"長編小説 『じゃんだらりんの国から』 第10話 「皆子と昌俊の将来の夢」"

昭和11年5月25日 天気 快晴

いよいよ待ちに待った石巻山の遠足の日がやってきた。

仲良しグループを作って、一緒に弁当を食べることに当初は不安を抱いていた皆子であったが、昌俊のおかげで、当日は一緒に行動し、弁当も一緒に食べることになった。

先生について行って、山登りをする子どもたちであったが、山の傾斜は子どもたちにとって些か急であったもので、途中でくたびれてしまう子も出て来たが、山登りの最中に虫かごに虫を入れてはしゃぐ子どもたちの健気な姿も見受けられた。

「皆子、カブトムシのオスを捕まえたぞ!皆子、カブトムシ好きだから、あげるよ。」

と、普段は寡黙でおとなしい昌俊が得意げになって皆子に話かけると

「嬉しい!ありがとう、昌俊君。」

と、皆子が嬉しそうに返した。

小学2年生の山登りであったので、山の頂上まで目指すことはせず、見晴らしのいい中腹あたりでいったん持参の弁当を広げて、みな昼食タイムに入った。

弁当の時間になると、先程昌俊が捕まえてくれたカブトムシを見ながら皆子は楽しげに昼食タイムを満喫した。

「僕は将来、いっぱい勉強して、人を幸せにできる科学者になりたいんだ。皆子の将来の夢は?」

と、昌俊が皆子に質問を投げかけると

「わたしは市役所で公務員として総務課で働いて、困っている人たちの役に立てるようになりたいわ!」

とあまりにも小学生が言いそうもない職業名が出て来て、それが少し滑稽であったのか、昌俊は苦笑いをした。しかし、皆子の夢を貶すことなく、

「それはすごい夢だね。皆子ならきっとなれるよ。」と、応援していた。

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