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2021年に観た映画ベスト10 + ワースト5

今年ももう終わり。
今年は去年始まったロックダウンで閉まった映画館が、18ヶ月とかそれくらいぶりに秋にようやく再開されて、ぶり返しで週数回は通った。今までで一番映画館で映画を観た年だったかもしれない。

そんな訳で今年も、今年見た映画のベスト10をまとめたいと思う。
いつもめちゃくちゃ長くなってしまって、まとめるのにすごく時間かかるし読む方も疲れてたと思うので、今年はひとこと(+α)にまとめて紹介したい。フルのレビューは興味が湧いたら各リンクから読んでみてください。

*今年観た映画=2021上映の映画以外も含まれる
**個人の感想です
***1/5付けでワースト5を追記


・ベスト10
キューティーズ!(Mignonnes/Cuties)

少女を性的搾取しているとボイコット運動も起こった問題作だけど、自分は勇気を振り絞って評価したい。セクシャリティの解放やフェミニズムを描いているのに、本来その支持層であるフェミニストたちから大批判を受けてしまったという現象も含めて、女性の性について考えさせられる興味深い作品。男女平等、女性の独立を謳いながら、男性を卑下することでしかそれを体現できない安易?なフェミニズム映画が多いなかで、個人的にこれはなかなか誠実にテーマを描いていたと思う。

・ベスト9
The Assistant(原題)

ジュリア・ガーナー目当てで観たらカウンターでボコボコにされた。モロにワインスタインの事件を意識した、社会のなかでシステム化された職業差別や女性に対する差別、搾取、精神的暴力などをリアルなトーンで描いた秀作。ワインスタインの時に上がった「なぜ誰も声を上げなかったのか/関係者は同罪」という他人事な非難に対しての答えでもあるなと。

・ベスト8
アナザーラウンド(Druk/Another Round)

久しぶりに観たトマス・ヴィンターベア作品だったけど、これまでにないコメディックな側面も見せつつ、彼らしい洞察力に満ちた人間ドラマになってて、マッツ・ミケルセンの激渋さも合間って凄く味わい深くて面白かった。クラシックな悲喜劇のようなストーリーだけどかなり普遍的で、国や世代を越えて伝わる間口の広い作品だと思う。ラストシーンのカタルシスはすごい。主人公の飲むウォッカと、日本人の飲む抗うつ剤と、本質的な違いはなんにもないんだよな。

・ベスト7
ドライブ・マイ・カー(Drive My Car)

初の濱口竜介作品だったけど確かにすごい。深度が深すぎてかなり疲れたし掘る箇所がありすぎて評価するのも大変な感じではあったけど、常日頃ハリウッドの英語独裁主義(今考えた)にうんざりさせられてる自分としては、言語を通したコミュニケーションを描いた作品としてすごく印象的だったし薄っぺらに言えば感動した。日本人が日本語で行う会話(コミュニケーション)から、韓国語、英語などの異言語、そこからさらに音声言語を超えて視覚言語である手話、そしてさらに肉体のコミュニケーションと、様々な形で表現される「会話」による人と人とのつながりを、静かに、かつ力強く描くミニマルな大作。

・ベスト6
最後の決闘裁判(The Last Duel)

全く興味ない題材(歴史モノに惹かれない)かつ予告もつまんなそうだったので完全に油断してたがさすがリドリー・スコット。かなり面白かったですすいませんでした。昨今Me Too運動とともにようやく少しずつ表面化されてきたレイプ犯罪の実情を、中世のドラマと重ねて羅生門構成で面白く作ってしまうのはほんと凄い。エンタメかつ啓発的で教育的。中世の生活様式もかなり細かく作り込まれてて見応えあるし、こんな濃厚な作品をパパッと作って次はグッチってほんと器用すぎるぞご老体。

・ベスト5
兄が教えてくれた歌(Songs My Brothers Taught Me)

2021年の台風の目だったクロエ・ジャオの長編デビュー作。ネオリアリズムな彼女の映画作りは今作から健在で、劇中で描かれるストーリーや役者はほぼ実際のもの(役者はほぼ本人を演じてる)で、主人公の子も実際ああいう生活をしてて、劇中の彼の家も実際の自宅だったり、実の兄弟が兄弟を演じてたり、とにかくほぼドキュメンタリーのような限りなく現実に近いフィクション。彼女の作品でずっと組んでるカメラマンのJoshua James Richardsの神がかった映像の美しさにも圧倒させられる。映画は知らない世界や文化、問題を知れるというところがその価値の一つだと思うけど、これはまさにそれを体現するような作品だった。

・ベスト4
Brimstone & Glory(原題)

メキシコ中南部の街トゥルテペック (Tultepec)で行われる花火祭についてのドキュメンタリー。ナレーションなんかはほぼなく、淡々と祭前の準備、祭の最中の様子をするシンプルな作りながらも、その祭の熱量が完全に狂っていて、花火というかもはやただの爆発みたいな尋常じゃない火薬が弾けるなかを半裸の男たちが揉み合いながら駆け抜けるという狂気を、冷静かつ空撮やスローモーションなど多用した壮大な映像で見せつけてくれる怪作。音楽も凄くよい。エネルギーが凄すぎて1時間ちょっとの短編なのに見終わった後立つのもやっとだった。

・ベスト3
エターナルズ(Eternals)

決して手放しで誉められる作品ではないし、疑問に思うところや納得できないところもたくさんある。そもそも自分はマーベルが大嫌いだ。でもそれを差し置いてもクロエ・ジャオの志ざしの高さに脱帽させられたし、この理想化された多様性と、全身タイツの超人に地肉を通わせて人として描いた誠実さを素直に評価したい。マーベル(ディズニー)の薄っぺらな多様性、ポリコレが本当に嫌いなんだけど、彼らの影響力が故に彼らにしか動かせないスケールがあって、そこに見本を示したこの映画の功績はとても大きいし、これまでにない深度で超人の人としての不完全さを描いたスーパーヒーロー映画としても素晴らしかったと思う。マーベルであることが足枷であり、マーベルであることで輝くとても歪な傑作。

・ベスト2
マリグナント (Malignant)

僕はホラーが大好きなんです。なんだけど最近はなんか妙にマジメで余裕のないホラーが増えてきてる実感があり、今年だと新キャンディマンとかハロウィンキルズとか、批判しづらいつまらなさを持ったホラーが多く、世情もあるからとは思いつつなんだかなーとちょっともやもやしてたところに、この素手で殴りかかってくるようなどストレートなホラーが突如現れた時の感動は今でも忘れない。今年ダントツでテンション上がったオープニングの流れを始め、いちいちパワフルな描写や音楽、アホみたいに楽しい展開とジェームズ・ワンの才能迸りまくりで満足度がヤバい。初めてのドライオーガズムを劇場で体験することになろうとは想像もしなかった。

・ベスト1
Titane(原題)

人食青春ホラー「RAW」が日本でも話題になった、フランスが誇る変態監督ジュリア・デュクルノーのパルムドールを獲った最新作。まがりなりにも普通の人が引く程度はたくさん映画を観てる自分にとってもかなり衝撃的だった、狂気の変態ボディ・ホラー家族ドラマ。ジェンダー、フェミニズム、トキシック・マスキュリニティ、異常性愛、妊娠や出産なんかをテーマにしつつも、そのどれもを軽々と飛び越えてしまうエンタメ性と暴力性、あからさまな過去のホラーへの類似性(クローネンバーグのクラッシュとか)を見せつつも紛れもなく唯一無二のオリジナリティなどなど、色々と超越してしまってる大怪作。あまりにも変態で衝撃的で、初回見に行った時はラストで笑いと涙が同時に出てきて頭が壊れそうだった。フランスのマリア様は車で処女懐胎し、キリストは鉄男としてオイルにまみれた神の腕に抱かれるのだった。




以上、今年観た映画ベスト10でした。
まだ日本で公開されてないものもいくつかあるけど、公開された際にはぜひ自己責任で見に行ってみてください。

今年は割とコンパクトにまとめられた気がする。よし。
時間があれば明日にでもワースト映画の方をまとめたいと思います。あっちは悪口言うだけだからすぐ書けるはず。

最後に、ベスト10入りはしなかったけど結構好きだった、楽しめた映画を以下に羅列しておきます。
では良いお年を。






2021年に観た映画ワースト5 (1/5追記)

ちょっと今年はそこまでめちゃくちゃ批判したい!って作品がなかったので、本記事のおまけとして以下にすごく嫌いだった映画たちをまとめておき
ます。レビューはリンクからどうぞ。


・ワースト5 
未来のミライ


・ワースト4
デモニック


・ワースト3
アーミー・オブ・ザ・デッド


・ワースト2
リコリス・ピザ


・ワースト1
勝手にふるえてろ


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