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日々よしなしごと~第二の人生とか~

定年近い方とお話をすると、思わず第二の人生が始まりますね、と軽く言ってしまうのだが、そんなに輝かしい新たな人生がスタートすることはそうそうない。むしろ定年後の暮らしは、期待よりも不安が多いだろうな。特に仕事については。

先日も、時々ふらりと訪れる某新聞社の中年男子(もう中年じゃないか 笑) ちょっとした仕事のことをぼやきに時々来る彼が、来年定年なんだよねとボソッという。
定年延長が当たり前になった昨今65歳までは働けるはずなので、そうするの?と聞くと、いや辞めるときっぱり。お! いいぞいいぞ!
私は思わず、それはいいね!なにかするの?と聞くと、なんだか歯切れが悪い。ハローワークとか行ってみたけど、なんだかピンとくるような仕事はね~と

こういっては何だが、ハローワークでワクワクするような仕事が見つかるとは思わないけど、どうせなら全く経験したことがない仕事がいいんじゃない?とか無責任なことを言ったりしていたら、

本当は子供のころからやってみたいことがあるんだけどね・・・・と。

あら!じゃぜひこの際やってみれば?
で、やりたいことって何?

と調子に乗って聞くと、
口ごもって、恥ずかしいから今は言わないって・・・

子供か?と思って吹き出しそうになったけど、じゃあ、いつかカミングアウトしてくださいね!笑 ってことで、それ以上は追及はしないことにした。

それでもね、子供のころからの夢を忘れずにずっと心に抱いていて、やっと実現できるかもと思えるだけですごく素敵なことだと思うよ!と励まして?おいた。本当にそう思うよ。

多くの定年を迎える男子は、年金を受給できる年齢までは、少々条件が悪くなってもこれまでの会社で働くか、公務員であればどこかに出向・・・という選択をする人の方が圧倒的に多いのではないだろうか。
現実的な問題もあるしその選択を否定しない。多分その選択でも、これまで味わったことがないほろ苦い思いもするだろうけど、それも人生の機微を知る機会ってもんだよね。

第二の人生といっても、結局自分の人生の続きで、仕事が変わったり環境が変わったりするだけなら定年じゃなくてもよくあることだし。

かく言う私も、そういう意味では第二、第三の人生を歩んできたのかもしれない。
32年間務めた銀行を、あるきっかけで辞めて、それまで想像だにしなかった映画館を持った公設民営の施設の運営をすることになった。
なぜそうなったかは、少々込み入った話なのでここでは割愛をさせていただくが、前職を辞めるタイミングとしては絶妙な時期だったと思う。
総合職でもない一般職で30年も務めていれば、職場では「お局様」(なんて今は言わないよね 笑)扱い。どんなに人間関係に問題はないとはいえ、大なり小なり鬱陶しい存在になってくるものだ。
なので、私はなんの未練もなく辞めることができた。円満退職でね。

新しい仕事に携わるのは、いわば行きがかり上と言えなくもないが、大きな事業だったのでやると決めたら全力を注いでやり遂げるしかない・・・。
不安もとてつもなく大きかったが、ワクワクも大きかった。だから、0どころかマイナススタートとなる全く未経験のその事業が、とにかく形となり曲りなりににも運営できる体制を作ることに、まさに全身全霊を傾けた。
ところがやっと軌道に乗って来たと思ったタイミングで、その施設を休館するという行政判断で、9年であっけなく幕を閉じることになった。行政の仕事はこんなものなのだなと理不尽に思いつつ、ここも退け時かもという思いもあった。世間的には、やっと根付いたミニシアターという文化。お客様からは何とか続けて欲しいという要望はもちろんあったが、別の形でやればいいと腹をくくった。

その後、仕事を辞めた私はこれもひょんなきっかけで、喫茶店をすることにしたのだ。これも自然な流れの中での決断だったのだが、気がつくとずーっといつか喫茶店をやりたいと思っていたことが実現していたという不思議。

喫茶店という空間とそこにある時間が好きだった。静かに音楽が流れる店内でゆったりとコーヒーを飲みながら本を読む人。そんなイメージだったが、かつて自分が好きで通っていた店がそういう店だった。そして、何たる偶然かと思うが、今いる自分の店はその店なのだ。

始めてみれば、この忙しい時代に喫茶店でのんびりゆったりと過ごすことを愛する人は、ずいぶん少なくなったらしいけどね 笑

そして、喫茶店を始めて丸7年経とうとしている。
その間に、別の形でスタートし始めたミニシアターも、私がいた施設に収まりまちの映画文化を守ってくれている。
そんな仕事変遷も、なかなか味わい深い人生の彩だなあと思えてくるよ。

というわけで、第二だろうが第三だろうが自分の人生の続きに違いない。
長年同じ職場で働いていた人が、新たな環境に入ることは勇気のいることだと思うけど、知らない世界が広がるし今まで見えなかったものが見えたりすることもある。
いろいろあっても人生を味わうスパイスと思いましょ。

それにしても、件の彼のカミングアウト。早く聞きたいなあ。
な~んだそんなことだったの!
なんてことは絶対に言っちゃだめよね 笑

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