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ルービック
2022年3月12日 00:05
窓の外は雨が降っている。傘を差すほどではないが、差さなければそこそこ濡れるくらいの雨。この雨量が一番腹立たしい。「びしょびしょだよ、とは言えないのが癪だな」男はステッキを手に、店に入るやいなや、私の向かいの席に最短距離で座った。頭や肩のみならず、腕、胸、脚もじんわりと湿っている。「傘持ってくればよかったのに」見せびらかすようにテーブルに掛けたビニール傘の柄を掴み、こんこん、と床をたたいた。