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no.7 義母が帰ってきた。4年ぶりの再会…

コロナに感染した義母であったが、幸い症状は軽く、無事に退所の運びとなった。高齢者施設で感染、重篤化して亡くなる方のことは、毎日のように報道されていたから、万一のこともあるやも知れぬ、とひそかに身構えていたが、杞憂であった。

義母の退所の日、わたしは仕事を休めず、お迎えには夫が行った。

夫の話によると、退所にあたって、たくさんの書類にサインをしなければならなかったそう。施設費の支払いをするだけと思っていたから、面食らったようだ。サインと支払いを済ませて、義母の荷物一式とともに帰宅。
同行してくださった介護福祉士さんが、義母をベッドへ移してくださったそう。

私は約4年ぶりに義母と対面。
ケアマネ氏から「衰えがありますよ」「以前のお母さんとは違いますよ」と、聞いてはいたけれど、正直言って、想像以上であった。

手足は細く骨ばって、関節には廃用症候群からくる拘縮があり、とくに膝関節が固まっているように見えた。これでは、着替えをさせるのも、オムツを交換するのも、素人には難しいだろう。

義母は、義父や夫のこともわからないように見えた。当然、嫁のことなど分かるはずもないであろう。
神経質で、わがままな、腹の立つ義母はもういないのだ。

さっそく、ヘルパーさんの定期巡回が始まった。オムツ交換のほか、床ずれ予防の体位変換、着替え、口腔ケアなど、1日4回の巡回である。
これから、ちゃんとやっていけるのだろうか。
この日は、夫もわたしも、ヘトヘトだった。

あれこれ考えていた義母の食事。
早速、キューピーのレトルトの介護食を温めて出した。
夫が介護士さんから習った通りに、ひと匙ずつ、声をかけながら、義母の口へと運ぶ。義母はその都度、歯のない口を大きくパッと開ける。
昔の母と子の立場が逆転したような、ちょっと微笑ましい光景であった。
そして、全部食べ終わると、義母は大きな声で
「ありがとうございますっ!」と、言ったのだった。

在宅介護*観察日記『義母帰る』


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