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東京都八王子市から。『いびつ』さを味わうストール。

一枚ずつ違うかたち、波打つきわ。
パラスパレスが長年作り続けている「縮絨ストール」は、いっぷう変わったストールです。

本来お店に並ぶものであれば、個体差のない均一さが求められるかもしれません。しかし、このストールは、他とは逆を行くものづくりをしています。

個性があってどこか、いびつ。

なんだか人間みたいな味わいがあるのです。

そのストールが、こちら。

近づくと、生地がもこもこしているのがわかります。

フェルト状になっていて、ふっくら柔らか。この独特の風合いこそがいちばんの特長です。今回は、風合いの秘密や、ストールづくりの流れをご紹介します。


まずは、山梨の工場から


生地を織るところからはじまります。

ニット用の毛糸を、ガーゼ調に織っていきます。糸が切れやすいので、旧式のシャトル織機でゆっくりと織っていきます。

向こう側が透けるほどのガーゼ感です。


織りがおわると、東京都八王子市の工場に運ばれます。


八王子市にある加工工場。ここで、生地をフェルト化させる縮絨しゅくじゅう」をかけていきます。

上が縮絨前、下が縮絨後。幅が縮んでいます。

ウールは、熱と摩擦で繊維が絡まり縮みます。その性質を活かし、ふっくらした風合いを作っていきます。

目がつまって、色が滲んだような表情。



さらりと紹介しましたが、実は、一筋縄ではいきません。



加工の難しさ

ドラム型の大きい機械を使い、お湯で揉み込んでいきます。


難しさの一番の原因は、糸の色によって、縮む具合が違うこと。

同じ加工時間でも、例えば、A色はよく縮み、B色はあまり縮まない。と収縮差があり、さらに格子状に色を組んでいるので、より複雑になっています。

収縮差で端がなみうち、いびつな不定形。

また、色の系統により、丈の長さにばらつきがでてきます。

とはいえなるべく差が出ないように仕上げたいもの。ここで、長年の経験がいかされます。



秘密のレシピ


加工機の脇のデスクには、背表紙にメーカー名が書かれたレシピノートが何冊もありました。本棚にはずらりとこれまでのノートが並んでいます。

ノートには、その年の糸色や大きさ、加工時間などが、つぶさに書き残されています。

データを基に、時間と温度を見極め微調整。

長年の経験があるからこそのものづくりです。

それでいても、「やってみないとわからない」ことが多く、サンプルから緻密にテストをして、なるべく大きな寸法差が出ないように尽力しています。

今回は、サンプル作成の場に立ち合わせてもらいました。


レシピノートをのぞくと、3つのストールの絵と、加工のレシピ。絵の上には人の名前が書かれていました。気になって質問してみると、

「絵の上の名前は、担当した方のお名前でしょうか」

職人さん:
「これはね……、ふふふっ。違うんですよ。仕上がったストールの形がバラバラだったから覚えやすいようにスタッフの特徴に見立てて書いたの。例えば〇〇さんは背が高いでしょ?」

きびきびと動きながらも、お茶目な一面。仲の良さがうかがえます。

各地さまざまな工場に訪問する機会があるのですが、時々このような「楽しみ」に出会えます。職人さんの工夫の跡だったり、仕事場のちょっとした生活感やユーモアを見るのがとても好きです。

にゃーん

まずは1回目の洗いから

すこし縮みました。

洗い加工は何度かに分けて行われます。一度にまとめてすると綺麗に仕上がりません。広げて、寸法を計り、縮みの具合をみながら次の洗いタイムを決めます。

青のストールは次の加工時間を〇〇秒短くしてみよう、と、秒単位の調整です。

その後、二度目の洗いへ。

洗いの後は乾燥

乾燥でもさらに縮み、また、乾燥後置いておくと今度は伸びたりと生き物のように寸法がかわります。逆算しながら加工時間を調整しています。

乾燥
しわを手で伸ばします。
下から、加工前。一度洗い。二度洗い。サイズの変化がわかります

洗う、乾かす、広げる、測る。

これを、色ごとに繰り返すのですから大変なこと。

部分的に縮絨が弱い箇所は、機械ではなく手でもみこんだりと、手仕事も欠かせません。


サンプルの検寸

おおかた仕上がると、別の企業にバトンタッチです。形を整える作業や、ネーム縫いつけの作業にかかります。

いそげ〜

ここで最終的に、ストールを引っ張ってほぐし整えたり、ネームをつけたり、一枚一枚しっかり確認しながら仕上げます。

こうして、縮絨ストールができあがりました。

独特の風合いと、色のたのしさ。糸そのものに風合いをまかせ、矯正しないおおらかさがいきたストールです。



続けるからこそ向き合えること


訪問を終えて、担当のTさんとお話しをしました。

「長年の人気アイテムですが、現場をはじめてみました。ものすごく工程数が多くて……、一枚一枚が違うのも大変ですね」

Tさん:「たしかに大変なアイテムですが、続けてもらえるのって、すごくありがたいんですよ」

「このストールも、もし途切れたら、次は出来ないってなるかもしれないんです。長年作っているからこそ、現場も向き合ってくれる。大変さはありますが私たちも嬉しくおもっているんですよ」

とても嬉しい言葉でした。私たちがあたらしい商品を作れるのも、支えとなる丁寧なものづくりを届けてくれる手があってこそ。

秋のよそおいを楽しくする、そんなストールを、ぜひ店頭で触れてみてください。


縮絨ストール¥15,400
品番:PM24383C オンラインストアはこちら
※掲載写真はサンプルカラーのため、正しいお色は店頭、オンラインストアにてご確認ください。

←(左)52番色ベージュ / (中央)80番色グリーン / (右)40番色ブルー→


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