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生きる力

NHK制作の「ヒグマを叱る男」を見た。

大瀬初三郎さん(84歳)は知床の番屋でサケやマスをとる漁師。知床は世界有数の野生のヒグマの密集地。
そんな中、大瀬さんはヒグマを叱り、番屋を守ってきた。

ドキュメンタリーの中での印象深いシーンのひとつにこんな場面がある。
エサ不足により日に日にやせ細っていくヒグマたち。中には、栄養不足により命を落とすヒグマの姿もあった。そんな中、決してエサは与えないと決めている大瀬さんが、海岸沿いに流れ着いたイルカの死骸を流されないようロープで巻きつけ、固定した。その結果、ヒグマはなんとか命を繋ぎとめることができた。ヒグマと隣り合わせに30年過ごした大瀬さんとヒグマとの絆と共存のルールに感慨深いものを感じた。

ヒグマの悲惨な光景を目にしても、決して自らエサを与えるような手助けすることはしない。それは、そもそも自然界では自ら生きる力を持たなければ生きていけないという厳しさがあるからだ。
一時的な情けは双方にとって悲劇をもたらす結果になる。

痩せたクマ

とある会社の社長の記事を見て、人間界でも同じことが言えるのだと感じた。その記事の内容には、会社は糧を稼ぐためのコミュニティであり、給与は「有益性」への対価であると書かれていた。 

生み出した有益性以上に給与をもらっていた社員はいわば「借金」をしているのと同じであると。景気がずっとよく、終身雇用制が続くのであればそれで問題ない。しかし、自然災害や金融危機、そして今、世界中で大きな影響を与えている新型コロナウイルスのように、10年に1度は景気後退局面は訪れている。
一方、常日頃から「借金」をせずに、むしろ「貯金」をしながら働いていた人はこういう危機的な状況になっても慌てていない。

危機的な状況下ではより「本質」が問われるようになる。
今回の新型コロナウイルの影響が収まっても、今後、また違う危機が訪れる可能性は高い。

だからこそ、会社が社員にしてあげれることは何なのか?
一定の給与を与え続けるだけが、会社の役目ではない。
その給与に見合った、有益性を生み出せる力を身につけれるよう、時には厳しさも突き付けなくてはならない。そもそも、社会とは無慈悲で無機質なものである。生きていく力がない会社は、たとえどんな事情があろうと国や地域に配慮されることなく潰れていく。自然界同様、厳しい社会の中で生きていくためには、優しさだけではなく厳しさという愛情も必要になる。

ドキュメンタリー終盤、ルシャ川にサケが戻った。
それを食べるヒグマの姿をあたたかく見守る大瀬さんの表情が素敵に見えた。




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