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手術前日:乳がんと診断されて【8】

入院2日目(手術前日)は手術前の検査があり比較的やる事が多かった。

手術は「全摘」を希望。温存もできなくはないが腫瘍の場所的に難しいみたいだったのと温存だと術後に放射線治療が必要という話だったので決断した。
入院前に受けたPET CTの結果は左乳房の腫瘍以外は光ることもなく「転移なし」という診断だった。
だから家族は「全摘すれば安心」と思っているし転移がないと分かってからは「(大した事なくて)良かった」とさえ言っていた。体を切られる本人は何もよろしくないんだけど…。

さて、検査について。
今回の手術は乳房切除術とセンチネルリンパ節生検。乳房切除術はその文字通り全部取ってしまうこと。そしてセンチネルリンパ節生検はリンパ節への転移がないかの病理検査。手術中に色素剤を注射しセンチネルリンパ節の病理検査を行う。この検査で転移が見つかればリンパ節郭清手術でリンパ節も摘出する。
現段階で転移なしと言われていても、結局は細胞を取って調べないと実際のところは分からないということ。やっぱり安心はできないのだ。
このセンチネルリンパ節生検の準備で手術前日にリンパ節にマーカーを入れる必要がある。乳房から薬剤を注射し、2.3時間するとリンパ節の場所の色が変わるのでそこに印をつけるというもの。
また注射か。でも点滴ではないので失敗はないかなと思った。

検査には翌日手術予定の患者がまとまって向かう。私を含めて3人だった。私以外の2人は年配のおばさまで60代くらいだろうか。私の母よりは若いのかなと思う。
【あ、私の年齢について今まで書いてなかったですね。がん告知時点で38歳です。】

看護師さんに連れられて検査室まで移動する。5分程すると主治医の高橋先生(仮名)がやってきて1人ずつ部屋に呼ばれて処置が始まる流れだ。
検査室前で待つ間、3人の間に会話は無かった。まぁ初対面だし手術を控えた人にそんな余裕は無いか。
「明日手術ですか?私もなんです。今からの注射、嫌ですねー(><)」とか話しかけてみようか?とも思ったけど空気を読んでダンマリ。私は点滴に繋がれてるし、おばさまからすると自分たちより状況が悪いのか?と思われていた可能性もあった。

検査室に1人ずつ呼ばれて「どちらの胸ですか?」と聞かれる。病院では近頃、名前や生年月日、治療部位の確認が頻繁にある。患者の取り違えや医療ミスが発生し、ニュースになることもよくあるし、防止策を講じているのだろう。ただその方法はいたってアナログだけど。

部位を確認し、消毒、注射と数分で終わった。その後私だけ「pandaさん、ごめん。手術前の検査が1個抜けててん。今から処置室で静脈から採血させてもらえる?」

当然私に選択の余地は無いので従うのみ。詳細を聞くと術前検査に必須の肺機能検査がコロナの影響(飛沫の防止)で静脈からの採血に替わっていて、それをしていなかったという。
肺機能検査も苦手なので、あれが採血で済むのなら楽だっ♪と思ったのもその時だけだった。

そう、私は血管が…


静脈注射と聞いてもピンとこなかったけど、鼠径部(足の付け根)に静脈があって普通は太い血管だから刺しやすくて痛みもないらしい。先生もそのつもりで
「すぐ終わるからねー」と注射器を準備したけれど
「え、細い…というかpandaさん全体的に小さい」と言って手が止まってしまった。

はい、私超小柄です。ミニモニにも入れます。
(*ミニモニ:1990年代に活躍したハロープロジェクトのユニット。身長150cm未満なら加入可。もう分からない世代の話ですね。。)

「あ、そっかぁ、、いけるかなぁ」と先生の独り言が止まらない。
「ごめんね。ちょっと我慢してね。」←失敗する前から謝る先生。痛みへの謝罪とは受け取れなかった。笑

結果は……


失敗。

「あー、ごめんね。ちょっと待ってよー。」

立ち上がり息を整える先生

「ごめんね、反対側でもう1回。あー、こんなに緊張するのいつ以来やろ…ごめんねー。」

こんなに謝られたら逆に申し訳なくなって「すみません。。。」と謝った。

「いやいや、ごめんね。大丈夫やから」ともう一度挑戦!←何が大丈夫なのか?…たぶん自分にプレッシャーを掛けている。

そして


「入ったよー。pandaさんごめんねー。」

2回目で無事成功!
「あー、良かったぁ!」と狭い処置室で先生と2人、喜び合うのでした。

明日はとうとう手術日。高橋先生に全てを任せよう。




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