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とある難聴の少女の行動に感銘を受けた話

3年前から難聴児の親を始めた私ですがこの3年間に考えを改める体験をいくつかしました。
もともと差別的な考えがあるわけではなかったですし子供の難聴に対しても前向きに捉えていましたが、どこかで"ハンディがあるので優しくしないといけない存在"というなんとなく上から目線だったような気がします。
今回はその間違いに気付いたある難聴の女の子との出会いを書きたいと思います。
ちょっと分かりづらいので絵付きです。

①公園の滑り台に並ぶ女の子と息子

ある日公園で遊んでいたのですが、滑り台(普通より長いやつ)に列が出来ていました。
息子くん(緑)が滑り台に並んでおり女の子(紫)はその前に並んでいました。
小学3年〜4年くらいで3歳の息子よりもお姉さんという感じです。
私は横のベンチにおりましたが女の子の補聴器には気付いてませんでした。

②男の子が横入りする

そこに他の男の子(赤)が割り込んで来ました。
息子くんはなんか地面いじってて気付いていないし、男の子も3、4歳といったところでスキマが大きければ入ってしまうのはしょうがないなぁと。
「あー入られちゃったなぁ」とそんな感じで見ておりました。

③女の子が何?の手話をする

すると女の子が男の子に対して"なに"の手話をしました。
横入りしたことを注意したんですね。
しかし男の子はそれに気付いておらず女の子と全然顔を合わせません。
私も注意してくれていることはわかりましたが、手話に関してはノンノンノンのジェスチャーと思ってただ成り行きを見ておりました。

④女の子と目が合う

女の子は息子が補聴器をしていることに気付いており、横で見ている私がその親なこともわかっていたのだと思います。
難聴児の親=手話がわかりそうな大人が近くにいたので、助けを求めるわけではありませんけども「大人がなんとかするかな?」とチラッと見たんだと思います。
しかし残念なことに私は手話に気付いておらず「注意してくれたけど男の子動かなそうだな」とボーっと見ておりました。

⑤女の子が最後尾にまわる

男の子が反応せず大人も頼りにならないとわかった女の子がとった行動は自分が息子のうしろに並ぶというものでした。
最初全然意味がわからず「!?!?」状態だったんですが、
つまりもともと4番目の息子が横入りで5番になったのを、自分が最後尾にまわることで息子をまた4番に戻したんですね。
いや、そんなことが普通ありますかと。

予想外の行動にビビる私

それまでボケッと見ていた私ですが、女の子がうしろに回ったことで流石にびっくりし「え、いいの?前並んでたのに。え、大丈夫!?」みたいに焦って女の子に聞きました。するとウンとうなずく女の子
そこでようやく女の子が補聴器をしていること、喋れないことに気が付きました。
そして後からよく考えると女の子の行動は筋が通ったものだったと分かりました。

女の子がしたかったこと

女の子の目的は"息子くんの順番を守ること"になっていたんだと思います。
男の子に注意して済めばそれでよかった。
でも男の子がうしろに回らなかったから、次の手段として自分がうしろに回ったんですね。
それで自分がやろうと思ったことを自分でやっただけなので、私がいいいの?大丈夫?と聞いたときにもウンと答えた。
そういうことだったんだと思います。

女の子行動をどう考えるか

自己犠牲の精神を持った優しい子とも言えます。
本当は女の子自身の順番も守りたかったはずです。
男の子に喋りかけられたならそれも叶ったかも知れないので、障害があってかわいそうと考えることもできるのかも知れません。
私は自分と同じような境遇の小さい子の順番を守りたいという気持ちを持ち、実際に自分でそれを守ったんだと理解しています。
まあ自分がそういう方法で順番を譲ったこともありませんし、そもそも他人のために注意なんて滅多にしないですから。
女の子の行動には感銘を受けたというよりもうほとんど尊敬の念ですね。

障害を持っていても同じ人間という言葉はよく言われますが、人によってそのニュアンスは微妙に違うのではないかと思います。
私にとっては一つの偏見を失くすのに十分な体験でした。

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