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ふみあきと5年ぶりにセックスした話.2 【ちんこの泣き顔 】


あの夜、夫のちんこは確かに泣いていた。普通にとても、哀しそうに。

このまま一生、あのちんこは誰の温もりに包まれることもなく、死んでいくのか。私は心底そのちんこに同情した。ちんこに同情したのはその時が初めてだった。 今までどうにかしなきゃと思いながらも後回しにし続けてきた「夫ともう一度セックスをする」というシンプルな課題に本気で向き合うべく、二〇二二年11月27日の昼下がり、娘にはYouTubeを見せ、私はこの文章をタイプし始めた。

 「セックスする」という明確なゴールに向かって努力し、確実に進んでいく様子をSNSに投稿していく。狂ってるとしか言いようないが、こう考えよう。17歳の女子らが昼休み、菓子パンと紙パックジュース片手に、ダイエット宣言するのと全く同じシステムだ。本気で痩せたいんだけど、一人でやってるとつい怠けちゃう。だからわざわざ宣言しとく。 「3ヶ月で5キロ、絶対やせるからね!」 これは周りの者にとってかなりどうでもいい宣言だが、そこはそんなに重要じゃない。私言ったよ言い切ったよ!言ったったよ!もう逃げらんないよー! という自分にかける負荷と、意気込みが大事なんだ。エンジンかけるんだ。よぉおーーしっ、絶対セックスするぞ!

整理して説明しようとすればする程、何故そんなことを不特定多数に向けて公にしなければならないのか、自分でも本当に意味がわからないが、私にはこんな馬鹿みたいな方法しか思いつかない。 わからないんだけど、何かそこに意味があるような気がする。
何かわからないけど意味がある気がするのと同時に、別の大きな何かを失うことは確実だが、私はやる。やらないよりマシだ。

あの日のちんこの泣き顔を、忘れないうちに。

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