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うさぎの幼稚園バッグ 作品ができる時➀ 1999年4月(作)


誕生秘話


1999年の3月、急に北海道へ引っ越すことになった。
いまならパワハラかもしれないトップダウン、
地元の幼稚園で決まっていた娘は、入園する前に転園することになった。

何が何だかわからないとはこのことで、
それでも気に入った幼稚園がみつかってホッとして、
その他の雑用に追われてすごして、ついに迎えた入園式の前日の夜、
なんだか眠れなくて、夜中に起き出して、書類の山から入園式の案内を探し出し、持ち物を確認したら「ドキッ!!!」

自前の「園バッグ」なるものが必要らしい。
今までどうして気付かなかったのか、指定リュックと上履き入れしか用意していない。

夜だし、知り合いもいないし、八方ふさがりで、時間もないし、
寝ることもできない。

まだ荷ほどきしていない段ボールをごそごそと、ようやく探し出したのが、あまり布とあまり毛糸に裁縫セット。

そこからバッグが作れる布を探した。

本当はたくさん持っているのに、急ぎの引っ越しだったから、重要とは思えないものはマンションに置いてきた。いまさらどんなに悔やんでも後の祭り。

いくら探しても十分な長さの布は「真っ黄色」だけ。
「真っ黄色」のバッグなんか持たせたら、おそらく保護者の目を引く、そしてネガティブな感情を持たれる、それ以外の答えは思い浮かばない。

ではいっそ忘れる?
しかし、もし自分だけ園バッグを持っていないことに娘が気付けば、
きっと傷つく。

しからば端切れを合わせてパッチワークで作る?
ミシンがないので手縫い、手縫いのパッチワークは
どれくらい時間がかかるだろうか?
だいたい経験がない。

切羽詰まるとできる

こうなったら毛糸で作るしかない。鍵編みだ。
編み物は得意だし、「真っ黄色」の布も裏地だったら変じゃないだろう。
裏地があれば形成がしっかりする。

問題は、1999年はまだ、毛糸のバッグというものが一般的ではなかったこと。
周囲の抵抗、そこをクリアするためには、幼稚園児らしい「かわいらしい」作品にしなければならない。

そんな頭で毛糸を見ていたら、細かいループでフワフワした白い毛糸に目が留まる。これもしかするとウサギになるかも。
子供ってウサギが大好きだしと、まずは耳と顔の形を編んでみた。ウサギの目は赤いから赤で目を付ける。

なんとかなりそう。

腕、体、脚足も編んでみる。なかなかイイ。でも裸じゃね。
とはいえ、どんな服を着せるべきかすぐには決められないから、比較的多めにある緑のラメ入り毛糸で、バッグ部分を編み出す。

時間はない。完璧を求めてはいけない。ルールに縛られるときっと完成しない。感性で作る。

そう決めて、直感的に編んでみる。
かぎ編みの長編みはズンズン進む。
毛糸の長さは十分じゃない、色の違う毛糸を入れてストライプ模様にする、
残りを確かめながら慎重に、表と裏を交互に同時進行で編んでいく。

途中で気付く。やはり毛糸が足らない。ストライプ模様に使用した毛糸ももうない。
どうしよう?

他のどの毛糸となら合うかと探してみる。
あやとりとかに使うつもりで持ってきた余り毛糸だ。
量はたっぷりじゃない。安心できないから迷いに迷う。

ひとつだけ、モシャモシャ赤系はたくさんあった。園バッグには向いていないと思ったけど、こうなったらやむを得ない、
下の部分だけなら案外いいかもしれない。
そう思えて、色とテイストを大胆にチェンジしてしまおうと決める。

目を拾って、底へ向かってモシャモシャ赤系を編み始める、
けっこういいかも?
長さが十分になったところで、反対側に綴付ける。

次はウサギ。
顔と体はしっかり縫い付けて、手足はブラブラさせておく。
服はまだ。

かわいさもまだ足らない。
幼稚園らしく可愛くするためにお花のモチーフを並べて付ける。

サイドを「ポンポン」が付いたカラフルな毛糸で綴じる。

持ち手を編む。

「真っ黄色」の布を裏地にして手縫いで付ける。
これでほぼ完成。

そして最後はウサギの服。

時間がないから凝ったものは作れない。
手っ取り早く「真っ黄色」の残りでエプロンを作り、
赤い毛糸で飾ってみたらいい感じ。

ああ、それにしても時間がない。
「かわいい♡」と悦に入る暇もなく、急いで縫い付けた。

24年経っても持ち手を直せばまだまだ使えそう。スカートや手足が動くのが可愛いです。


忘れられないあのとき

あのとき、すでに外は明るくて、お化粧など自分の支度もあるし、アイロンがけやら朝ごはんやらと時間に追われましたが、どうにか間に合いました。

入園式で担任の先生が、うさぎバッグを「かわいいね」とほめてくれたようで、それからは娘の大のお気に入りになりました。

それからも、年中、年長の担任の先生やら、その他の先生方が「かわいいね」と、ほめてくれました。

下の娘もそのまま使いました。
ふたりは7学年離れていて、そのときはもう、毛糸のバッグは珍しくありませんでした。それでも幼稚園の先生は「かわいい」と、ほめてくれるんですよね、だから嬉しかったようです。

そんなこんなで、思い付きの制作4時間のバッグながら、なんだかんだ10年も重宝しました。

だから思い入れが強いです。バッグは他にも何個も作りましたが、うさぎバッグは、なんとなく捨てられずにいます。

毛糸部分はそんなに痛んでいないし、裏地を交換すればまだ使えるかなとか、思ったりして(笑)。

最後まで読んでくれてありがとうございました。
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