的に作った化学繊維の1つです。
木の中の繊維(セルロース)を取り出して精製し、薬剤を加えて溶かしたものを繊維状に再生して糸にします。
絹に似た美しい光沢があるのが特徴で、てろっとしたとろみのある肌触りでエレガントな質感です。
水に弱く強度などのデメリットを補うために、綿など他の繊維と混紡してよく使用されています。他の素材を混ぜることにより、美しい光沢やドレープ性などを保ったまま、洗濯しやすくなるため衣類などに使いやすくなります。

  • 特徴

吸湿性・吸水性が良い、光沢があり着心地がいい、毛玉ができにくい

  • デメリット

水に弱く濡れると強度が落ちる、洗濯で縮やすくシワになりやすい、摩擦に弱い

  • 用途

下着、裏地、婦人服など


多機能で変幻自在のポリエステル(合成繊維)

ポリエステルは、現在、日本の合成繊維の中で最もポピュラーで生産が多く、コットンに似た機能性を持っているため、衣類などによく使用されています。
ポリエステル・ナイロン・ポリウレタンは、石油や天然ガスの原料から、ほぼ同じ工程で作られており、三大合成繊維と呼ばれています。
石油を原料にしたペットボトルと同じ「PET:ポリエチレンテレフタレート」というチップを作り、チップを熱で溶かして、細い穴がたくさん開いたノズルから押し出して、空気中で冷却し繊維にします。

ノズルには様々な形状の穴が開けられ、同じ素材でも断面形状によって風合いなどが変わり、吸水性などのさまざまな特徴や機能性を付けることができます。紡績方法や他素材を練り込むことで、天然繊維にような風合いを作り出すことができるため、さまざまな用途で広く使われています。
また原価が非常に安く、機能性に優れた商品を低コストで作ることができるのも、ポリエステル繊維の魅力の一つです。

  • 特徴

シワになりにくく型崩れしにくい、丈夫で強度に優れている、速乾性がある、低価格、軽い

  • デメリット

静電気が発生しやすい、汚れると落ちにくい、吸湿性がない

  • 用途

フリース、制服、裏地など


丈夫で耐久性のあるナイロン(合成繊維)

ナイロンは、主に石油を原料とする「ポリアミド」とよばれる合成樹脂から作られた繊維のことをいいます。
1935年にアメリカのデュポン社によって開発され、当初女性用ストッキングとして人気を集め、その後世界中へ広まっていきました。
ナイロンは軽く、綿の約10倍といわれているほど、とにかく摩擦に強く丈夫な素材です。また繊維自体に伸縮性があるため、衣服としては着やすく動きやすい素材です。
乾燥機・アイロンを使用すると変形する可能性があるため、取り扱いには注意が必要です。

  • 特徴

害虫・カビに強い、薬品に強く洗濯耐久性に優れている、弾力がありシワになりにくい

  • デメリット

吸湿性がなく静電気が発生しやすい、日光により変色しやすい、熱に弱い

  • 用途

ストッキング、スポーツウェアなど


手頃な価格と多彩な色合いのアクリル(合成繊維)

石油を原料とする繊維ですが、軽くて暖かくウールに近い性質をもつ合成繊維です。
ウールよりも安価で、水や蒸気でも縮まず、色も鮮やかに染まり、耐候性にも優れているため、セーターなど衣料品に大変人気があります。
非常に柔らかく、モコモコした感触で保温性も高いため、フリースなどの防寒着などにも重宝されています。

  • 特徴

羊毛に近い風合いがある、発色性が良い、カビ・害虫に強い、シワになりにくい、軽い

  • デメリット

吸湿性が少ない、静電気が起きやすくホコリが付きやすい、高温に弱い

  • 用途

セーター、靴下、ニット帽、手袋、冬物衣類など


ストレッチ性抜群のポリウレタン(合成繊維)

ポリウレタンは、化学繊維の中でもゴムのような性質をもつ繊維で、衣料用としては他の繊維と組み合わせて使われたり、コーティングや接着用途で使われたりしています。
ストレッチ性に優れているため、スポーツウェアなどの素材として重宝されています。またポリウレタンは発泡剤を加えるとスポンジ状になるという特徴があるため、防音材や断熱材として使われることもあります。
衣服に使われるポリウレタンの寿命は、使用条件によって異なりますが、おおむね製造されてから2~3年程といわれています。性質上、いずれボロボロになってしまい劣化を避けることができないため、注意が必要です。
靴下の裏糸には、ポリウレタンを芯にナイロンやポリエステルをカバーリングしたFTY(フィラメントツイストヤーン)が使われるのが一般的です。

  • 特徴

伸縮性に優れる

  • デメリット

紫外線に弱く黄変することがある、摩擦に弱い、経年劣化があり長持ちしない

  • 用途

合成皮革、肌着や靴下などのストレッチ用途など



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