AttioのPLGストーリーから学ぶ、スタートアップ成功の鍵とは
Attio(https://attio.com/)は、パーソナルな課題から生まれたCRMスタートアップです。この会社は数年間のステルスモードを経て、ついに公開され、今や業界の巨人たちと肩を並べています。この記事は、Aakash Gupta氏(@aakashg0)のツイートを整理したものです。
Aakash Gupta氏は、Product Growth NewsletterとPodcastを運営しており、プロダクトマネージャー(PM)、プロダクトリーダー、PM志望者の成功を支援しています。彼はPMからプロダクトのVPに昇進した経験を持ちます。
Attioのストーリーと成長の軌跡
1. 創業と方向転換
2017年、Nicolas OsharさんはPassion CapitalでVC業務の取引管理に苦労していました。市場に出回るCRMは彼のニーズに合っておらず、自分で「Fundstack」というVC向けのCRMを構築しました。しかし、このモデルではスケーラビリティに限界があると感じ、共同創業者のAlexisに相談し、大胆にも方向転換を決意しました。それがAttioの始まりです。
2. ステルスモードでの製品開発
Attioは、初期のMVPを急いでリリースするのではなく、AirtableやFigmaのような道を選び、しっかりとした製品を作るために投資しました。当初は創業者やビルダーにフォーカスし、口コミで少しずつ広がりました。2020年には早期アクセスプログラムを開始し、数百万通のメールを処理しました。しかし、ユーザーが実際に料金を払うかどうかはまだ不明でした。
3. 資金調達と成長のステップ
クローズドベータの段階で、Attioの勢いはすさまじく、2021年にはCoca-ColaやSupercellを含む120社以上の顧客が料金を支払うようになりました。そこで770万ドルのシード資金を調達しました。初期の価格は高めに設定されていましたが、アクセスしやすい価格に下げたことで、組織全体で簡単に使えるCRMとなり、ユーザーエクスペリエンスと口コミ効果を最大化するPLG(Product-Led Growth)戦略に注力しました。
4. 公開ローンチとその成果
2023年3月、Attioはベータ版を脱し、Redpoint Venturesが主導する2350万ドルのシリーズA資金調達を背景に正式にローンチされました。ローンチ当日には、Product Huntで1位を獲得しました。
5. Attioの現在
現在、Attioは100カ国以上で数千の顧客にサービスを提供しており、社員数はわずか45名。強力で使いやすいCRMの提供に集中し、PLGアプローチで成長を続けています。Attioのストーリーは、「柔軟でモダンなCRM」というビジョンを持ち、巨人たちに挑む姿勢を示しています。
Attioのプロダクト・レッド・グロース(PLG)ストーリーの整理
Attioは、モダンなCRMプラットフォームとして、ビジネスが関係を管理し、データをより効果的に活用するのを支援することを目指しています。
1. 創業からの経緯
創業者: Nicolas Sharp、Alex Christie
ビジョン: ユーザー中心のデザインでCRMの課題を解決する
ニッチから一般化へ: Nicolas SharpはVCとしてCRMの限界に直面し、「Fundstack」というVC向けCRMを開発。しかし、スケーラビリティに限界を感じ、全てのビジネスに対応する柔軟なCRM「Attio」を構想。
ステルスモード(3年間): MVPはなく、Airtableのような堅牢な製品を構築するために投資。2020年に早期アクセス(選択されたスタートアップとの開発)。
資金調達と成長: 2021年に770万ドルのシード資金調達、120社の顧客を獲得。PLG戦略に注力。
急成長: シリーズBラウンドで8900万ドルを調達。1000社以上の顧客に対応。
2. Attioのプロダクト構築
チーム編成: 通常のソフトウェアエンジニアではなく、プロダクトエンジニアを採用。初のプロダクトマネージャーを7年後に雇用。
開発手法: Agile/Scrumを拒否し、流動的かつ自律的なワークフローを採用。5つのクロスファンクショナルチームで独自の依存関係を管理。
技術スタック: TypeScriptモノレポでコラボレーションを最大化。フィーチャーフラグと継続的な反復で迅速な実験を実施。
長期ビジョン: 10年先を見据えたビジョンを維持しながら、顧客のフィードバックに応じて適応。
3. AttioのPLGモーション
Go-To-Market(GTM): オーガニックサーチとクリエイターの調査で理想的な顧客プロファイル(ICP)にリーチ。
ホームページ: プロダクトとキャンペーンのフロントストア。
無料から有料へのコンバージョン: 無料ユーザーから有料プランへの移行。
アクティベーション: ユーザーが迅速にセットアップし、価値を見出せるよう支援。
リテンション: 顧客をエンゲージし続け、価値を実現。
収益化: パッケージングと価格設定の定義。
拡大: 初期販売後のアカウントの成長を加速。
示唆:Attioの成功から得られること
Attioの大胆なビジョンと顧客中心の姿勢は、既存のCRMの枠を超え、Salesforceのような業界の巨人に挑んでいます。このストーリーからは、プロダクトやサービスを開発する際のいくつかの重要な示唆を得ることができます。
顧客の課題に真正面から向き合うこと: Attioのスタート地点は創業者の個人的な課題でした。成功するプロダクトは、現実の課題を解決するために作られることが多く、顧客のニーズに深く理解することが重要です。
ステルスモードでの着実な開発: 初期段階では無理に早く公開するのではなく、しっかりとした製品を作り込むことに投資することが、長期的な成長を支える基盤となります。
フィードバックを活用した迅速な改善: Attioは、顧客からのフィードバックを迅速に取り入れ、製品の改善を続けました。このようなフィードバックループは、プロダクトの質を高め、顧客満足度を向上させるために不可欠です。
ユーザー中心のデザインとPLG戦略: プロダクトを利用するすべてのユーザーにとって使いやすく、価値があることを追求することで、自然とユーザー基盤が広がり、成長につながります。
柔軟なビジョンと方向転換: 創業者たちは、自分たちの初期アイデアに固執せず、必要に応じて大胆に方向転換しました。この柔軟性が、彼らをより大きな成功へと導きました。
これらのポイントは、プロダクトを作りたいと考えている方や、新しいサービスを提供しようとしている方にとって、非常に価値のある示唆です。顧客のニーズを理解し、それに応えるための柔軟性と粘り強さを持つことで、競争の激しい市場でも成功を収めることができるでしょう。