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シリーズ小説/忘

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読切小説/忘れられない人RtoS_20211021

読切小説/忘れられない人RtoS_20211021

 私は薄情な人間なのだ。
 3年ぶりに訪れた三宮駅で、熱いブラックコーヒーを飲みながらそんなことを考えていた。
 帰省をするたびにこの駅のスターバックスに入るのが、いつの間にか決まりになっていた。札幌のマンションからここまでは、電車と飛行機とバスを乗り継いで、短くない時間と安くないお金をかけてやって来る。あとは私鉄を3駅乗り継ぐだけで実家だというのに、私はいつもここで、まるで立ち止まるように寄り道

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読切小説/忘れたくない人StoR_20211022

読切小説/忘れたくない人StoR_20211022

「同窓会の企画しようよ」
 誰かの思いつきの一言で、僕らは三宮駅のスターバックスに集まっていた。
 36年、僕は流れに身を任せて、この街にいる。ここで生まれ、ここで育ち、なんどもなんどもこの場所を通り過ぎてきた。そんな僕にとっては、この店ももはや日常の一部だ。
 この年齢になると、家庭を持っている奴とそうでない奴が、ひと目で分かってしまうようになる。当然のことなのだろうが、僕からすると家庭を持って

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