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話そう、私と絵のハナシ|絵を描くことで思考する #02

裕美師匠との初回レッスンは、プレレッスンのような位置付けだった。今後、じっさいに絵を描いていくにあたって、私がレッスンに求めていることを裕美師匠が時間をかけて引き出してくれるのだ。

その際、「何を習いたいですか?」といった安直な問いは少ない。どちらかといえば、「絵をとおした個人の人生経験」を問うては、前のめりの興味津々で聴いてくれるといった趣で、さながらカウンセリングのセッションだ。

でも、これが、とっても楽しかった。裕美師匠は、もともと鷹揚な人柄で、好奇心旺盛だから、誰にとっても楽しい話し相手である。彼女の投げかけてくれるちょっとした問いで、私が深く掘られ、思わぬ記憶が引き出される。すると、すっかり忘れていたけれど、私にとってあの場面は意外と大事な何かだったのかもしれないな、なんて思いもするし、私はこんなことを考えているのか、と改めて気付くことも多々あった。「絵を習いたいと感じていた自分とは何なのか?」という哲学の問いが、言語化されて満ち足りる。これだけで、もうじゅうぶん、レッスンを受けた甲斐があったというものだ。まだ何も描いてへんけどな。

※ せっかくなので、プレレッスンの前に答えたアンケートを公開しておきたい。裕美師匠も、公開してくれたらな、と言っていたしね。


◎事前アンケート◎
・実際お話しする時に詳しく伺えればと思うので、箇条書きで大丈夫です。
・思い浮かばないものはスキップして構いません!

今回、絵を習おうと思ったきっかけや理由を教えて下さい。

◉ 長いこと習いたい気持ちがあったし、初歩からちゃんとした技術を学んでみたかった。
◉ 仕事と離れたこと(つまり読書とかでなない)で集中できる作業をしたいと思ったから。
◉ 手を動かすということがしたかった。
◉ 世界を見るときの視点が変わる予感があるから。

★以前に、絵画を習ったことがありますか?
     - はい     - いいえ

◉ はい

→ いつ頃、どのくらいの期間ですか?

◉ 3歳(1980年)から12歳まで=近所の子ども向け絵画教室
◉ 13歳から15歳まで=中学校の美術部

→その時に印象的だったことなどがあれば教えて下さい。

◉ 絵を描いていた時間よりも、近所に友達ができたことが楽しかったのを覚えてる。地元の小学校に通っていなかったので、近所の友達がいなかったから。

◉ でも、描きかけの作品を持ち帰っては家でずっと絵を描いていたから、楽しかったのかも。そのときの感情は覚えてないけど、「絵を描いていた」というシーンとして記憶に残ってる。

◉ クレパス→水彩やパステルと進化していって、油彩の道具を買ってもらったときには大人の階段を上った気がした。でも、あまり油彩は自分になじまなくて、うまく使いこなせなかったように思う。水彩やパステルみたいに「溶ける、混ざる」はわかる。「(色を)重ねる」は意味不明、みたいな。

◉ 今じゃ考えられないけど当時はそれなりに繊細だったのか、プレッシャーがかかったときに、使う色が緑と紫だけになった時期があって、先生が心配して、病院に行って、しばらく絵の教室を休むことになった。いま思えば思春期でしたね、あれは。いっかいしばらく休んだことで、せっかくできた友達とも価値観の距離を感じるようになったというか。それで、ちょっと教室からは離れた。

◉ 中学の部活のときは、真面目な部員じゃなかったのだけど、鉛筆で描くのにはまって、なんでも鉛筆で描いてた記憶がある。目の前のものが再現されるのがおもしろくて、表現するというよりは模写するのがおもしろかったんだと思う。

★学校での図工・美術の時間で印象的だったものや人、体験などあれば教えて下さい。

◉ なぜか記憶にあるのは、小学校3年生になり、普段の教室ではなくて、美術室を使うようになった1発目の授業。校庭で集めた土を糊付けして、その上に絵を描くという授業で「飛鳥美人」を描いた。土に描くなんて、絵画教室ではやったことなかったし、土に描くだけで、それっぽくなったのが楽しかったんじゃないのかな。

◉ 授業ではないんだけど、みんなのあいだでなんとなく「絵(模写)がうまいひと」ってイメージがあったみたいで、学校行事とかでビジュアルに関する仕事が発生すると、何かとみんなが「助けてー」って言ってきたことも覚えてる。文化祭の舞台衣装のデザインとかね。でも私、家庭科的なもの、特に裁縫が画期的にダメで、手先の器用さにも向き不向きがあるやんなあ……と思ったのを覚えてる。

★好きな画家や作品があれば教えて下さい。

◉ ウォーホル「サム」シリーズ
◉ ルソーの熱帯舞台のやつ
◉ 速水御舟の植物

★これまでに印象に残っている美術鑑賞体験はありますか?(好き、感動、面白い、驚き、意味が分からない、苦手、その他なんでも!)

◉ 最近名古屋城で見た本丸御殿の襖絵は、ほんとおもしろかった! 空間に置かれること前提で描いてるからオブジェ感があるのと、御殿だけに「こうあったほうが、殿様的にもよいのでは?」みたいな絵師の妄想で「煌びやかさ」とか「高貴さ」を演出しているきらいがあって、その過剰さがよかった。虎とかさ、もう豹になってしもてるやん! みたいな。

よくわからない南国の鳥とかも過剰でとてもよかったです。その過剰さで描かれた鶏とかも案外よくて、実物の鶏のことまで、前よりちょっと好きになった。

◉ で、みんなが良いと言う岡本太郎ね。私はいつ観に行っても疲れるだけで、元気すぎて本当にしんどい・笑。なんだけど、先日、奈良で盧舎那仏を見た翌日に太陽の塔を見る機会があって、あ、こういうことか! とも思った。盧舎那仏もとりあえず、デカすぎるやんか? 奈良時代にこんな頑張ってあんなでかいものつくることあったんかな? 正気の沙汰じゃないな? と思うわけだけど、太陽の塔もマインド一緒やな、と。何かこう、有り余ってるねんな。エネルギーというか、生てる感じというか、何かわからない何かが。

◉ 最近は、屏風絵とか絵巻とかすごい楽しい。細かく描き込んであるやつは、シーンそのものもおもしろいけど、これどんな気持ちで描いたんかな?と想像すると、ニヤニヤしながらいくらでも見ていられる。

★どんな作品を描いてみたいですか?

◉ 植物とか鳥とか描きたい! そこにプラス人、みたいなの。

★使ってみたい画材や技法などがあれば教えて下さい。

◉ 日本画の画材は試してみたい。

★絵画レッスンを通じて、知りたいこと・実現してみたいことなどがあれば教えてください。

◉ きっぱり絵を描かなくなって三十年経ってるから、せめて昔くらいの画力(ちょちょっと、手元のノートに描けるくらいの)は取り戻せたらいいし、テクニカルなことは習ったことがないから、そういう基礎力みたいなのも最初からちゃんと身につけたい。

◉ 何かものを見たときに、ニヤニヤできるくらいの妄想力(創造性?)を身につけられたらと思う。人生が楽しくなるしね。

---以下は、よかったら聞かせて下さい!---

☆絵画/美術以外には、どんなジャンルのものごとに興味がありますか?

◉ 本
◉ 動植物の観察

☆最近おもしろかったことや、楽しかったこと、印象的だった出来事があれば教えて下さい。

◉ お伊勢参り。持ち上げられすぎやろ、お伊勢さん! となって、そういう経験が全部よかった。たぶん昔のひとも「一生にいちどのお伊勢参り」くらいのもったいない気持ちで出かけて行って、あまりに何もないから、特に霊験あらたかさのカケラもない、私みたいな人間は、殊更に良かったように言うしかない、みたいなところがあって、その積み重ねでお伊勢さんめっちゃすごいみたいになってるんやろな、と想像したらすごいよかった。楽しい旅だった。

☆好きな食べ物はなんですか?

◉ 道頓堀今井の木葉丼
◉ ラム肉

☻ありがとうございました☻


さて、次回こそ、いよいよ絵を描くことになるのか、私。

人が冷静な状態で造るするには、でかすぎると思うんですよ。盧舎那仏も太陽の塔も

文・写真:編集Lily




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