10年代のヒット曲が思い出せない ヒットの崩壊③

 2000年代後半から2010年代にかけての代表曲が全然思い出せない。当時にして30歳を超えると最新の曲を覚えることができなくなっていったのか? それに輪をかけてことごとく流行に乗り遅れてしまう人間だったのか?

 確かに私が中年に差し掛かり、子供のころから陰キャで仲間の輪の中になかなか入れないことも大きなコンプレックスとなっていたのは間違いない。

 しかし、令和の時代を迎えて40も超えてしまった客観的に振り替えてみると、どうやら私の問題でもないらしい。

 2010年代のJ-POPのヒットが見えにくい時代だったようだ。

 2010年代はAKB48の勢いがすさまじく、当時のオリコンヒットチャートの年間ベスト5はAKB48の楽曲で埋め尽くされいた。2010年当時もヒットの権威としてやはりオリコンが強かった。オリコンが強いということは、シングルCDの売り上げ枚数の数がそのままヒットの強さとして考えられていた時代である。しかし、「AKB商法」という名で特典や握手会、選抜総選挙などを駆使してAKB48がオリコンヒットチャートをハックした形となった。賛否はともかくAKB48が爆発的な人気を得るためには、何をしなくてはいけないのかを戦略的に考え抜き、オリコンを攻略したのは見事だと思う。いろいろ文句も言ったが、私だって「ヘビーローテーション」や「恋するフォーチュンクッキー」のころにはしっかりブームに乗っかっていたぐらいである。

 しかし、2010年代のヒット曲がAKBだけだったのか?

 間違いなく違うと思う。

 一方でオリコンとは別の指標として、ビルボードジャパンHOT100というのが新たに登場した。
 
 ビルボードジャパンHOT100での2014年2015年のヒットチャートはこんな感じ

2014年
1.Let It Go~ありのままで~:松たか子
2.ひまわりの約束:秦基博

2015年
1.Dragon Night:SEKAI NO OWARI
2.R.Y.U.S.E.I:三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE

一位と二位まで上げたが、AKBばかりのオリコンとはずいぶんと様変わりしている。改めて振り返ってみるとこちらの方が当時はやっていた楽曲として納得ができるだろう。

 ここでビルボードというものを改めて説明しよう。もともとアメリカで100年以上の歴史を持ち、エルヴィス・プレスリー、ビートルズ、マイケル・ジャクソンといった全米1位を報じてきた。全米1位=世界1位ともいえるだろう本当に大物ばかりが取り上げられる世界的権威ともいえよう。

 ビルボードの指標は、CDの売り上げだけではなくラジオのリクエスト回数、ジュークボックスの再生回数と複合的な指標をもってランク付けする。現代なら、CDの売り上げ枚数の他に、ストリーミングの再生回数、YouTubeでの再生回数、SNSの表示回数など多岐に渡る指標でランキングする。その日本版に当たるのがビルボードジャパンHOT100という形で2008年に日本でスタートした。

 結果として、オリコンとビルボードでは全然違う結果となった。両者で随分と違う結果となったが、やっぱり秋元康が仕掛けたAKB商法のせいなのか

 2010年代は音楽に触れる環境が多様化している。その時にはスマーフォンやSNSが発達しており、いろんな形で音楽に触れている。それに対して日本の音楽産業はやはりCDの売り上げに固執しており、やはり世界から取り残されてしまっている感がある。

 CDが100万枚や200万枚も売り上げるCDバブルの90年代は、みんなが同じようにテレビを見てドラマやCMのタイアップを通じて同じような音楽を聴いて、新曲が発売された瞬間CDを購入するようになった。おかげで90年代のヒット曲は誰でも知っている状態となった。今でもオリコン年間ランキング50位まではほとんどすべて覚えている。

 あれから、インターネットが発達しスマートフォンやSNSの時代となった。音楽を所有するにもCDを買うことばかりではなく、iTuneのようなダウンロードサービス、Spotifyのストリーミングやサブスクで手に入れることもできる。なんだったら、音楽を購入せずYouTubeやSNSで無料の音楽を聴くことの方が主流かもしれない。

 その結果、誰もが同じ曲を聞かなくなった。しかし、人それぞれ好みの曲を聞くことにより、楽しみ方も細分化された。

 アーティスト側も90年代のような特大ヒットはなかなか怒らないかもしれないが、確実にファンの心をつかみ息の長い活躍のできるアーティストも増えていった。

 誰もが同じ曲を楽しむ時代ではないが、人それぞれが好きなものを楽しめる時代も幸せな時代と言える。

 それでも、誰もが熱狂し口ずさめるような名曲もあってよいと思う。また10年20年たった時に、2010年代を振り返った時に「この時どんな時代だったけ?」と思い出すことができないのはやっぱりさみしいと思う

 ヒット曲は音楽に詳しくなくたって自然と歌い口ずさめる曲があってこそだと強く思うのだ

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