読書感想文(65)森絵都『永遠の出口』

はじめに

書店でふとこの本を見かけて、懐かしくなりました。私がこの本を始めて読んだのは小学生の頃、学校の図書室で借りた単行本でした。それと同じ表紙を見て、思わず買ってしまいました。もう10年経つので、内容はほとんど覚えていません。どんな風に読めるのか、わくわくしながら読み始めました。

感想

内容はほとんど覚えていませんでしたが、やっぱり読み進めているうちに「あー覚えてる!」って場面が結構ありました。特に序盤をよく覚えていたのは当時小学生だったからでしょうか。今回は終盤までしっかり印象に残ったので、ちょっとは成長したのかなぁと思います。ただ私はグレた経験が無いので、そこだけはちょっと共感はしづらかったです。でもこう、大人に反抗して対等になったつもりなのに結局全然子どもだったりとか、そういうのはあったなぁとやっぱり懐かしくなりました。

この作品で一番思ったのはまず、人間は完璧じゃないし完璧じゃなくて良いってことです。本当に、登場人物みんなダメなところがあります。でも現実もそんなもんだと思います。それでもなんだかんだ上手くやっていくことになるのが人生だなぁ、とかなんとか言うと安っぽくなるなぁ。

もう一つは人生色々あるよなぁということです。形は違えど、自分も小学生の頃人間関係に悩んだり、中学生の頃人間関係に悩んだり、高校生の頃人間関係に悩んだりしたなぁと思います。いや、人間関係以外にも進路のこととか、今まさにどうなるかって感じのところだし、なんかでっかいことやりてえっていうのもよくわかります。人生はその時々で色々あるけど、なるようになっていくのだなぁと思います。

一番印象に残ったのは第二章「黒い魔法とコッペパン」です。というのも、私は小学生の頃とても嫌いだったのです。これを読んだのは何年生の時だったか忘れましたが、大人への反抗心の芽がこんなところにも……と思ったり。都合の良いように言い分を変える教師が本当に嫌いで、ほんと、みんな先生に洗脳されてるよってずっと思っていました。その展開を見事にひっくり返したトリはすごい、なんていうか、どうすればひっくり返るかをちゃんとわかってやってるのがすごいです。目的のためにどうするか、という思考ができているなぁとか考えてしまうのが就活脳です。

それ他の章も全部面白かったです。それぞれで思うところは色々あって、でもまとめると先に挙げた二つ、「人間完璧じゃない」と「人生色々ある」になるのかなぁと思います。エピローグはまさに後者を象徴しています。

この本も子どもに読んでほしいなと思いました。自分が小学生の頃に読んだ時はちょっとだけ難しく感じたような気もしますが、中学生になってからでもいいから是非読んでほしいです。でもいじめの話とかは早めに知って置いてほしいし、やっぱり小学生に読んでほしいような……。あ、でもできればグレないでほしいです。私は子どもがグレた時の対処が苦手なような気がします。

おわりに

森絵都の作品を二連続で読んでみて、もっと読みたいなと思いました。なんていうか、ストーリーとしては決して劇的じゃなくて、ありきたりといえば言い方が悪いけれど、これまでの人生が懐かしくなるような日常的な(でも当人にとっては一大事な)お話だったなぁと思います。

今日書店に寄った時に本を探してみたのですが、残念ながら見つけられませんでした。またいづれ、他の作品も読んでみたいと思います。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?