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no.28 義母、空へ還る(その3)嫁、最後の夜にキレる

8/24(木)
レンタルしている車椅子と車椅子用のスロープを引き上げてもらう。
ケアマネ氏が「一旦、返却しましょうか?」と提案してくれたのだ。
しばらくは、デイサービスにも、ショートステイにも、行けそうにない。
たとえ使わなくても、レンタルしている間はお金がかかる。
そこで、一旦返却をし、また必要になったら、あらためて契約することに。
現実を受けとめて、折り合わなくてはならない。

仕事の帰りにドラッグストアへ。
義母のオムツ、パッド(昼用・夜用)を購入。計5,040円也。
(使うことはなかった)

帰宅すると、車椅子用のスロープがないだけなのに、玄関が四角く広く見えた。
夫から、訪問看護ステーションが決まったと聞く。
明日の午後に契約をして、その日のうちに訪問看護が始まるとのこと。看護師さんの滞在時間は1時間ほどで、当分の間は毎日来ていただける。おお…
今からもう明日が待ち遠しい。
看取り期の家族を在宅で看るというのは、本当に、本当に心細いことなのだ。

そして、義母の夜の食事の介助(正確には水分摂取の介助)を代わってほしいと頼まれる。
私が帰るまで、何とか頑張っているのだろうけど、私だって疲れてないわけではないんですけどね(T_T)仕方なく、了承。


夕食の支度を済ませてから、義母の部屋へ。
「お義母さん」と、声をかけてみる。
ところが、同じ部屋にいる義父は大音量のまま、テレビを観ている。

私 :「お義父さん、テレビの音、小さくしてください」
義父 : 「?」←どうかしましたか?という表情
私 : 「テレビの音、ち・い・さ・く・し・て・く・だ・さ・い・!」
←テレビの音より大きな声で叫ぶ
義父 : 「はいはい」←慌てて音量を絞る

認知症だから、現状を理解できないのかどうか知らんけど(T_T)
義父は義母のことをどう思っているのだろう。私のことを何だと思っているんだろう。ただの便利な人と思われている気がしてならぬ。

何だか無性に腹が立ち、とうとう
お義父さんが(食事介助)されてもいいんですよ!」と、大音量のまま言った。というか、言ってしまった。

よほど驚いたのか、義父は意外にも、
「すみません、お願いします」と言った。小さな声で、今にも泣き出しそうな顔をして。(えーっ!?)

いやいや、これではまるで、嫁が認知症の舅(しゅうと)を虐待している図ではないか(汗)

義母(95歳)は要介護5、義父(91歳)は要介護1、認知症もある。そうなると、一日一日、生きていくだけで精一杯なのかも知れない、と後になって気づいたのだった。

義母は、思った通り、何も口にしなかった。水分で口元を湿らせるくらいが精一杯であった。


部屋に戻ると、夫は先にシャワーと夕食を済ませ、テレビを観てくつろいでいる(°_°)
何ならちょっと笑っている。まあ、いいけど。

この夜、夫には
「この先、私がお義母さんと同じ状態になることがあったら、無理に食べさせようとか、しなくていいからね」と言っておく。

8/25(金)
早朝の巡回のヘルパーさんのメモには体温37℃とある。
寝ている義母の足元に着替えの肌着とパジャマ、ヘルパーさんに着替えをお願いするメモを残して出勤。

これが義母との最期のお別れになった。

在宅介護*観察日記『義母帰る』

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