憧れの一人呑み
私はだいたいの場所なら一人で行ける。
一人カフェ、一人カラオケ、一人ラーメンに一人富士山。なんでもござれだ。
だけど、ひとつだけ、どうしても勇気が出ない場所がある。
それが、一人呑みだ。
若い頃から、大人になったら、おしゃれなバーで、一人優雅にお酒を嗜んでみたいな、と思っていた。
もしくは、立ち飲み居酒屋みたいなところで、偶然居合わせた人たちと、ワイワイなんてのも憧れる。
だけど、三十代も半ばになって、未だその夢は叶わずだ。
なぜなら、私はお酒が呑めない。
お店に入る以前の問題だ。
どのくらい飲めないかというと、居酒屋にいって最初の一杯にお酒を頼むとする。
ちびちび飲んで、2時間の会が終わる頃になっても、まだグラスに半分以上は残っている。
一人で居酒屋に行って、お酒を頼んだとしても、それじゃあお店の人も困ってしまうだろう。
飲めないなら、その分食べればいいじゃん、というかもしれないけど、そんなに量も食べられない。
ノンアルコールっていう手もあるけど、バーに一人で入ってノンアルコールのみって、お店に悪い気がして入れない。
今までも、ライブ終わりに気分が高揚している時などに、勢いで空いているお店に入ってみようかな、と思ったことが何度もある。
しかし、店内でお酒を飲んで楽しそうにしている人たちを見ると、見えない結界でも張られたように、勇気がしぼんでいくのがわかる。
祖父は二人とも、大の呑兵衛だ。
私も、おじいちゃんに似たらよかったなあ、と思う。
家族のなかで、私だけが、お酒の呑めない祖母に似た。
家族で食事に行っても、私とおばあちゃんだけ、ウーロン茶を飲みながら、「いいなあ。飲んでみたいね」なんて言っている。
おしゃれバーへの夢が、まだ諦めきれない。
いっそのこと、ノンアルコール専門のバーができればいいのにな。