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メンヘラ彼女と別れたい男友達の相談をメンヘラが受けてみた

記事執筆日:2016年11月29日
※作者注:この当時はまだカウンセラーをやっておらず(将来やることも予定になく)、また、境界性パーソナリティ障害も寛解していませんでした。


ある日の深夜、電話が鳴った。着信相手は男友達。
「少し前に付き合い始めた彼女が実はメンヘラだった、別れてくれない、助けてほしい」という内容だった。

元は別の男友達(共通の友人である)に相談していたそうだが、
「そういう相談は巴にしたらどうか。巴の方がプロフェッショナルだ」
などと言われたので電話した、との事。

彼が言う通り、一般男性が「メンヘラとはこういう考えではないか」と見当違いの想像・妄想をして議論するより、本物のメンヘラに「こういう時はどういう考えなのか」と聞いた方がよほど建設的である。

「確かに一番、相談役にうってつけだ」と自分でも思った。
別れてくれない彼女の特徴や行動をまとめたものは、だいたい以下の通りである。

●外見はサバサバしている

●「手首を切った」というメッセージが来た

(死にたいという内容も含まれていたかと思う)

●自分の家の近所に来たというメッセージも来た

●毎日何十回とメッセージが来る

(返信をしなくても来る・返信しないと更に病んでくる)

特徴1:外見はサバサバしている

まずこの「外見がサバサバしてるからメンヘラだと思わなかった。自分のことを放っておいてくれる女性だと思っていた」という男性の声だが、元「外見がサバサバしていた」メンヘラ女のわたしからすると、とんだ見当違いである。

勿論すべてのサバサバ女がそうとは言わないが、
「粘着質で湿度100%の自分を隠すために外見だけでもサバサバしたい」
「まずは形から入れば中身も次第にそうなっていくのではと思っている」
「なんか知らんけどメンヘラ女はカッコイイ外見の女を好きな奴が多い」
ために、多くのメンヘラ女は今日もサバサバするのではなかろうか。

キャラメルホイップフラペチーノ☆(適当)みたいな女の方がよほど彼氏を放っておいてくれる気がする。
何故ならそういう女性たちは自分磨きの方が大事なので、彼氏に粘着している暇など無いからだ(偏見)。
もしくは、粘着したとしても、サバサバ系メンヘラ女よりはマシだと思う。多分。

特徴2:「手首を切った」というメッセージが来た

そして「手首を切った」「死にたい」であるが、これはメンヘラの常套句中の常套句である。
10年以上手首等を自傷し続けたわたしが断言するが、手首を切ったくらいで人は死なない。

薄い傷だから死なないのではない。美術用のクッソ切れるデザインカッターナイフを使用しても死ななかった(経験談)。
もしかしたら自傷で死ねる方法もあるのかも知れないが、一般的によく知られる手首自傷では死なないとわたしは思う。

本気で死にたい人が取る方法は、飛び降りるか薬を大量に飲むかするのではないだろうか。
ちなみに筆者は市販の風邪薬を大量に飲んで、 「あと1時間病院に来るのが遅かったら死んでましたねー」と病院の方に笑顔で言われた事がある。

この話をして、「じゃあ俺が冷たい態度を取っても彼女は死なないのか!」と相談者の声色に希望の色が見えたが、それも「NO」である。

「死にたいとか言ってる奴は死なない」と言うが、「死にたいと言ってて死ぬつもりはなかったけどうっかり死んでしまう」ことも大いにある。
うっかりあと1時間遅かったら死にかけたわたしだが、「死にたい」と思って先述のODをした訳ではない。

胃洗浄をして一晩眠って落ち着いた後、精神科医に向かってわたしが放った一言は 「死にたくはなかったです。ただ、世界が変わるかと思って」 だった。我ながら、あの時の自分は判で押したようなキ○ガイであったと思う。

覚えておいてほしい。
メンヘラは、死ぬつもりがなくてもうっかり死にかける(もしくは死ぬ)こともあると。

特徴3:自分の家の近所に来たというメッセージも来た

節度のあるメンヘラは「家の近所に来た」と言ってもいきなり家に武器を持って乗り込んだりはしない。

わたしも一度だけやった事があるが、そういう時のメンヘラの心中は殺伐バイオレンス漫画ではなくラブロマンス漫画なので、彼がまた優しい笑顔で外に出てきてくれ、会って話をしてくれるのを期待している。

やっていることは限りなくストーカーであるが。

特徴4:毎日何十回とメッセージが来る

話を聞いていると、おおよそこの「別れたい彼女」はわたしの想像通りの(というか、自分のタイプに近い)メンヘラであると予測された。
ので、下記のようなことを言っておいた。

「彼女がわたしの想像通りのメンヘラであれば、わたしの今から言う対処法が有効である。しかしそうではない場合もあるし、先述した通り『うっかり死ぬ』こともある。
ただ、今の状況を一刻も早く変えたいと言うのなら、自分の行動を変えるべきだ」

さてその対処法であるが、具体的に起こさねばならない行動も行程も一切ない。

彼がするべきことはただ一つ「何もしない」である。
大量のメッセージにも返信しない。
大量の着信にも出ない。
ただこれだけ。

なぜメンヘラは粘着・執着するのか?

「話を聞いてくれる」「反応してくれる」「優しくしてくれる」からである。 優しくされたり話を聞いてくれたりすると、メンヘラは「まだわたしへの気持ちが残っているのではないか」と期待する。
本能的に「そうではない」と判っていても、だ。

いや、「本能」でなくても、本当はみんな気づいているのではないか?
察するに、メンヘラはわりと相手の顔色やその場の空気を読む能力に長けている人が多い気がするし、頭の良い人も多い気がする。
そうではないように見える人は、「あえて(もしくは無意識的に)そうやっている」のではないか。

では何故「わかっちゃいるのにやめられない」愚かな行動に陥ってしまうのか。

個人的な見解だが、メンヘラ達は彼の「好きではなくなった」気持ちを真っすぐ受け入れてしまうと、自分の精神状態が揺らぐ・ひどい時は崩壊寸前まで行く事を知っているからではないだろうか。

自分を守るために、それではいけないと判っていても、メンヘラは離れていく恋人に執着するのだ。

メンヘラの執着 VS.何の意味もない中途半端な優しさ大戦

わたしの男友達も言っていたが、世のメンヘラと別れたい男性の
「本当に死なれたら困るから優しくする」
「死なないように相談を受けている間に、新しい恋を見つけてくれれば…」

というやつ、多くのメンヘラ女にとっては逆効果だ。

優しくしてくれるから、話を聞いてくれるから、より一層執着する。
そして最終的にその優しさは「自分を好きだったからやってくれていた訳ではない」と気づき、大いに傷つく。

最悪の場合、そこで死ぬこともあるのかも知れない。
(多くのメンヘラは死なないと思うが……多分。) 

メンヘラに捕まってしまったメンヘラではないみなさんは声を揃えて言う。
「自分が冷たい態度をとって、手首を切られたり最悪死なれたりしたら嫌だ(怖い)。すでに好意はないが、話を聞くだけなら良いのではないかと思って…」

過去の悲しい経験や親などとの関係性によって愛に飢えているメンヘラは、この“話を聞くだけなら”すら最上級に嬉しい。
メンヘラではないみなさんが「このくらいなら…」と思う行為ですら、メンヘラにとっては大きな愛に見える。

中途半端な優しさは最終的にメンヘラを更に病ませる。
もうそれ、いらないから。
そうは言っても今日も世界には「何の意味もない中途半端な優しさ」が溢れている。
永遠に続く「メンヘラの執着 VS.何の意味もない中途半端な優しさ」大戦。

メンヘラ側が「あ、これ意味もない中途半端な優しさだわ。これいらねーやつだわ」と気づければ良いのだが、いやあ、自分も経験あるけど、なかなかどうして難しい。
中途半端な優しさを手放して走り出そうとするその先には、闇しか見えないから。

号泣しながら走り抜けたわたしは思う。
確かに、その先に光輝く未来はない。ただ、永遠に続く闇もなかった。
むしろ振り返ってみると、中途半端な優しさにすがりついていた時期のほうが深くて暗い闇だったのではないかという気さえする。

わたしは今日も悩んでいるし生きにくい。
ただ、少しばかりあの頃よりはのんびりしているし、豆電球(LEDではないほう)くらいの光は見えてきたかと思う。

ところでこの相談者はどうなったかというと、ひたすら連絡を無視し続けていたら徐々にメンヘラ彼女からの連絡は減り、最終的にひとつも来なくなった。

生きているのか死んでいるのかは知らないが、きっと生きているだろう。
メンヘラは思ったより強いのだ。彼女にも強く生きて欲しいと願う。

最後に相談者は言った。
「お前がメンヘラでよかった。助かった」と。

メンヘラである事を感謝されたのは初めてだ。
長く生きているとこんな事もあるのだなと思った。

<了>

【2022年補足】

・この記事は、かつて「メンヘラ.jp」というサイトに寄稿した文章です。
現在はサイトごと閲覧できなくなっているのですが、この記事はかなり好評だったので、「同じ悩みを持っている人にまだ読んでほしいな」と思い再掲しました。

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