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18作品目 4月クールドラマ

どうも自家焙煎珈琲パイデイアです。「淹れながら思い出したエンタメ」18作品目でございます。

4月クールのドラマも一通り出揃いました。
ドラマウォチャーの繁忙期は前のクールの終盤から始まります。各局から次のクールの発表があり、番宣が始まると、プロデューサー、脚本家、演出・監督、主演をチェックします。
ドラマは始まる前から始まっています。
さて、一幕が終わりを迎えかけている4月クールのドラマ、個人的な感想を私のために書き留めておきます。

「イップス」(フジテレビ)
バカリズム×篠原涼子が演じる「書けなくなったミステリー作家と解けなくなったエリート刑事」というちぐはぐなバディの倒敘ミステリー。
つまり、古くは「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」、たまに「相棒」でもみられるパターンです。
脚本は先のクールで放送された「隣のナースエイド」でも脚本を務めたオークラさんです。

関係ありませんが、爆笑問題の太田さんは「古畑任三郎」の脚本家の三谷幸喜さんに対して「コロンボのパクリじゃねぇか」と度々言っています。
そして、今回は「イップス」に関して、オークラさんと親交のあるバナナマンの設楽さんがオークラさんに対して「古畑のパクリだ」と言っているのをラジオで聞いて、同じ流れが一つ下の世代に踏襲されているのに感動しました。

このドラマ、キャラクターと役者のイメージがぴったりです。
制作初期の段階にキャスティングがバカリズムさんに決まって、書きやすかったとオークラさんもインタビューで答えています。シアターD時代からの付き合いという、お互いをよく知っている関係性が伺えます。

ミステリーとしての穴はありますが、このドラマのメインはそこじゃありません。トリックや殺人動機が中途半端な気もしますが、別にいいのです。
とにかくキャラクターの造形がいかにもフジテレビっぽくていいです。ところどころ入り込むコントのようなシーンがオークラさんの真骨頂。「隣のナースエイド」でも素晴らしいバランスでコントシーンを仕立てていた矢本悠馬さんが今作にも登場しています。オークラ脚本の常連になりつつあります。

毎話ゲスト犯人、というパッケージも古畑そのもの。その犯人も一癖あるキャラクターで主演のバディといいバランスです。

キャラクターの造形に癖があることが指摘されて批判されるドラマがあります。
しかし、こういったドラマは、本当にクセのある登場人物が批判の対象なのでしょうか。私は登場人物のクセを指摘することは的を射てはいないのではないかと、思っています。つまり、ドラマに登場する人物のバランスが崩れていることを指摘するべきで、クセがあること自体は批判の対象にはなり得ないと思うのです。
そういう意味で「イップス」は篠原涼子さんのキャラクター造形に多少の無理を感じても、バカリズムさんの演じるキャラのクセの強さ、ゲスト役者さん達の「流石にいないだろ」という造形とのバランスが非常にうまく取れていると思います。

「Destiny」(テレ朝)
石原さとみさんの復帰作として話題になっています。
脚本は「その女、ジルバ」が素晴らしかった吉田紀子さん、プロデューサーは「スイッチ」(坂元裕二脚本)「11人もいる」(宮藤官九郎)で知られる中川慎子さんです。
登場人物が抱える過去が、話が進むにつれ少しづつ学生時代の交通事故に向かって絡んでいくプロット、それから父親同士の因縁がロミジュリのパターンで展開しているプロットと、二つのプロットが交錯していますが、非常に丁寧に整理されている印象です。

過去を背負う登場人物というのがいつも暗く描かれるのはどうしてなんでしょうか。
過去を背負っているというのは、その人物の一側面でしかないはずで、それ以外にもいろんな側面があるのに、他の場面が浮かび上がってこないと、どうもその人物が立体的に見えてこない。

そういうわけで、全体的に重い空気ですが、そこのバランスをめちゃくちゃうまく取っているのが、矢本悠馬さんです。
今クール2作目。矢本さんが画面に入り込むだけで、空気感が変わって、ちょっとした安心感まで生まれてきます。本当に素晴らしい役者さんです。

「花咲舞が黙ってない」(日テレ)
もう2014年というから、ちょうど最初の作品が放送されて10年だというのです。あの時の杏さん上川隆さんコンビも良かったですが、今回の今田美桜さん山本耕史さんコンビもすごくいいです。
脚本は松田裕子さん、演出は南雲聖一さんと、共に10年前と同じコンビということで、間違いないはずです。
「ごくせん」「東京タラレバ娘」とその時代の等身大の女性像を見事に書き上げ、視聴者に共感をもたらしてきた松田さん、ヒロインの花咲舞が古い銀行の体質に「お言葉返すようですが」と切り込んでいく爽快さを楽しみにする一方で、その銀行の体質に諦め、飲み込まれた女性役員菊地凛子さん演じる昇仙峡玲子(山梨出身なの?)をどうやって書いていくのかも少し気になります。
花咲舞を正義にしすぎるあまり、昇仙峡玲子が悪になりすぎるのは、構図として安直すぎてしまいます。

関係ないところですが、前作まではドランクドラゴンの塚地さんが演じていた芝崎次長を今作ではずんの飯尾さんが演じていて、このキャスティングには感激しました。
芸人俳優の中でも、カテゴリーとしては別枠の二人だと思うのですが、どちらも芝崎次長にはまり役です。

「95」(テレ東)
まず、作品の内容よりも映像として1995年の空気感が画面越しにものすごく伝わってくる。監督は誰だ、と思ったら、城定秀夫さんでした。どうりで。
映画「アルプススタンドのはしの方」でも、野球応援に乗り気でない高校生達が白熱する応援の輪に馴染めずに隅で作り上げる自分たちの空間が、既視感のある感覚を思い出させるいい映画でした。

チーマとの喧嘩、オウム真理教による地下鉄サリン事件、など物騒な時代を背景にしていることもあり、ストーリーは騒がしいのですが、映像としては非常に落ち着いて、ストーリーと映像のコントラストが、当時の高校生たちの退廃的な雰囲気をすごくうまく演出しています。

現代の安田顕さんが桜井ユキさんに95年当時を語る構図でありながら、現代の二人の関係にも歪みが出てくる重ね方で、物語に奥行きを感じます。

ダサいことはしない、といいながら時代に争おうとする彼ら自体がもはやダサくなっている現代にとって、セピア色でありながら、しかし、今よりも鮮烈な色彩を持ったようなドラマに見えて、いつの間にかドラマにのめり込みます。
94年に生まれた私が全く知らない日本、という新鮮味がそう魅せるのでしょうか。

というわけで、今回の書き留めは4月クールのドラマでした。
本当は「アンメット」や「Re:リベンジ」もとても面白いのですが、ちょっと書ききれませんでした。

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