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【連載小説】「恋するスピリチュアル」㉑~お姫様抱っこ、からの、ぐるぐる

大手出版社の文壇社から、声が掛かり、晴れて小説家としてデビュー!
私の人生は順風満帆~。

かっこ、笑、

…となれば良かったのだが、人生そんなに上手くはいかない。

否、私だけが運を掴めていなかっただけなのかもしれないけれど…。


せっかく文壇社の編集長から名刺を貰ったのに、私はそれから何か月も迷っていた。
これは果たして、連絡をして欲しいという事なのか?
それとも、単にあの時、審査員たちに酷評されていた私に対する同情なのか、と。

認められたのは嬉しいけれど、それを真に受けて、うっかり連絡をすると、
また酷い目に遭ったりするのではないか…?と。

私はこれまで、シナリオ時代も含めて、何度も嫌な目に遭っていた。
時に講師から罵倒されたり、企画書を持って行った先のプロデューサーから冷たくあしらわれたり、酷い時には、提出した企画内容が、先にテレビ放映されたということもあった。

私はさんざん煮え湯を飲まされてきたのだ。
だから、おいそれと信用する訳にはいかなかった。

なので、名刺を前に、私は、「うーん、うーん」と何か月も悩んでいた。

けれど、そんな事もしていられないだろうと、ある時、意を決して、恐る恐るメールをしてみた。
さすがに電話するには、勇気がなかった。

返って来た返信には、

〝遅いですね。もうとっくにその気がないのだと思っていましたよ〟
と書かれてあった。

私は泡を喰った。
出版業界の事はよく分からない。
けれど、少なくとも名刺を貰ったら、すぐに連絡をしなければいけなかったのだ!
(アタリマエ か…!!)

私は、慌てて謝った。
「すみません。俄に信じられなくて、迷っていました! やる気はあります! どうぞよろしくお願いします」

藁にもすがる思いだった。


つづく




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