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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る/【読書report】

第一の感想は、オードリー・タン以前に、私は現代台湾を知らなかったということ。
「テクノロジー界の異才」とされ、15歳で起業、18歳で渡米し、シリコンバレーで起業、33歳で引退し、アップル社や大手ITメーカーでデジタル顧問を務める…云々、という目のくらむような経歴があるのだが、語り口は淡々としておりやわらかい。日本の、そういう新進気鋭なタイプの若者(オードリーは若者、ではないが)にありがちな、尖った感じがなくて、「特別なことは何もしていないし、何かを否定したり批判することにも関心がない」といったスタンスが、全体から立ち昇っている。自分のことはもちろん、台湾の業績についても、自慢したりはせず、でもとても誇りに思っていることが伝わってくる、嫌味のない文章。賢く優しいご両親に育ててこられたことも、成育歴から垣間見られた。

私は、IT業界の知識はほとんどないし、自分自身の考えも特になく、デジタル社会に積極的には馴染めないでいるタイプの人間だ。

だから、細かいことはよくわからないし、同意も批判もできなかったのだが、唯一わかったことは、IT技術は、この人のような、世界のことを公平に、誠実に見ている人が使いこなせば素晴らしいツールになる、ということだ。
同時に、そういった人材を育てることがいかに難しいかと考えると、未来にあまり希望が持てないな…と思ってしまった。

このような人が、企業の経営者とかではなく、公僕としての役割を誇りを持ってこなす公務員として存在していることに、台湾の幸運がある、
そう思った。

これまで、さほど身近に感じられなかった台湾の存在感を強く感じさせ、
中国と台湾が不穏な状態になりつつあることを深く懸念してしまう。

そういう感想を抱かせた書籍であった。


オードリー・タン(唐鳳)

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