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20作品目 読書「芸人人語」(太田光)

どうも自家焙煎珈琲パイデイアです。
淹れながら思い出したエンタメ20作品目は爆笑問題の太田さんの「芸人人語」です。

ついこの間、3冊目となる太田さんのコラム本「芸人人語 旧統一教会・ジャニーズ・『ピカソ芸』大ひんしゅく編」が発売された。
最新刊の発売を前に、過去2作、「芸人人語」「芸人人語 コロナ禍・ウクライナ・選挙特番大ひんしゅく編」を読み返してみました。
読み返したと言っても、この本を頭から終わりまで読み通したことはありません。いつも枕元に置いて、寝る前に眠くなる前にペラペラと適当なページを読んでみるのです。
もっとも同じ用途で枕元に用意してある本に、菊地成孔さんの「粋な夜電波」のラジオ本が4冊もあるので、太田さんの文章を睡眠導入にすることは、6分の2、約分して3分の1だ。

太田光、という人はどこまでも優しい。そして、心底笑いを愛している。

どのページをめくってもそれしか書いていない。
もちろん、その時その時で、話題になっていた時事問題に触れているのだが、結局、最後は太田さんの優しさ、と笑いに対する片想い(何も私がそう思うのではない、太田さんの書き方からそんなような印象を受けるのだ)で文章は閉じられている。

取り上げた話題が、世間でどんなに批判されていても決して見捨てることはない。
一時、問題になった「バカッター」に対しても、

本来自分達(爆笑問題自身)は社会からドロップアウトした人間であって、社会のルールや道徳などをバカにして、喜んでいればそれですんだ。 今で言う「バッカター」と同じ。私はそれのなれの果てだと思っている。

朝日新聞出版「芸人人語」(太田光)p19

などと、決して突き放さない。
それどころか、こんな長い間、日本の漫才を牽引してきた自分達と同じ境遇だと重ねている。
どのページを開いても太田さんの優しさが、きっとちょっと照れ臭いのでろう、他の文章よりもぶっきらぼうに描かれている。

太田さんは「失敗」こそが笑いの種だと言う。
そんなことを読むたびに、私は、あ、やっぱりこの人は立川談志のイズムを引いているのだな、と思った。
談志もことあるごとに落語を「人間の業の肯定」と言っていた。

そんな太田さんだから、世間で厳しいバッシングにさらされている人を取り上げても、決して叩かない。
それどころか、叩いている人間に、笑いにはこういう失敗が含まれるんじゃないの?と問いかける。そして、それは決まって、人間はそんな清潔な生き物じゃないんじゃないの?、と失敗してしまった人間の弱さを叩いている人間、もちろん、この文章を読んでいる私の中にも潜んでいることを指摘する。

きっと、それを読めば、「太田は何言ってんるんだ、人間だからってそんなことをするわけないだろ」と反発したくなる人も、特に叩いている人ほど、いるかもしれない。
それだよ、その反発こそが何よりも太田さんが言いたい弱さじゃないか、あなたが反発するということが、もうすでにあなたが弱いって、つまり、あなたがバッシングしているような失敗をあなたも犯すかもしれない、ってことなんじゃないの?、なんて私なんかは思ってしまう。

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