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「V字回復の経営」 三枝匡著

 暑い夏が今年もやって参りましたね。皆様いかがお過ごしでしょうか。私はというと、趣味であるサウナに入り、与えられた暑さを自ら掴みにいく熱さに変換して過ごしています。そんな自ら掴みにいく熱さにちなんで、今回は心を熱くさせてくれる本"「V字回復の経営」三枝匡著"をご紹介します。

 この本は、かつて子会社社長として事業再生を成し遂げた黒岩が事業再生コンサルタント五十嵐とともに、タスクフォースを作り、不採算事業を立て直すというストーリー。与えられた期間は2年間。それまでに結果が出なければ、事業撤退の決断となる。まずは現状の問題点の洗い出し、そして現状を打開する改革案の策定、役員・全社員への周知、実行、モニタリングを行っていく。黒岩、五十嵐はタクスフォースのメンバーを社内で見つけ出し、その後は全体の方向づけ、管理に回ることとなる。会議の中心はリーダーとなる川端、そして星、古手川、赤坂等が担っていった。企業名、個人名は違うが、実際に著者が事業再建を行った実在の企業をモデルに描かれている。

 この本の良いところは、戦略論を羅列して論じるのではなく、初めから終わりまで実際の事例に沿って説明されていること。その時の様々な立場にいる人物たちの思い、時間軸に沿って変わる意識の変化が明快に描かれています。それに加え数字に落とし込まれたデータも示されてるため、より実態感を持つことでき、タクスフォースのメンバーと同じ熱量で物語に没入していけます。

 そして本書では不振事業の症状、改革を成功へ導くため押さえておくべき要諦がそれぞれ50個ずつ描かれています。

今回はその症状、要諦を1つずつご紹介します。

症状
商品別損益がボトムラインで語られていない。担当者レベルの「赤字に鈍感」の集合体が組織全体の危機感不足を構成している。

 全体としては黒字でも事業別、商品別、個々の事業で売上、原価、経費を区分してみるとどうでしょうか。ある部門の赤字を他の部門の黒字が吸収し、結果的に不採算事業、商品が見えづらくなっている、そんなケースが往々にしてあると思います。現状を数字で語れるように分析し、直視する。その上でどのような対策が必要なのか、改革の第一歩ではないでしょうか。

要諦 
本当に元気な企業は、社員が自発的に動いて、組織が自律的に前に転がっていくエネルギーを出し続けなければなりません。 しかし社員が自分で動いているように見えても、そこには必ず、トップの強い意思が働いていなければなりません。上から下に常に何か強烈なものが発信されていなければなりません。 昔のアスター工販を思い出すと、トップは「社員は自発的にどんどん動け」「もっと責任感を持て」などと言っているだけでした。経営者としてはずいぶん無責任だったと思います。 経営戦略とは端的に言って、激しい企業間競争にどうしたら勝てるかであり、トップはそのための「絵」を組織に提示し続けなければなりません。

 仕事なのだからやって当然なのに動かない、責任感がない、能力が低い…そんな不満を耳にすることはないでしょうか。

社内の共通の考え方、目標を示し、判断をするときの拠り所を共有する。その上で戦略、仕組みを作り、誰であっても実行しうる道筋を示す。ただ頑張れ、なんでやらないんだでは人は動かない。組織の「目標」や行動の「意味」が皆に共有されているかどうかが重要であると本書では語られています。

 長引くコロナ禍、物価高、世の中は目まぐるしく変わります。まずは現状を数字やデータを基にしっかりと分析し、そこから目指すべき目標との差異を埋めるためにどのように行動していくべきかを考える、単純明快なようでなかなか難しい、これをどのようにやっていくべきか、今一度考えていく必要性を感じました。

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