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介護保険は日本最大のサブスクリプションかもしれない⑤ 5話完結

5話にわたって、介護保険はサブスクなのか?について話をしてきました。

前回は介護保険をサブスクとして捉える時の課題を3つ紹介してきました。詳しくは、第4話をご覧ください。

そこでは、

・購入のタイミング
・サービスのあり方
・サービス選択の自由

をあげているのですが、それに対して、今回は藤田なりにこのように考えればいいんじゃないかという案をご紹介にして終わりにしようと思います。

なお、これは正解ではなく、サブスクビジネスとして捉える場合に、このような視点で取り組むことでより良いカスタマーサクセスを目指せるのでは?という話で聞いてもらえると嬉しいです!

僕の提案は3つ

・介護保険サービスの自由化
・サービスの質の改善
・収益改善のための付加価値の創出

です。では、1つずつ話をしていきましょう。

介護保険サービスの自由化とは?

そもそも、介護保険サービスは利用者に選択の自由があります。なので、この提案自体本来はあり得ないことなのですが、現場レベルで見た時に果たして本当にこうなっているでしょうか?

前回の話でも説明しましたが、介護保険サービスはケアマネージャーが作成したケアプランに基づいて行われます。このケアプランの作成は、利用者本人や家族がやっても構いません。ただし、非常に面倒な書類業務や手続きがあるので、一般的にはケアマネに依頼します。

そして、作業の煩雑さがケアマネへの依頼理由なのではなく、「介護保険に対しての知識の無さ」がケアマネへの依頼理由になっています。これは、知らないからおまかせでという状況です。

この状況だと何が起きるでしょうか。

それは、ケアマネとの関わりが深いところへのサービス依頼が集中し、利用者の状況よりもしがらみが優先されているということです。

今ではありませんが、医師に対して巨額の接待費用を使い薬を入れるMR営業というものがありました。今では禁止されていますが・・・

これは、患者は薬の知識などないので医師から言われたことをそのまま受け入れるしかない。だから、その医師が優先して使用する薬になれば、かなりの売り上げが見込めるということです。ここに介在しているのは、「医師の良心」と「製薬会社の良心」です。しかし、製薬会社に関しては営利企業ですので、安く商品を作成し、高く商品を購入してもらうことが、自社の利益を最大限に高めます。なので、良心のもいい薬を作る、ことが信じられなければどの薬がいいかは正確にはわかりません。

逆に医師は保険から給料が出ているので、本来お金を積まれても患者にとってもっともいい選択肢を提供することが求められています。しかし、医師も人です。欲に目が眩む場合もあります。これが問題視され、MRの営業方法に規制がつきました。

これと同様のことが介護業界にも起きています。

ケアマネは医師ですね。そして、MRがサービス事業所だと考えてください。この時、医師とMRの関係性と大きく違うことは、サービス事業所がケアマネを雇うことができるという点です。

つまり、自社サービスを選択したケアプランを作るために、ケアマネを採用していれば、いくらでも優先的に自社サービスを使ったケアプランの作成ができるということです。これは、利用者の心身状況に合わせたプランの作成ではなく、ケアマネの都合に合わせたプランの作成ですね。

こういった意味で、介護保険サービスの自由化が必要だと提案しました。それは、ケアマネに対してきっちりと利用者が質問をすることです。知識をつけ、介護保険の利用に対し、オーダーを出すことなのです。

これこそサブスクモデルにおけるカスタマーサクセスを行うための関係性の構築と言えます。

サービスの質の改善とは?

となると、利用者は自分の状況に合っていてサービスの質がいいところを探すようになります。つまり、利用者が選べるようになることで、サービス提供者は自社のサービスの質の向上が必須になるということです。

では、現場レベルでサービスの質の向上はどのように行われているのでしょうか?

今、介護現場は介護報酬によって今後の方針が決められている体制をとっています。例えば、ある利用者に対して、介護の方法を統一できないという問題はずいぶん前からありました。これに対して、現場レベルの会話では、

「私はこの方がやりやすいから」
「そんな方法を教えられても忘れてしまう」

などの意見が上がってくることは珍しくありません。
では、これをどうやって変えていくのか、というと、現場の教育では不可能と判断されているので、介護報酬で全員が統一した介入方法を行うために、ビッグデータを蓄積していこうという方針になり、LIFEというものが今年の4月から導入されます。これを導入している事業所には加算をつけますので、入力していける体制を作ってくださいね。ということですね。

これにより初めて介護サービスは体制を本格的に変えようかという判断になります。理由は簡単です。この体制を変更することにより、介護報酬が増え、売り上げが上がるからです。

つまり、現場ではなく、それを管理する側の考えとしては、大きな指示を出す時には、収益が上がるかどうかで判断をすることが多いということが言えます。

現場の感覚とは違うと思いますので、そこについてはまた別で話ができればと思いますが、基本的に、介護保険サービスを行っていて、運営が上手なところは営利企業です。そして、営利企業の中でも介護報酬を軸に置いているところはこのように考えます。

逆に医療法人や社会福祉法人の場合は、介護報酬しか収益のイメージがありませんので、上の変更に対してやらなければならないからやるというスタンスです。クライアントの利益、という考え方は基本的にはないところが多く、自分たちの仕事はより良い介護を届けること、というクライアントを置いてけぼりにする考えが多いです。

さて、この介護報酬ベースでのサービス提供を考えた時に、サービスの質の向上が起こるでしょうか?そうなんですね。かなり起きにくいんです。

しかし、利用者がきちっとした知識を持っていくことで、このサービスの質を求められるようになります。ここに対応していかなければ選ばれない事業所になるわけですが、これを今から対応していくためには何をすればいいのでしょうか。

それが、収益改善のための付加価値の創出です。

収益改善のための付加価値の創出とは?

介護報酬をベースにサービスを組み立てることは間違ってはいません。その中で、選ばれる事業所になるためには、他の事業所と「何が・どこが」違うか、です。

保険という性質上、どの施設でも同じようにサービスを提供しないといけません。その中でも選ばれるためには?ですが、そもそも介護報酬だけでは、十分な収益になっていないので、スタッフの人件費が安いと言われているわけですね。

(本当にそうかはここでは議論しませんが。)

この時に収益を増やすだけでなく、増やすからには、そのサービスを欲しいといってもらえる価値を見つけなければなりません。

あの事業所では、介護サービスは最高な上、私たちに必要なサービスを良心的な価格で提供してくれるの♡

みたいな噂が立つように業務を作っていくことが、サブスクモデルのアップセールを達成することになります。

アップセールをすることがダメなことのように考えられる人もいるかもしれませんが、クライアントが求めているサービスを提供し、それに対して、その対価を支払うことは全く問題はありません。

それが、保険内で賄うべきものなのか、そうじゃないのかは判断が必要です。例えば、介護保険で入浴に対しては加算があるにもかかわらず、入浴料は取ることはできません。

しかし、入浴が好きで、入浴剤を選べるみたいなサービスはあり、ですよね。そこで、どのお風呂にするか選んでもらって、お風呂だけでも旅行気分を味わってもらう、みたいな感じです。

このように、サブスクは開始してから関係性の構築が始まります。これは、介護保険も同じです。それから求められていたサービスを提供し、さらに期待に答えるためにアップセールを提案する。

この流れは一般的なサブスクではよくある話です。

アップセールやアップグレードというような言い方をすることもありますが、これはお客さんがさらに満足してもらうにはどうしたらいいか?を考えた結果です。

それが「カスタマーサクセス」なのです。

というわけで全5回に分けて話をしてきましたが、いかがでしたか?

介護保険とサブスクでは、なかなかイメージしにくかったかと思いますが、今後このような流れになることは間違い無いでしょう。

どうやって介護保険の中で選ばれる事業所になるのか、それが"サブスク"を学ぶことで解決できるかもしれませんね。


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