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映画「Barbie」感想(※ネタバレ有り注意)

冒頭の面白かったシーン

当初女の子の遊ぶお人形たちは赤ちゃん型のものしかなかった。そこにルース・ハンドラーの開発した巨大な初代Barbie(モノリスバービー)が降り立つ映像。そこから女の子のニーズに合わせて多種多様なバービー人形の目覚ましい活躍が始まった・・・

バービーランド

マーゴット・ロビー演じる典型的バービーの他に様々な職業を持つバービー、妊娠中のお母さんバービーもいれば、道路作業員、医者、政治家、ノーベル賞文学者、あらゆるバービーが幸せに住む楽園。バービーのボーイフレンドであるケンたちの存在感はいまいちだけど、毎夜楽しくガールズパーティーを繰り広げていた。マテル社の設定した理想の通りの暮らし。

しかしある朝マーゴット・ロビー・バービーの体に変化が起こった。(踵が立っていない、セルライトがあるetc)
実は現実界からの何かの信号を受け取っているんだ、というケイト・マッキノン演じる変てこバービーのアドバイスに従って、ケンとともに人間の住むリアルワールドに出かけてみると、そこは思いもよらない世界だった。

リアルワールド

道を歩いてるとキャットコーリングを受けるし、男性ばかりが工事現場で働いてるし、何かおかしい。バービーランドと全然違うと驚きショックを受けるバービー。とある中学校の中にいる自分の持ち主の女の子サーシャを見つけたバービーが話しかけてみたものの、「バービーは5歳で卒業した。女性たちは男たちの想像が生み出した理想の姿であるバービーと自分の現実の姿に苦しみ、女性の権利は50年も後退した。あんたなんかファシストよ」(だいたいそんな感じ)と言われて傷ついて泣いてしまうバービー。「私は鉄道も道路も持ってないのにファシストなんて」現実の女の子に夢を与えたかったのに、私がいた意味はあったの・・・。初めて号泣してしまうバービー。

一方ケンは、男性が金融・政治・文化・そして女性をも支配している現実界を目にしてこれが自分の求めていたものだと気づき、男性が支配する世界のための参考文献を図書館で手に入れ、自分は1人バービーランドへ帰ってしまいました。

バービーランドから2体お人形が逃げ出したことに気づいたマテル社の社員たちがやってきてバービーは本社に連れて行かれ、会議室にやってきます。全員が黒いスーツを着た男性社員しかいない。バービーは驚き「女性のCEOは?COOもいないの?」CEO「90年代に一人、もう一人いた」現実世界の皮肉な風景です。
もう一度パッケージに入って出荷されれば元通りの悩みのないバービーに戻れると言われ、パッケージに入ってみたのですが、済んでのところで脱走するバービー。

逃げ込んだ部屋の奥に小柄な老婦人がテーブルでお茶を飲んでいます。お茶をもらうけど飲み方がまだ上手くないバービー(こう言うところは面白かった。人間界に来てだんだん人間に近づいている。)「私は典型的なバービーで得意なこともなくて髪の毛も整ってないから」と言うバービーに「あなたはそのままで素敵。」と伝える老婦人。出口を教えてもらって会社を脱出したところ、サーシャとそのお母さんのマテル社秘書グロリアに助けてもらい、逃走するバービー。

グロリアが死のことや、セルライトのことで悩んでいたことを知り、マーゴット・ロビー・バービーの持ち主はおそらくグロリアで、彼女が現実でぶつかる悩み、女性が置かれている現状、男中心の社会でどれだけ頑張ってもそれなりにしかなれない、など現実世界の女性の理不尽や、たくさんの葛藤を抱えて生きている現代の女性の話を聞き、現実を知っていくバービー。マテル社の社員から逃げるためにバービーランドに帰ると・・・

バービーランドがケンダム(Kingdomのもじり)になっていた

ケンたちが皆ロックな衣装に毛皮を着てサングラスをかけて人間界の男性支配をバービーランドに持ち込み、ケンダムランドにしてしまい大変なことになっていた。
3人が知らない間に他のバービーたちもケンに媚を売って飲み物を運んであげたり、大統領だったバービーもケンのためのビール運びやマッサージ役などになって自分が大統領だったことも忘れている。
ドリームハウスはケンのmojo道場カーサハウス(?)になってるし、みんな男社会に洗脳されてる!大変だ・・・。
しかも48時間後に正式にケンランドに変えるよう憲法案が提出されていた。
16世紀に伝染病が植民地に流行したみたいに、みんな家父長制や男支配の免疫がないのよ。目を覚まして!」とグロリア。落ち込むバービー。
しかし、現実世界での女性の理不尽な扱い、男社会の元でどんな苦労をしているかのグロリアの演説で、洗脳が解けて女性の主体性(Agency)を取り戻すバービーたち。そうだバービー1人1人の洗脳を解こう!変てこバービーたちと一緒に作戦を立てます。
ケンたちを誘惑するために、ケンにわざとPhotoshopの使い方を聞いたり、ロックや車の歴史を説明させたり、ゴッドファーザーの話を最初から教えて!などしているうちに1人1人のバービーをさらって洗脳を解きます。

それぞれのバービーが、私なぜケンの飲み物運びなんかしてたのかしら。とか、私大統領だったわ、と思い出して、なんとかこの男社会から元の世界を取り戻そうと、考えた作戦は、ケンたちを誘惑して勘違いさせ仲違いをさせようというもので、見事ケンたちは「お前がバービーを取ったのか?」「いやバービーは俺のものだ」と混乱し始め、ついに次の日ビーチで戦争をすることを決定しました。

その裏で憲法改正を阻むバービーたち。

男たちがビーチで物を投げ合い戦争しているうちに、バービーたちは投票に集まりバービーランドに戻すよう決めてしまいます。(投票に行かない人は自分の不利益になる社会を実現されてしまうという民主主義のお勉強になった)

ライアン・ゴズリングのケンは、バービーたちにしてやられたことで自信を失い、泣きじゃくるのですが、バービーは相変わらず友達のまま、自分のものにはならない、と気づいてしまいます。(ただしケンナイトも時々やっていい」ということになった。ケンたちの役職もごく下の方から、まるでかつての女性の社会進出のように・・・)

マーゴット・ロビーのバービーだけは、元の状態に戻るのではなく、現実に気がついて生きていく、つまり普通の人間と同じく生きていくことを選ぼうとします。そこにお茶をご馳走してくれた老婦人が現れ、「私はルース・ハンドラー(あなたの産みの親)よ」と正体を明かします。「私は典型的なバービーで大統領でもないし、特別賢くもないし、完璧じゃなく自信がない」というバービーに、「大統領であってもそうでなくても、お母さんでもその両方でも、どんな姿でも女性が自信を持って生きて欲しいからあなたを作ったの」「自分の娘の名前がバーバラだからあなたの名前をそうしたの。誰もが母親をスタート地点として、そこから自分の道を歩んでいくのよ。」などと教えられたバービー。ここはバービーがなぜ、彼女に望まれて生まれてきたかの答え合わせのようでした。(ちょっと「レディ・プレイヤー・1」っぽい)

そしてバービーは「誰の許可(Permission)もなく人間になってもいいの?」とルースに聞くと、「人間になるのに誰の許可もいらないのよ」と言って消えてしまいます。(お人形(としての女性)が意思と主体性を持って人間になるのに誰の許可もいらない。)

バービーランドを出て、グロリアとサーシャの家庭に迎え入れられ、リアルワールドで生きていくことにしたバービー。
最後の部分、諸説あるのですがどういう意味があるのか皆さんも考えてみてください。

追記:8/19 大幅に書き直しました

2回目を見に行ったので不正確だった部分をだいぶ修正しました。まだ正確でない部分もあるかと思いますがお許しください。字幕も少し英語のニュアンスと違って、きちんとした原文で見たい方は配信を待つのも良いかもしれません。
とにかく何回見てもお人形の世界の質感や動きなどの演出・美術・ダンスなどが素晴らしく、細かいネタや仕組まれた意味に気づくことがあり、面白かったです。

中でも、反バービー派の批判も加味した上でそれを現代の女の子の意見として出してくる。批判的な視点を持つことはとても大事だと監督も考えているんだと思います。ここが何より世界観としてより厚みを増していたと思います。男社会のカリカチュアとしてのケンダムランド(?)も見事な比喩となっていたと思います。

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