右足から踏み出すべきか?左足から踏み出すべきか?
散歩がへたくそになってる、うん、間違いなく。
散歩に上手いも下手もないと思うかもしれないけど、あるんです。
ずばり、上手い散歩とは、無目的に歩くものです。
衝動に任せて進み、曲がり角でも臆せず知らない道へと方向転換する。
曲がり角で左に曲がるか右に曲がるかなんて、悩んだりしません。
間髪入れずに曲がるのです。
思考しないこと、目的を考えたりしないこと。これが上手い散歩の極意。
もしも「なんで右に曲がったの?」なんて野暮なことを聞いてくるやつがいたら、一言
「お腹が空いてたから」
とか言っとけばいいんです。散歩に脈絡なんかいらないんです。
「散歩のついでにコンビニに寄って公共料金の支払いをして、ついでにお弁当のおかずを買いにスーパーに寄って、あと郵便局で記帳もして……」
なんぞと、用事をついでにこなすなんて邪なことを考えてはなりませんぞ?
散歩は衝動的に行うもの。用足し感覚でいてはならないのです。
じゃあ下手くそな散歩はといえば、もちろんそれは
「なんで散歩に行くのかという具体的な理由がある」
散歩です。
『ダイエット』とか『買い出しのついでに』とか『ご近所さんの井戸端会議に顔を出す』とか、こういうことを考えてはいけない。
無目的に散歩する。散歩に行きたいから散歩する。
そうやって散歩していると次第に頭から雑念がなくなって、心身ともにリセット出来る。これがとっても大事。
だから理由をもって散歩してはいけないんです。
いけない、んです。
どうしてわざわざこんなことクドクドと散歩論を語ったかと言うと、それはもちろん、以前は出来ていた無目的に歩くことが、今日に限ってそれが出来なかったから。
昔から悩んでいるとある問題が、ここ数日また首をもたげてきてしまって、解決する手段もなかったので、藁にも縋るように
『このモヤモヤを晴らすには歩くしかない』
なんて目的を立てて散歩に出てしまった。
モヤモヤが頭の中に存在してると、頭はそのモヤモヤを処理しようと思考するモードに入っているので、結果イラんことまで延々と考えてしまうことになりがちで。
ついさっきアパートを出て散歩に出かけたときも、
「うーーん、丁字路を右に行くか左に行くか。右に行くとミニストップがあるしハロハロでも食べようか。でもご飯前だからな。だったら左に行った先にあるダイソーで切らしてた三角コーナー用のネットを買ってくるか……」
なんて考えて。
良くない、良くないです。
20秒ほど悩んで、結局右に曲がってミニストップを目指すことにしたけど。
でもやっぱり、モヤモヤは晴れない。
一朝一夕で解決できない問題を、延々と考え込んでは落ち込む、よくあるパターン。
『ハロハロ食べたら落ち着くかなぁ。でもこういうときって気晴らしに何か食べても気は紛れないし、でもかといってこのまま悩んでてもなぁ……』
気休めのスイーツも、カラオケで歌って発散するのも、こういうときって効果ないんだよな。
やっぱ帰って寝るかなぁ。
って考えてたら。
ガリリッ
足元で何か踏んづけた音。
見れば、どんぐりが7-8個、僕の足元に転がってる。折よくそれを踏んづけたらしい。
そして、ドングリを踏みつぶしたと同時に香ってくる、なんというか、すえた匂い……
「なんだこれ……カメムシの匂いだ……」
「どんぐりってカメムシの匂いするんだ……(しません)」
あまりにもカメムシ臭がすごかったので思わずそんな独り言を言ってしまった。
それを犬の散歩をしてたお爺さんに聞かれてしまった。
恥ずかしい……
いそいそとその場を離れる。
だけど、不思議とこれ以降、延々と悩むモードからは解放された。
そこからは、ボーっと歩きながら、道々で写真を撮ったりした。
10月の終わりにしては温かい気候で、歩きやすい。
自然と歩幅も大きくなる。歩いてて楽しいんだろう。
うんうん、良い感じだ。
いつも通り、衝動に任せて散歩出来ている。
こうやって気が向くままに歩き、腹が減ったら帰る。
気の向くままに縄張りをウロウロする、野良猫みたいだ。
歩いて歩いて、そうしてるうちに、自分の中が空っぽになるんだな。
そうやって自分をリセットすると、また明日から頑張れる気がするんだな。
ところで、今は夕方16時半。
衝動に任せて歩き続けてたらお腹がペコペコになっちゃった。
なので道すがらセブンに立ち寄って、そこでななちきとツナマヨおにぎりを買ってしまった。
お腹が空き過ぎてたのか、自動ドアを出てすぐにむさぼり食った。
ふぅ、美味かった、とここでハッと気づく。
今日の夕飯は19時半、しかもカツ丼。
「やっちまった……」
セブンの自動ドアの前で空を見上げながらひとりごちる。
もしななちきとツナマヨのせいでカツ丼が食べられないなんてことになったら、無茶苦茶怒られるよ………
どうしよ………
ま、衝動に任せて食べるのも、たまにはね?
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