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呼び水をさす

彼が親友とパートナーになったそうだ。
初恋は実らないってホントだったんだな。
いくら頑張っても性別は変えられない。

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男はみんな私を抱いただけで満足しているが、私は抱かれてやっているので利用しているのはこちら側。

あくまでも立場は弁えてもらわないと困るのだ。

だからこそ、こないだの失敗は倍で返してやる。
と、気合を入れて真っ赤なリップを口元にキュッとひきなおした。

一夜限りの間違いだからこそ誰に当たるかどう自身が弄ぶかに自分をベットしている訳なので万が一にも負けることがあっても仕方ないのだが、それは想定回ではないのだ。

彼だけは許さない。

いとも簡単に私のテリトリーに侵入した挙句、新たな性感帯を植え付けた気になるなんて

「遅刻癖があるなんてきいてない、まるで私がもう一度味わいたくて早く来たみたいに見えるじゃない....」

っと、ぽつりと呟けば馴染みのマスターが、あちらのお客様からレディーキラーです。と差し出された。

人目見て色から察するにこれはスクリュードライバー、無知な女ならオレンジ系のカクテルをと言って差し出せば確実に潰して持ち帰れるはずなのに、どうしてスクリュードライバーと名乗ったの?

こないだの彼は遅れたお詫びと言いながら、眼鏡を持ち上げながら、それをこちら側に寄越した。

「来ると思ってた。おかえり。」

おかえり?やや疑問を覚えたがそんなことよりも挑発されていることに腹が立った。彼らしいと言えば彼らしいのだろうか?
どこか、彼に似た雰囲気を感じとりじりりと警戒するが、
一度交えた仲だけでしかないので私と彼の関係をこの男が知る由もないし、ただのからかい癖なのだろう。

似ているから...余計に腹が立つのかな
忘れるって決めたじゃない。

勘違いしないで私はあなたを抱きにきただけくらい言わないと気が収まらない。
と思っているのに彼の目の奥を見た瞬間、喉元がひゅーと閉まる音がした。

口元がキュッと閉まって何も出てこない。
それに微かに手が震えている...がそれは恐怖から来るものではなく興奮からくるものだった。

じゃあ、私からはブラットハウンドを。

「手厳しいね...」

ホテルに着いてしまった。
部屋に入るなり彼は、ネクタイを緩めるとそのまま私の手を拘束して、ベットに付き倒した。

咄嗟のことで、「や、やめて」なんてか弱い声まで出したりして。

頬がほてってるのが自分でもわかる。
早まる鼓動。

焦っては行けない。いつものごとく上手く交渉して今度は私が彼を抱くの。

何してるの?彼の不機嫌そうな声が聞こえる。
「悪い子にはお仕置だよ?」
この声、聞き覚えがある。綺麗と囁いたあの声と同じだ。
まるで彼の声みたいなんて思う私は末期。

そして気がつけばベットの端に脚が開くように固定されてしまったようだ。

僕なりに今日くらいは優しくしてあげようと思ってたのにまさかまだ反抗心があったとはね。
もっと調教してあげないと。

まずはゆっくりと唇を溶かすようにキスをする、でも息継ぎなんかさせてあげない。
首筋を這い回り、時々耳も噛んでやった。
いい声で鳴くな。
でも、まだまだかなー?
首元に紅い華でも咲かせといてやるか、八重歯を突き立てながら、器用にブラウスの隙間からそっと手を滑らせ、脇腹が順に手を上にあげ、撫で回したり弾いたりしてみた。
それだけで彼女は涙目で睨みつけてきた。
男慣れしてる癖に、ご趣味じゃなかったかな?
でもね。
それもそれって、僕を煽っているだけでしかないって分かってる?

加虐心に火をつけちゃったね。
反抗的な態度にはお仕置しないとね?

下の突起に玩具を添えて首に手をかけて、少しづつ体重を乗せてやった。
生意気な君にはこのくらいしないとね。

慣れとは恐ろしいものだね。
最初は怖がるふりもできたのに今では...
自分でも自覚しているのだろう体は正直とは昔の人はよく言ったもので、染みができてきている。

何度見てもぐっちゃぐちゃに壊してやりたくなる顔。

「はしたない女だね。」

あぁ、ダメだ完全にペースを握られているし何より首にかかる重力が怖いはずなのに心地いい。
それに、彼の長く細いなかに、男らしさを孕んだゴツゴツとした指が下に伸びていき、弱いところに手をかける。
玩具とはまた違った刺激に、腰が浮いてしまう。
そして今度は一番弱いところばかりを刺激してくる。
それに加えて降やむことない唇への刺激。

息が吸えない。
気道閉寒感で生理的涙が溢れてしまった
また泣き顔を晒してしまうとは

「綺麗だ...」

彼はまた呟くと同時に手を引き抜いてしまう。
待って、という顔をまたしてしまった。

彼は満足気にゆっくりと焦らすように腰を埋めてきた。

あれ?手の力が少し抜けた気がする。
物足りなく感じる私がいて動揺してしまう。
しかしそんなことも彼には初筒抜けのようだ...

可愛いなぁ。ふっ。と麗しい笑みと共に奥を突かれながらさっきとは比べ物にならない強さで縊る。

もっとだろ?と言いたげな雄の目を向けられ頷いてしまう私も私だ。

お互いが興奮しきってのか激しさを増す行為の中で満たされたくなってしまった。
彼が目線で出されたい?と問うてくる。が、出すよと言っているようなものだ。

「出してお願い。」

快楽の事しか頭にない私でも、彼の左手に輝きがあることに最初から気がついていなかった訳では無い。
前回は我慢できたのにダメだ快楽に溺れている。
逆らうなと脳が告げている。
無意識に口にしていた。

その言葉に反応して一段と硬さをました彼のものが奥で解き放たれた。

今回は私からチュッとリップ音を立て喉にキスをした。

次にリップ音が聞こえたのは私の腰。

眼鏡をかけ直し、ゆっくりとネクタイを解いてくれた。
優しく出来なくてごめんなんて言わないよ。君は僕に激しく満たされたいみたいだから。
色のない世界から色の着いた世界はどう?なんて顔をして。

「僕のものになっちゃったね」

当たっているのが悔しいが仕方ない。レイプ同然の行為に興奮して体液を垂れ流す私に向かって綺麗だと言う彼を客観的視点で考えて居たら口角が思わず上がってしまったんだ。

「大概貴方も私の事好きだと思うけど?」

どんな愛であれ私は愛に飢えていたんだ。
彼から向けられる歪んだ愛が私にはお似合いなのだ。

それに彼が同時に与えてくれるのは、生と死の狭間の瞬間と性的快楽。
それは絶頂そのものだった。

これが盲目....

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今日もあのバーで待ちあわせる。

これが私なりの恋なのかもしれない。
セオリー通り初恋は実らかったけど...

次は体から始まる恋もありでしょ?

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僕の特技はメソッド演技。
コンタクトから伊達メガネに変えて、箱から出した煌めきを左手に納めて、僕のパートナーの雰囲気を纏ってやっと手に入れた彼女の元へ逢いに行く。

「おかえり」

-盲目-




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