初恋は水色

はやくおとなになりたいな
誰よりも先にプリキュアを見るのを辞めた
水色のランドセルが良かった
背の順が一番後ろで、真っ赤なランドセルがいちばんに似合わなくなったわたし

映画のおんなのこ、屋上の淵に立ってこう話す

「今日も私は大丈夫。」

駅のホーム、黄色い線の内側に立つ

「大丈夫」

マスクの下、口を動かした

享年18才の私がいまを生きる理由

母が編んだ水色のマフラーを抱きしめる

ほんのりあまい香りがした

いつから、大丈夫になったんだろう

いつから、大丈夫なふりが上手くなったんだっけ


はやくおとなになりたかった

この世界でおとなになるには、
恋をしなければいけないらしい。最悪だけど

君の熱を持った視線が気持ち悪かった

私の熱を持った視線がうっとおしくなった


私、水色が初恋だったよ

小学四年生、触れたところからばい菌が身体を這いずり回るような気がした

大丈夫

ぽたぽたと、水色がこぼれ落ちた。

たすけて

私をみつめて、小学四年生のきみはそういった。

ごめんね、偽物の大丈夫しか、量産できなくて

きっと大丈夫

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