PrejectRCL ZET REQUIEM:NOVELIZED 03-絶望の槍 小説本文パート
PROJECT RCL ZET REQUIEM:NOVELIZED
第3章:絶望の槍
●文:Hi-GO!
●執筆補佐:めたるす/ゾンリー/らいおね
●挿絵:Hi-GO!/補欠/ててん/トナミカンジ/のばでぃ
▼冊子版の通販▼
※冊子版限定で『キャラクターデザイン資料』や『用語解説』
『ゲストイラスト』等のコンテンツが付属します。
※第1章と2章は以下になります。先にお読み頂く事を推奨いたします。
◆2024/08/08……ヴァルハラマップを追加
あとがきコーナーにゼニムの過去の姿を追加
キャラクター紹介
▼シエル
▼ブロッサム・シエル
▼オメガ・シエル
▼アルエット
▼パッシィ
▼ペロケ
▼イロンデル
▼ジョーヌ
▼ロゼ
▼グレイシア
▼ウェクト
▼リバース・ナイツ
▼ゼニム
▼ゼットルーパー
▼ゼットール
▼ネージュ
▼ラファール
▼ダイン
▼グレイシス
!ご注意!
こちらは
【PROJECT RCL ZET REQUIEM:NOVELIZED 03-絶望の槍】
の小説本文パートのみの記事になります。
本章より挿絵は冊子版共にではフルカラーとなります。
(全2章も順次更新いたします)
『キャラクターデザイン資料』や『用語解説』『ゲストイラスト』等は冊子版のみのコンテンツとなりますのでご了承お願いいたします。
※note限定のコンテンツとして『あとがきコーナー』が付属します。
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【人物相関図】
FILE:Ⅰ
空中要塞ヴァルハラのNEブロックの一角、黒光りを発しているはずの通路が真っ赤に染まっていた。
そこに、白い装束に身を包んだ少女――グレイシアは駆け付けたが、内心穏やかではない。以前は敵を斬るのを躊躇していたはずのシエルが突如として豹変した結果、仲間が斬られたというからだ。
ヴァルハラは中央シャフトからはどのブロックにも行き来ができるため到着は早かったが、ゼットルーパーに『変身』した5体の仲間達は四肢を切断され、赤い液体を撒き散らして横たわっていた。
「お前たち、無事か!? 誰か意識のあるものはいるか!?」
思わず彼女は叫んでいたが、返事は無い。
その数秒後、ノイズ交じりの独り言が通路に響く。
「ロ、ロゼ様にモっとお仕エしたかっタ……」
「待っていろ、今行く……!」
近づいて調べてみると、傷は深いものの、電子頭脳などの記憶領域に関しては致命傷にまで至らないようだった。ギリギリの所で剣の軌道を変えた痕跡がある。
「あの娘……まさか、この期に及んで手を抜いたというのか……」
しかし、そうは言いがたい光景を見直し、直感した。
「いやこれは……己の斬撃に抗っている……?」
いずれにしろ、仲間の犠牲を払わずに済んだことに変わりはない。彼女は応急処置を施してウェクトに連絡を取った。
◆SCENE2
一方その頃、シエルはEブロックに潜入し、配備された仕掛けや兵士達に翻弄されていた。
例えば小型の工業用メカニロイドとして名高いメットールシリーズだが、ゼロ・リバースでも改良されて配備されていた。問題はその見た目である。
一見すると、まるで『紅き英雄』の頭部を彷彿とさせるヘルメットが道端に横たわっているように見えるのだ。それが突如顔を出して動き始めるのだから意表を突かれてしまう。おまけに耳にあたる箇所から小型のセイバーまで繰り出す始末だ。
「いくらなんでもッ、『ゼロ・リバース』だからといってやり過ぎじゃないかしらッ……! アルカディアより悪趣味よ……」
攻撃を避けながらも応戦するも、メットの中にこもられるとまるで攻撃が通らない。元が工業用である恩恵であろうが、基本的にはカウンター以外の手段は無いのが厄介なところだ。ちなみに距離を取れば口元からおなじみの光弾も放ってくる。
「さしずめ『ゼットール』というところねッ……!」
攻撃を誘い出してなんとか1体ずつ撃破していくしかない。少量の配備であればやり過ごすことも可能なのだが、ピンポイントで適量配置されているため、下手にやり過ごせば挟み撃ちに合う可能性が高いのだ。
「でも、顔を出していないと攻撃が通らないのは困るわ……」
愚痴をこぼしながらも少しずつ数を減らしていき、注意を引かれていた所で視界の端から何かが迫ってきた。
「なッ……!」
すんでの所でその場から離れ、振り返る。すると迎撃用の針型トラップが壁から突き出ていた。レプリロイド化を果たしたとはいえ、地形から生じる無数の剣先に貫かれては無事では済まない。
「間一髪だったわね……」
しかし息をつく間もなく、地面や天井からも槍を彷彿とさせる鋭利な金属が次々とシエルへと襲い掛かる。さながら過去にデータベースで閲覧した忍者屋敷の仕掛けのように、通路のそこかしこから鋭い殺意が放たれるのだ。
当たれば腕部や脚部への致命傷は必至だが、まだ先に戦いが控えている以上、ここで深手を負うわけにはいかないだろう。
「悪いけど、こんなところで生け花になる趣味はないのよ……!」
そして回避に意識をそらされた瞬間、ゼットルーパーがショートセイバーを振りかざしながら勢いよく距離を詰めてくる。
「この配備をした人は本当に性格が悪そうねッ……!」
思わず想像の人物にまで愚痴が及んでいた。それはともかくも、ゼットルーパーを無力化しなければならない。またシステマ・オメガの力に頼るか、それとも……と逡巡したが、とりあえずは一太刀浴びせて間をつなぐ。
「増援が来ないうちになんとかしないと……」
ふと、ゼットルーパーの頭部の後方に髪の毛のように動力パイプがあることに気づく。もしかしたら、あそこを断ち斬れば敵を無力化できるかもしれない。
「ごめんなさい! 先に謝っておくわ!」
加速してから空中に飛び上がり、敵の後方に落ちる軌道の中で動力パイプを断つ。途端にゼットルーパーのモノアイの発光は消え、見事その場で機能停止した。
「これならいけそうね! 単機だと比較的ありがたいのだけど……」
そこに再び針のトラップが襲い掛かる。だが、そろそろ慣れてきた頃合いだ。配置するタイミングの法則でもあるのだろう。
グレイシスのナビゲートによると、Eブロック深部の制御室にリバース・ナイツの1人が待ち構えている可能性が高いとのこと。だが、すんでの所で4体のゼットルーパーに前方を塞がれてしまった。おまけに後方では鋭い針がせわしなく伸縮を続けている。
「まるで前門の虎、後門の狼ね……なんとかならないかしら……」
「シエルさん! 後方のトラップを利用できませんか?」
グレイシスから通信が入る。たしかに敵をおびき寄せて罠で無力化するのであればなんとかなりそうだ。
「わかったわ! やってみるわね!」
フェイントの斬撃を繰り出すと後方に加速して罠の前に敵をおびき寄せた。案の定つられてこちらに移動してきたところを1体目は足払いでトラップの中へ案内する。続けて2体目はセイバーで同じく後方へ。3体目は心で謝りつつも、武装した右腕を斬り飛ばした。
「さて、残るはあと1体……」
先ほどと同様に加速して宙を跳ねる。空中で逆さまになりながらも確実に『視て』敵の頭部の動力パイプを切断することに成功した。
「悪いけど、通してもらうわ」
そう言いながら着地するとシエルは制御室のゲートへ足を進めた
◆SCENE3
「シエルさん、やはり銃は使わないのですか?」
ふいにグレイシスが話しかけてきた。
「ええ、知っての通りゼロ・リバースの殆どのレプリロイドには銃が効かない事が報告されているわ。メカニロイドならまだわからないけど、何かしらの対策を施されていると思っていいでしょうね」
「あのウェクトという科学者の仕業でしょうか? それにしても厄介な……」
防弾に特化した装甲と光学エネルギーを減衰させる装置の組み合わせ。このような策と技術を実現するとなると、ウェクトに絞られてくるのは仕方がない。
「恐らくはそのようね。彼らは純粋な近接武器による決闘をお望みのようだから……どのみちモデルB状態でのバスターの再現は未完成だったからむしろ助かったわ。敵の出方も斬り合いと最初からわかっているしね」
『紅き英雄』のバスターは、レジスタンスのメンバーが使用していた量産型のバスターショットに対し、ゼットセイバーをカートリッジにすることで出力を上げる運用をしていた。
それはイレギュラーな運用法でもあり、本来のバスターを用いなかったためにデータ不足なのだ。もちろん同じ形式で運用することも可能なのだが、モデルBのセイバーはカートリッジとしての相性が良くないらしく、望んだ出力に届かないのが現状だ。
「それなら良いのですが……他のメンバーが心配です。皆が近接戦闘に優れている訳でもないですし、有効な武器も限られます」
「私の方で新装備としてバスターとセイバーの両方を使えるものを配備しているわ。とはいえリバース・ナイツクラスには太刀打ちするのは難しいといわざるを得ないわね。バスターも牽制程度には役に立つでしょうけども……」
「……つまりは短期間で打てる手は打ったということで、あとは作戦で上回るしかないということですね。事実、ここまで潜入は成功していますからシエルさん達の陽動と制圧が上手くいけばそれだけ成功率も高まります」
「えぇ。……それじゃあそろそろゲートを通過するわ。恐らくリバース・ナイツの誰かが控えているはず……」
そう言うとシエルはセイバーを握りしめ前に進んだ。
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