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金沢小風景

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金沢ハ美シイダケニ非ズ。不思議ナ街デアル。
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#小文

金沢忍法帖4

「そこの人」

と言われ男はビクリとした。自分の忍びの技術は完璧だと思っていたので、いとも簡単に見抜くとはなかなかやる。流石、金沢市の職員だ。恐らく忍びの技術を見抜く訓練を積んでいるに違いない。ここはひとまず退くか?どうする?

「あなた、出土品を預かりにきた人ですよね。何やっているんですか。早くプレハブに来てください」

「あ、はい」

男はすごすごとプレハブに向かう。プレハブの明るさに一瞬目が

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文化財係橋本正太郎の憂鬱 金沢忍法帖3

金沢市文化課文化財係橋本正太郎はいらついていた。何故自分が休みであるはずの土曜日にこうして発掘現場の休憩プレハブにいなければならないのか。昨日の夜、急に上司から

「橋本君、明日の夕方なんだけど時間あるかな」

「い、いやぁ明日はちょっと大学の同期と飲みに…」

「あ、そう。じゃあ、飲み会前に頼まれ事をしてくれないかな」

上司の頼まれ事なんて大抵ろくでもないことだとわかっていた。しかし、下っ端の

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金沢忍法帖2

男は片町までバスで向かった。忍者は格好よく屋根の上を軽やかに飛び移り移動するなんてのは漫画での話で本物の忍者は市民に紛れ込み任務を遂行するのだ。

…というのは建前で、男は隠密部隊の中でヘマばかりするいわゆる窓際族だった。ガマガエルもオオダヌキも出せない。では何故、これほど重要な任務を男に依頼したのか。実は現在、加賀重臣会議が行われており、他の忍びは警備に忙しく手が回らないのだ。

「次は片町」

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金沢忍法帖

今宵は新月。忍者寺として知られる金沢市の妙立寺。そこに忍者の格好をした男が一人準備運動をしていた。彼の格好は冗談ではない。彼は本当の忍者なのだ。ただしかし、この格好で昼間にウロウロしていたら市民から白い目で見られるだろう。

男には任務があった。頭領より建設前の金沢21世紀美術館の敷地にある発掘現場で見つかった妖刀を回収しなければならない。今度作られる金沢21世紀美術館の地下は元々金沢城の武器庫だ

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菊花の幻想

9月9日のことである。だいぶ涼しくなってきたので、浅野川をぼんやり眺めに行った。秋色に染まる浅野川はことのほか美しく、やがて来る厳しい冬の前の輝きといった感じだった。ひがし茶屋街にはまだ観光客が多い時間帯だったので、しばらく主計町界隈を散策することにした。

この辺もひがし茶屋街に負けず劣らず風情がある街並みを見ることができる。歩いていると暗がり坂というその名の通り薄暗い石段がある。普段は気味が悪

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大野陽太の証言

茂庭草介は雨の中永安町のバス待合所で大野陽太がやってくるのを待っていた。雨は最初小雨程度だったが、しばらくすると少しずつ雨足が強くなりあっという間に大雨になった。金沢駅行きのバスが一台、また一台とやってきては通り過ぎて行った。人もやってきてはバスに乗り、茂庭草介はそれを漠然と眺めていた。丸澤圭一郎からは大野陽太の特徴を聞いているのでその人物が来るまで辛抱強く待つ以外はなかった。

4本目のバスがや

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金城月夜の証言

東山の茶屋街から少し離れた所に豪邸が1軒ある。豪邸には離れがあり、そこには占いで有名な金城月夜という女性が住んでいる。

茂庭草介がその離れを訪ねると金城月夜はあきらかに嫌な顔をした。何しに来たのか聞かれたのでコレコレこういうことでして…と説明すると

「私、今、忙しいのですよ。下半期の占いをしなければいけないのです」

「はぁ…それでは1つだけお聞きしたいのですが」

「何でしょう」

「何故、

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市民生活課 丸澤圭一郎の証言

丸澤圭一郎はあの悪夢の5月のことを茂庭草介から尋ねられて明らかに嫌な顔をした。「話たくない」ときっぱり断りお昼を食べに行こうとすると茂庭草介が泣きそうになりながら

「頼むよぉ。俺だってこんなわけわかんない仕事やりたくないんだよぉ。丸澤君もわかるだろ?」

と懇願するので、丸澤圭一郎はなんだかかわいそうになり、話すことにした。嫌だけど。

「そもそもなんで俺がこの案件を担当しなけりゃならなかったの

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茂庭草介の始末書

「たらい回し」とは大きな組織のお家芸とも言える。そのたらい回しが巡り巡ってどういうわけか環境課の茂庭草介の頭にぶつかった。

ある雨の朝、茂庭は課長に呼び出され、5月某日どこに行っていたか聞かれた。「えーっと、その日は兼六園周辺の清掃作業をしてました…けど」茂庭が答えると課長が残念そうな顔をした。茂庭はわけがわからなかった。課長は茂庭の方をバンバンと叩き一緒に来るよう促した。

地下1階の普段使わ

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上半期加賀重臣会議会議録

この度の天気の不始末は誰に責任があるのか。

6月最期の金曜日、旧加賀藩の部署が集まり上半期の金沢の情勢について会議がホテル日航金沢の最上階で行われた。上半期、何と言っても事件だったのが5月の天気が荒れたことである。古くからの金沢市民はこの手のことに慣れっこであるため「また変なことが起きた」程度で見て見ぬふりをする。しかし、よそ者はそうではない。国際化が進み新幹線も開通しSNS等の情報化が進んだ昨

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雨が止んだ

風が強くなった。風は春と夏が入り混じった心地よい風だった。金城月夜は鼻歌を口ずみながら石をぺチぺチと叩いて

「はい。2人で押してみてください」

「え、えぇ…これだけ?」

丸澤圭一郎は疑り深い目で金城月夜を見た。金城月夜はさっさとやってよと言わんばかりに手をしっしと振った。大野陽太と丸澤圭一郎は力を入れて石を押した。すると、あら不思議!石はするすると動き出した。そして、空洞にピタリとはまった。

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本日は天気晴朗なり7

暗澹とは将来の見通しが暗く、何の希望ももてず悲観的なさま。 のことである。動かぬ石を前にして丸澤圭一郎は暗澹たる思いだった。彼は石に腰掛け頭をかきむしりながら一体、いつになったらこの問題は解決して自分はワインを飲むことができるのだろうと考えた。来週には「百万石まつり」である。仕事はまた忙しくなるだろう。いっそバックレようかとも考えた。大野陽太こと救世主から電話がかかって来たのはそんな時だった。

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本日は天気雷雨のち風強し4

市の職員に石の場所を伝え終え、電話を切ると私を拉致した男は「御苦労だったな」と労い、永安町まで送ると言った。私は少しイラッとしたが、もう関わり合いたくなかった。男の提案を断り、近江町市場で安い豚コマでも買って帰ろうとぼんやり考えていた。

「おぉーい大野君。本当に私、行かなくてもいいんですか?」

離れの引き戸が開き、月夜さんが手を振った。

「大丈夫です。もう解決しましたから」

「たぶん、たぶ

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本日は天気晴朗なり6

石と意志はなかなか動かないものである。筆者はもし、生まれ変わったらというお決まりの質問には「人になんかなりたくない。石にでもなりたい」と答えるようにしている。意味はない。人の世界より疲れないと思うからだ。

丸澤圭一郎は一抱え程の石を動かすのに全力を出しているのにも関わらず全く動かすことができなかった。

「なんで…どうして…く、くそぉ」

石はびくともしない。丸澤圭一郎は自分の非力に情けなさでい

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