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コスタリカの家事事情


 日本で自宅に客を迎えるとしたら、しかも家に何泊か泊まるとしたら、家事を担う人(まだ多くの場合は女性なのが日本の現状でしょう)はかなり気を遣うのではないでしょうか。その客がイジワルなお姑さんでもない限り、チェックされるわけなどないのに家中いたるところを掃除し(トイレや洗面所などの水回りは特に念入りに)、洗面所や台所のタオルをできるだけ新しいものに変え、食べられない食品がないか事前に確認し、飲み物の種類を豊富に用意し、どのような交通機関で何時頃到着するのかで逆算しつつ迎える準備を整える……。
 これが日本の我が家で客を迎えるときのチェックポイントでした。もちろん地域や家庭によって違うと思います。我が家はそんなに頻繁に来客のある家ではなかったので、余計に気を遣っていたようにも感じます。子供の友人や、近所に住む親せきが当たり前のように家に入ってくる家では、「来客」に対する構えはもう少し肩の力を抜いたものになるでしょう。

 今回は私がコスタリカ人の友達の家に二泊三日させてもらった中で見て感じたことを「あまりもてなし慣れていない日本人の視点」で書こうと思います。

びっくりポイントその1【ゴミ】
 エコツーリズムとして近年名を馳せつつあるコスタリカ。原発も軍隊もなく、多種多様の野生動物、昆虫が自然公園で保護されています。これは事実。ここまで聞くとゴミは日本以上に厳しく分別したりリサイクルしたりしているイメージが湧いてくると思います。ですが現実は真逆です。生活ごみは全部一緒くたに捨てます。ビン、缶、電池まで(!)全て一つのゴミ袋に入れられます。生ごみだけは、庭がある家はたい肥スペース(庭の端っこ)に放っている人もいますが、庭のない家ではこれもその他のゴミと一緒に捨てています。回収は週に2回か3回。家の前の鉄製の足つき籠に置いておくか、近くの木に引っかけておくだけ。地面に直接置いてあるのも見かけますが、日本同様カラスやもっと大きい謎の鳥、野良犬に食い荒らされていることもあります。

びっくりポイントその2【食事】
 コスタリカのスーパーや小さな商店では出来合いのお惣菜やお弁当は売っていません。冷凍食品は増えてきていますが、野菜やおかずではなく、揚げ物が多いです。家事を担う主婦は、作るとしたら野菜や肉の下ごしらえから味付けまで全部こなします。料理好きな人が多い印象ですが、大家族や手料理でもてなす集まりのときの主婦は大変そうです。今回お世話になったお宅では、お母さんは料理好きでとても美味しいと親戚の間でも評判ですが、忙しかったのかお昼は2回ともテイクアウト。夜は親戚の家主催のBBQとテイクアウトのピザでした。朝ごはんは友達が作ってくれました。
 ここでは「個人やレストランで売っているものを買う」こともごくごく普通に行われています。いわゆるお店の商品の「テイクアウト」と同じシステムで、電話やオンラインで予約して受け取りに行くかバイク便で配達してもらう、もしくは料理上手で個人で販売している近所の人に頼んでおいて受け取りに行くというものです。コスタリカでは個人で食料品(チャーハン、ジャムやパン、ケーキ、おかず)を販売している人が多くいます。基本的に全てホールケーキです。一人分を買うのが難しいのが悲しいところです……。

びっくりポイントその3【風呂掃除】
 今回は泊めてもらったのでシャワーを借りたのですが、なんとシャワーのボイラー部分が故障しており水シャワーでした。一日目は夜に浴びようと思っていたため、浴びることは断念し(寒かったため)タオルで拭いてしのぐことに。二日目は外を歩き回って汗もかいたのでその熱さを保ったまま水シャワーを浴びました。どんなに冷えるか……と覚悟したのですが、真っ昼間は暑さで水道管も温まっているため、凍えるような冷水でなかったのが救いです。意外と問題なく洗い流せました。そしてシャワー室ですが、私が知る限り滞在していた3日間で掃除はしていませんでした。それでも水垢もカビも目に付きませんでした。日本のように湯舟にお湯を張る様式でないからか、はたまた水しか出ないタイミングだったからなのか、不快感は全くありませんでした。たいていシャワー室には窓があるので、乾燥するのが早いのでしょう。

びっくりポイントその4【各自好きに過ごす】
 お客さんが来ているからといってずっとつきっきりでもてなすわけではないのです。一緒に過ごす予定(何か目的の用事)以外では、「部屋のテレビ、好きに見ていていいよ」とか、「お腹が減ったらキッチンの果物食べていいよ」などいい意味で“放置”されます。かと言ってその場にいる他の人も何かに忙しそうかと言えばそうでもないので、一緒にテレビを見たり、おしゃべりしたり、日用品の買い物に着いて行ったりして過ごします。この気張らなさ、楽チン。それもこれもドアや窓は開けっぱなしの「開かれた空間」だからこそあまり気にならないように思えました。

 さて来客に際しての家事にスポットを当てて書きましたが、家庭によってはお手伝いさんを雇っていて、掃除と料理に来てもらうという人もいます。私が現在、部屋を借りている大家さんは足が不自由なこともありニカラグア人のお手伝いさんを雇っています。お手伝いさんは、ピラと呼ばれる洗濯スペース、台所、シャワー室、私室、居間、玄関を隅から隅まで掃除します。なんと大家さんが旅行で不在のときの、そのお手伝いさんだけが一人合鍵で入り掃除をして帰ることもありました。これは日本人の私にはとても驚きでした。(ちなみに旅行から帰ってきた大家さん、チェックの厳しい姑のごとく棚の上とオーブンの隙間を指で一撫でし『掃除が足りてないわ』の一言に二度目のびっくりでした。

 お客さんの受け入れ態勢から見る家事の在り方、日本とはだいぶ違います。誰かを訪ねる、訪ねられることがとても普通、むしろよくあることで、尋ねてコーヒーを飲みながらおしゃべりをすることは30代以上の人にとってのコミュニケーションの一つ、娯楽の一つにも見えます。親しい間柄であれば、お茶に招かれたお客さんが立ち去る前に使ったお茶碗などを洗う光景もよく目にします。文字通り「勝手知ったる」間柄なのでしょう。

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