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「津軽飴」(青森県青森市本町)

原材料:甘しょ澱粉、大麦麦芽
製造:上ボシ武内製飴所 
販売:あおもり探検市場 
https://store.shopping.yahoo.co.jp/tanken/c4c5b7dab0.html

青森の母の実家から送られてきた段ボール箱の中には、いつも新聞紙で包まれた丸くて平たくて赤いブリキ缶が入っていた。昔話の絵本のような黒い力強い線で描かれたねぶた祭りの写真が印刷された、ずっしりとした重みのあるブリキ缶。

缶を開けると、中には琥珀色の水飴がびっしりと詰まっていた。その表面に割り箸をズブっと差し込み持ち上げると、水飴はぐにゃりと伸びて糸を引く。くるくるっと箸に巻き付けて口に放りこむと、優しい甘みがとろりと口の中に広がっていく。この一連の儀式みたいな食べ方が好きだ。

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この津軽飴は150年以上の歴史を持つ、青森県民なら知らない人はいないと言われるほどメジャーな郷土菓子。製造する上ボシ武内製飴所では、砂糖は一切使用せず、でんぷんと麦芽から甘味料を摂れることを発見した祖先から製法を受け継ぎ、添加物もなしの自然な甘みの水飴を作り続けている。江戸時代にはお菓子というより貴重な糖分摂取の滋養強壮として食され、明治30年頃から大正時代はヤン衆と呼ばれた鰊漁の出稼ぎ労働者たちに人気を博したそう。

私は生まれも育ちも東京だが、母方の親族が青森から送ってくれたおかげで子どもの頃によく食べていた。しかし私の周りには津軽飴を知っている友だちは誰もいなかったし売っているところもなかったので、個人的には長年の謎のお菓子だった。

改めて津軽飴の缶を眺めながら、大人になって初めて青森のねぶた祭りに行った時のことを思い出した。私自身はねぶたを生まれて初めて見たはずなのに、なぜか懐かしさを感じてしまったのだ。ねぶたは東北を代表する有名な祭りでテレビ中継もあったから、既視感はそのせいかもしれない。でも朧げな記憶を辿ると、津軽飴のパッケージに印刷されたねぶたの、どこか遠くの凛とした情緒のある夏のお祭りのイメージが記憶の最下層のレイヤーにふんわりと存在したことに気がついた。自然と刷り込まれた私の中の想像のねぶた。なんか知ってる、この感じ。東京っ子が行ったこともないその土地に郷愁を抱き記憶にまで残るのは、味はもちろんのこと、パッケージも重要な要素だと身をもって知った。

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津軽飴はごまの南部煎餅(こちらも青森の郷土菓子)にはさんで食べるのも、美味しい食べ方だ。素朴で滋味溢れる美味しさ。

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料理に砂糖代わりに使ったりコーヒーや紅茶に入れるのもいい。長期保存が可能なので、災害時の家庭内備蓄用としてもアリかもしれない。


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