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あの日、鍵をかけた言葉を

 おはようございます。気温も下がってきて、しみじみと感性が揺れ動く秋が待ち遠しいですね。

季節の変わり目に体調を崩して貧血になり、感性どころか頭も体も揺れているatomです。


さて今回のサブタイトルは

走り続けた先は

過去を振り返る回の、最後の話をつらつらと綴りたいと思います。


曲紹介

・back number - 水平線

 過去に一度登場していますが、何度でも紹介します。それくらい好きな曲なんです。

聴きながら、ゆっくり先へ進みましょう。 


よしなしごと


 端から見れば非常にどうでもよいことかもしれませんが、私には気を付けていることが1つがあります。

それは自分を含め、対象を安易な言葉でラベリングしないことです。


 理由は3つ。

 つ目は、私が生まれる以前の世界で創造された言葉で、私が対象を表現することに違和感を覚えるから。

私の感覚は私固有のもののはずなのに。


 対象を、誰かが創った既存の言葉になぞらえて捉えた瞬間に、

生の本質ともいえる "重要な何か" がこぼれ落ちる気がするのです。

"楽しいね" と言って、誰かが頷く。でも二人の "楽しい" はどこか違って。

その違いこそが生の醍醐味ではないかと、考えたりします。


 もう1つは、1つ目に関連して本質をそぎ落とすことで、

尊い個人を "集団の一員" にしてしまう認識の仕方が好きではないということ。

私は大学生ではありますが、"大学生"という集団 の中に "私" が位置しているというより、

あくまで "私""大学生という要素" を持っているという認識をしたい。

包含関係の大小を、常に個を尊重する方に向けておきたい。



 残りつは、貼ったラベルを伝えたりしてしまうと

良くも悪くもラベルに沿うように行動が制限されてしまうから。


私は "出来る人間" だ。

そう思うことで大きな壁に立ち向かう勇気が湧くかもしれませんが、

心身が壊れるまで逃げることを許せなくなるかもしれません。


 前回の記事の通り、自分にラベル付けすることで何が起きるか学んだ私は、

ラベルになる言葉を安易に使わないようにしてきました。


私にはもう一つだけ、人生において鍵をかけて心に閉じ込めた言葉があります。


友達ではない "何か"


 私には昔から一歩引いた視点で物事を見て、冒頭のようなくだらない話ばかりを考える癖がありました。

冷めた視点で他人と一定の距離を取り、なかなか心を開きませんでした。

今でも黒い感情や将来の夢の話を、何も隠さずに話せるのは数人だけです。


 最近そんな存在と、1年ぶりに電話越しで話す機会がありました。

 知り合って10年近く経つけれど、改めて考えると何の共通点も無いね。

性別も好きな音楽も、勉強や運動が好きか嫌いかも全部反対で、唯一同じなのは年齢くらい。

仲が良いか悪いかという感覚も無くて、特にキッカケも無く1年間話さなかったり、

ふと思い出して電話をかけたり、友達とも表現しにくい不思議な関係だよね。


 そんな他愛もない話をしながら、分かり合う必要が無くて、ただありのままを尊重し合える関係だなぁと改めて感じました。


まっすぐ生きる


 電話で話した彼女は、知り合った頃からずっとまっすぐでした。

自分を曲げれば上手くやり過ごせると分かっていても、正しいと思ったら曲げずに貫く。 


 そんな一面から周囲とたびたび衝突して思い悩む様子を見てきましたし、

強さの裏にある儚い姿を見るたびに、いつも胸が痛みました


なぜまっすぐ生きて正論を貫く人間が、

お前も妥協すべきだと邪険にされ、

生きづらい思いをして苦しまねばならないのか。

正しさを大事に抱え、独りで "出来るから" と同じように闘っていた私は、

憤りを勝手に抱えつつ電話越しに吐き出される胸の内を、いつも聴くばかりでした。


 そして話の最後には、私は決まってこう伝えました。

何も間違っていないよ。

「変わりたい」なら好きに変われば良いと思うけど、
「変えなきゃいけない」で変わろうとしないでほしい。

それはきっと自分に嘘をつくことになる。

辛ければ、いくらでも話を聴くから。


要するにこう言っていたんです。

あなたはまっすぐなまま、変わらないで。


自分と同じように、正しさを信じて生きる人が妥協する姿は見たくなかったから。


鎧の重みに


 電話がかかってくるとき、決まって彼女は苦悩の渦の中にいました。

ある日、今まで彼女を守ってきた正しさを見失っていると話をしてくれました。


正論を吐き続けたければ結果を出すしかないのは分かっている。

それを分かった上で準備を積み重ねたし、
結果を出せなければ批判される恐怖と闘ってきた

でもしんどくなってきた。
分かってくれない人は必ず存在する。

正しさの鎧は自分の芯を守るものではなく、
自分を縛り付ける重荷になってきた。


たった一言


 とめどなく溢れる言葉を聴いて圧倒されながら、

毎回のように伝えている言葉は、今回は言うべきではないと判断しました。

あなたはまっすぐなまま、変わらないで。


つい言ってしまいそうになる、あまりにも重い言葉に鍵をかけて心に閉じ込めました。


 代わりに何と伝えるべきなのか。

正しさの鎧を脱げ

彼女にとって、正しさを再定義することの苦しみは計り知れないだろう。
じゃあやっぱり、そのままでいて

今でさえ、心のコップから感情が溢れているんだぞ。

力になりたいのに思考はまとまらず、共感とも傾聴とも言えない曖昧な態度で

話を聴き続けるばかりでした。


何も出来なかった私に、ひとしきり苦しみを吐き出した彼女が言った

もう少し頑張ってみる。ありがとう。

という一言を思い出すたびに、今でも心が痛みます。


あのとき感じた無力感を、今後の人生で忘れることは無いでしょう。


正しくないけど、


 友達とも仲間とも表現しがたい彼女を形容する言葉は、未だに見つかりません。

でもそれで良いんです。"何か" が零れ落ちないように名前は付けません。


 正しさを貫く彼女は、正しさだけが正解ではないことを胸に刻み、

大きな苦悩を乗り越えて本当に強くて優しい人になりました。


私も他者の苦痛から目を背けずに悩みながらも一緒に前を向く。

そんな理想の自分に近づけるように、今日も学び続けたいと思います。


 最後に、あの日、鍵をかけた言葉を今のあなたに改めて伝えます。

理想の私になって、きっとあなたに追いつくから、

あなたはまっすぐなままで、変わらないで。


今回はこのあたりで.
atom.


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