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花束みたいな恋をした

少し感想を書こうと思ったら、ダラダラと長い文になってしまった映画の感想。

映画の公開は2021年1月。
普段ラブストーリーは映画館では観ることはなく、たまたま時間が合う映画で、有村架純は可愛いから観ようかな、そんな前情報も何もない状態で鑑賞。

終わった後、なかなか席を立てずに帰り道は
ひと駅歩いて帰ろう、そんな気持ちになったことを覚えている。映画館から家までは5分の距離なのに。

2022年3月11日に日本アカデミー賞の授賞式が開催されると知り、震災があった日にするのか。
なにもこの日にしなくともと思いながら、どんな作品がノミネートされているのか、ホームページを観ると「花束みたいな恋をした」がノミネートされていた。

作品賞ではなく、優秀主演男優賞や優秀主演女優賞などでのノミネート。
作品としては、ありふれたお話で学生時代のカルチャー大好きな2人が出会ってからの恋にまつわるお話で、主演がこの2人だったから、あれだけ話題になったことは否めない。
どこにでもいそうだけど、こんな可愛らしい2人はそうそういない。

ありふれたお話だけど、自分には突き刺さった映画。そしてロングランでいつまでも公開されていた記憶。
久しぶりに観たい、配信を探すとParaviのチケットで観れることを知り観ることに。
映画の話に触れるのでネタバレが嫌な人はフェードアウトしてください。


学生時代の自由な生活、出会う様々な人
なんとなく生きている中で自分の興味あることが一般的ではない場合、共感してくれる人は自分の理解者だと男女問わずに意気投合することも多かった。

同時に異性で恋愛感情を抱いた場合には、その人の好きな世界観や趣味を知りたくて自分の世界も広がると信じて止まなかった当時の自分の記憶まで甦った。

映画の中では、サブカルが2人の共通点として描かれる。その一方で、大学生のノリ、カラオケやイベント飲み会、そんな世界が空虚だなーて思いながらも流れに身を任せるかのように足を運ぶ。
時間は有限、行きたくなければ行かなければいいと今は思うけど、仕事の絡みだったり、自分の好きなこと以外やらないなんて現実社会ではなかなか難しい。
学生時代の自由さは友達付き合い含め、ほんとに自由だったなぁ、懐かしさが込み上げる。

映画は別れた2人がカフェでそれぞれに恋人といるシーンで言葉は交わさずに再会するとこから始まる。
別れた2人の話か。恋愛の始まりのワクワク感。
何かが起こりそうで起こらない、男女それぞれの感情の描写があり、まるで小説を読んでいるかのような情景の表現が心地よく感じる。「電車に乗っていたら」ではなく、「電車に揺られていたら」と話す彼の言葉に嬉しさを覚えたり、共通点が見つかるほど、相手はどう思っているんだろう、話が合う友達として?
自分の中での好きは確定しているけれど、相手の気持ちが知りたい、そんな恋愛の始まりのワクワク感楽しさを全て詰め込んだ前半。


公開当時、映画の感想を観ていると
「カップルでは行かない方がいい」
「カップルで観ると気まずい、別れる」
と、目にする事が多く
若かりし頃を思い出す側としては
微笑ましく、あるあると思いながら楽しく観た。という二極だったように感じた。

中盤からは、学生の頃のままではいられず、生活やら価値観のスレ違いが生まれる。
大人になると楽しいだけではやっていけない。

喧嘩のシーンも増える終盤では、「もうどうでもいい」とお互いに思いながら別れ方が分からない。
別れる事にもパワーがいるよね。全然自分の話ではないのに、苦しくなった。

恋愛って楽しい時は世の中の全てがキラキラしていて、アスファルトのにおいがする都会の空気でさえ美味しいと思ってしまうような幻覚を味わせてくれるけど、何かが狂い始めた時にはほぼほぼ手遅れで、修正しようと思えば思うほど空回りしたり、答えはもうあの時には出ていたんだなと振り返ると気づけたりする。
「始まりは終わりの始まり」前半に出てくる印象的な言葉の伏線をしっかりと回収してくれる終盤までの流れ。

一緒に生活をするパートナーとしては最高、と思っている相手に対して、結婚したら恋愛感情がなくてもうまくやっていけるよ。と
「別れたくない」という男性を見た瞬間に
終わった……と思った。

結婚して家族になったら恋愛ではなく愛情に変わるのは至極当然のこととして、結婚する前からそれを口にしてしまうのは、もうただの妥協ではないか。
そんなカップルや夫婦は世の中に五万といるだろうが、それを口にして結婚しよう、なんて何とも嬉しくないプロポーズを彼女は2回もされていた。

同じ価値観や好きな作家に始まり多くの共通点があったからこそ、そこに歪みを感じ始めた時には、お互いを尊重できずにイライラが募り同じ時間を過ごしていても、別の方向を向き始め狂った歯車は元には戻らない。
お互いに出会い過ごした日々は楽しかった記憶に溢れいい思い出になり今は別の人と過ごしている、そんなラストだけど、男女の差が描かれているのが面白い。

恋愛は「女性は上書き保存、男性はフォルダ保存」なんて言うけれど、全ての人がそうではないのは置いておいて。

劇中では男性は別れてから今までのこと、元カノと話したいことがたくさんあると思い、2人のお気に入りだったパン屋を検索する。当時パン屋が閉店する時の彼女からのメールは完全に流して見ていたのを象徴するようなシーンであり、女性は元カレの思い出を振り返り懐かしく思う。過去を振り返るだけなところがクスッと笑えた。


別れのシーンで、過去の自分達を見るかのような
2人が萩原利久さんと清原果耶さんだったことに、当時映画を観た時には2人とも、お名前を認識してなかった、時の流れってすごい。
特に清原果耶さんの変貌っぷりに1番驚きました。女優さんはすごい。

学生でもないいい大人な私が、2人と同じコンバースのジャックパーセルのスニーカーを履いて映画館に行ってしまった私は(たまたま)
誰も他人の靴なんて見ていないと思いながらも、恥ずかしかったのが、映画の観賞後に中々席を立てなかった理由のひとつでもあります。




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