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アメリカ縦断ぼっち旅 9日目 線路は続くよ ポートランド→ユージーン→そして


朝起きてすぐ、amtrak でシャスタ方面へ向かうことに決めた。

1日1本だけシアトルからLAを走る、寝台列車のCoast Starlightだけがシャスタ方面を走るのか。
寝台列車なんて楽しいに決まってる。
でも、

ダンスミュア(dunsmuir)がシャスタ山の最寄駅。
そこに到着するのは真夜中の0時35分。
寝台を楽しむには中途半端。
というか、夜中に到着?
えー…治安どうなのよ、ダンスミュア…。

その手前のクラマスフォールズ(Klamath falls)駅だと21時30くらいに着くのか。まだまし。
でも、そこからシャスタへ行くには、また同じ寝台に乗らなくてはいけないし、結局一緒。

しかもクラマスフォールズ〜シャスタ辺りって宿が少ないし、安くない。

ネットをうろついていたら、民泊サイトを見つけた。airbnb、アプリをダウンロードして宿を探す。
ブッキングドットコムで出てくる一般の宿泊施設より安く、アットホームな感じっぽい。
シャスタ周辺は結構高くて、一泊2万円とかばっかりだから、一万円を切る民泊はとてもありがたい。
口コミにも、何人か日本人が投稿している。

クラマスフォールズはと…駅近くの宿が無いなぁ。
外れの湖の方に別荘的な民泊の宿はあるけど、足がない。そして高い。リゾート価格。

ダンスミュアで探して、駅までお迎えを頼んでみたらどうだろう?
送迎オプションはどの宿にも記載が無い。
宿のホストの顔写真がそれぞれ紹介されているので、優しそうな人の宿を選ぶ。
駅まで迎えに来てくれないか、メールをしてみよう。深夜に鉄道で到着して、初めて行く場所で治安が怖いんですぅ。と可愛い感じで送信。

あとは返信が来るのを待って、ダメなら次。


ダラダラとネット検索している間に、
なんと寝台列車の切符が売り切れてしまった!
1日1本しか走ってないのに。

どうしよう…

Amtrakのサイトで他の列車を検索する。
ポートランド〜ダンスミュア間は他に無い。




まてよ、分割したらどうだろうか?


寝台列車の他に、ユージーン(Eugene)という駅まではカスケード(cascade)という特急列車みたいなのが走っている。ポートランド〜ユージーンのカスケードの席は…

ある!

ユージーンからダンスミュアは…

無い。

ユージーンからクラマスフォールズの寝台列車は…

ある!

じゃあ、クラマスフォールズからダンスミュアは…


え??

ある?!


なんか知らんけど、ダンスミュアまで行けるぞ。
すぐ3枚の切符をスマホで予約。
割高になるけど、行けるならOK。


すぐに、ポートランドのユニオンステーションへ。
2時間40分程でユージーン駅に着いた。
ちょうど、民泊サイトのホストからメールが来た。

なんと!部屋も空いてるし、送迎もしてくれるって。
聞いてみるもんだー。
すぐに返信、正式に支払い手続きを済ませ、一安心。

さて、次の乗り換え時間まで少し時間あるし。
ジャンクフードが食べたくなって、思いついたタコベルをググッたら、駅から歩いて15分で行けそうだ。重いリュックを背負って歩き出す。


ユージーンは、新しい街なのかな?
計画的に作られている感じがする。
それがある意味無機質な雰囲気。

歩き出してすぐ。

上裸にタトゥー、ヒゲにスキンヘッドにうさ耳、
黄色いレンズのサングラスのお兄さんが、前を歩いている。
幸せそうに、レインボーカラーのリボンを新体操のようにくるくる回している。
通りがかりの人や車にも、魔法をかけるようにクルクル〜、クルクル〜。
後ろを歩いていた私にも、猛烈アピールしてくる。
時々目が合う。
魔法にかけられたら大変。
妖精さん、見えてないよ、と目を逸らす。

その隣を歩く友達がとても普通に、彼に街を案内してる。それを聞いてうさ耳の彼は「良い街だわ〜」なんて。

ユージーン平和なんだわ。
なんか、安心する。


交差点には、マイルドなヒッピーが座り込んで大きな声でずっと喋っている。
それ以外は、目立って治安が悪そうな感じはしない。

タコベルでお腹いっぱいになった後、おみやげ屋さんやスーパーに寄って食料を少し買う。
もしかしたらこれから行くところは、ど田舎かもしれないしね。鉄道の中で食べる夜食のデリも買っておこう。
スーパーには日本人の大学生が何人もいた。留学で来ているのかもしれない。

さて、ユージーンを出発だ。

駅舎でリュックを置いてトイレに行って戻ると、お婆ちゃんがしげしげとリュックを見ている。

「これあなたのリュック?」
 -そうだよ。
「ずいぶんと大きいのね〜。人が入ってるんじゃないかしら」
 -そうだね、おばあちゃん入ってみる?
「あらやだ、遠慮しとくわ、ふふふ」
旅の行き先などを話しているうちに、寝台列車が来た。

アムトラックの所掌は、基本、皆陽気だ。
川平慈英のような、ご機嫌なアナウンスが車内に響く。
gooooood evening!

駅のホームは改札がない。
駅とホームの間に柵や壁が無いので、誰でもいつでも入れる。プラットフォームがレールと同じ低さ。
本数が少なくて、行き先によってホームを変えないからだろう。
乗車する時は、ステップを車掌さんが出してくれる。行き先によって乗る車両が違う。

カスケードは中距離、特急みたいな感じで、席の作りは日本のグリーン車並みに横も縦も広い。

コーストスターライトは、ダイニング付きの長距離で、各車両は2階に分かれてる。
各車両の乗車口にそれそれ車掌さんがいて、事前にスマホで予約している場合はeチケットを見せて二次元バーコードをスキャンしてもらう。
その時に席を決めてくれるので、言われた席に座ればOK。

コーチという普通席でも、足が完全に伸ばせるくらい前後に余裕がある。
しかも、今回は空いていて隣の席の予約が無い。
席二つ使って余裕で上半身横にできる。

展望席は、叡電のそれみたいに天窓をつけていて、指定席とは違うラウンジスペースみたいなもの。自由スペースだから誰でも好きに座れる。

乗った時は夕暮れが近い時間。



沢山のお客さんがアルコールやつまみを手に、展望車でゆっくりと過ぎ行く景色を楽しんでいる。
そこで初めて会う旅人達が、それぞれの旅の話を楽しそうに語らっている。

空いている席を見つけて座れた。
隣に座ってるおばさんに話しかけてみる。
でも、すこし訛りがあるのと、早口なのでよくわからない。サクラメントに住んでいる子供に会いに行くんだ、と言っていたのは確かだ。


汽車が山岳地帯へと近づいてきた。
山や湖が夕陽に染まる。


隣のおばさんと一緒にスマホで写真を撮ろうとするが、なかなかうまく撮れない。
  
手動で適当にシャッターを連打する。
連写機能じゃなく、高橋名人ばりの早押し。
「これだったら良いのを後で選べていいんじゃね?」
おばさんは訛りのせいか、少しヤンキーっぽい口調に聞こえる。おもろい。



食堂車以外にも、展望席の下の階でスナックを販売してる。ピザやホットドッグなど軽食が 3ドルから8ドルで買える。ドリンクは2ドルくらい。
まぁ、おじさんがチンしてくれるだけなんだけどね。


車内のライトは、間接照明とボタンで消せる読書灯くらい。速度は景色が楽しめる程度の速さ。
いいね。


夜になった。
月が頭上に輝く。

列車は少しずつスピードが上がってきた。
景色を見られないからかな。

指定席に戻る。
私の後ろでノリノリで音楽を聴いていた黒人の若者は、静かになっていた。


オークリッジを抜けて列車はどんどん山の中へ。
なんだか寒くなってきた。
ふと時計で標高をだしてみる。
標高1400m?!
しばらく行ったクラマスフォールズ近辺は1600m??!!
そりゃ寒いよね。
リュックからすぐ出せるレインウェアの上下を着込んで横になる。

多分、車掌さんが降車駅で起こしにきてくれるんだけど、念のためアラームを仕込んで

しばしお休み。





ダンズミュアには予定通りの時間に着いた。
いろんな人に
「アムトラックはしょっちゅう遅延するから気をつけてね」
と言われていたけど、
なんだ、大丈夫じゃないか。

思っていたより寒い。吐く息が白い。
列車を降りると、車が何台か迎えに来ている。

多分、あの人がホストだ。
白髪のおばあさんが手を振ってくれた。

宿までは車で3分もかからない近さだった。
「近いから歩いても問題ないんだけれど、知らないから心配するのも無理ないわね」

着いてみたダンズミュアは、治安という言葉が必要ないくらい、何にもない田舎町だった。

「お向かいさんの犬がすごくうるさいから、静かに家に入って」
と言い終わらないうちに犬が激吠え。
深夜なのに、すみません…

部屋はアメリカの田舎のティーンの部屋、みたいなとても素朴で可愛いアンティーク。風呂トイレ付き。

お礼を言って寝支度を整える。
部屋には暖房が無いな。
9月の半ばでも、薄手のダウンが欲しい気温。
厚着しよ。

とりあえずここで2泊するし、
明日のことは考えずのんびりしよー。
白を基調とした、メルヘンなベッドにダイブする。

すぐに寝落ちしてしまった。




でも寒さで目が覚めた。

慌てて寝袋を引っ張り出して
布団の中に入れ込む。

おやすみなさい。

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