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【小さなレジデンスは、アートとはなにか、アートはどう理解されるか、を泳ぎながら考えられる】レザルティスミーティング2019京都|メモ「日本におけるAIRの概況」

世界的なアーティスト・イン・レジデンスのネットワークResArtis(レザルティス)の国際ミーティングにPARADISE AIRスタッフが参加しました。
この記事は登壇したセッションの記録用メモ(議論部分・パラダイスに関する部分の記録用)です。ResArtisについてはこちらの記事にて詳しく記載しています。

レザルティスミーティング2019京都
創造的遭遇-アーティスト・イン・レジデンスの再想像

2019年2月6日 (水) - 2019年2月8日 (金)
場所:京都芸術センター 他
イベント情報
プログラムリスト
※2019年当時の内容です。最新情報はご自身でご確認ください。

DAY2セッション「日本におけるAIRの概況」

日本でユニーク且つ経験豊かなレジデンスプログラムを運営するレジデンスディレクターによるプレゼンテーション。どのような共通するモデル、課題や機会が見出せるでしょうか。(プログラムリストより)
日時:2019年2月6日(水)15:50-16:45
登壇者:
小田井真美(AIRネットワー クジャパン副委員長、さっぽろ天神山アートスタジオプロ グラムディレクター)
吉田雄一郎(城崎国際アートセンタープログラムディレクター)
庄子渉&森純平(PARADISE AIR プロデューサー&ディレクター)
Heidi Vogels(Trans Artis コーディネーター)/オランダ
Marie Fol (On the Move ボード)/オランダ・ベルギー

90年代から始まった日本のAIR

セッションの始まりには、さっぽろ天神山アートスタジオの小田井真美さんから1990年代に日本でAIRが始まり地域に根づいてきたこれまでの経緯と、現在国内で展開されている主なAIR事業・団体の位置づけを総覧するレクチャーがありました。また、日本でAIRを運営している当事者としてのDistress(悩みの種)についての言及もありました。

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登壇者のAIR/AIRプラットフォーム

・さっぽろ天神山アートスタジオ:https://tenjinyamastudio.jp/
・城崎国際アートセンター:http://kiac.jp/
・PARADISE AIR:http://paradiseair.info/
・Trans Artis:https://www.transartists.org/
・On the Move:http://on-the-move.org/

PARADISE AIRのプレゼンテーション

海外から見る日本のAIR

<Heidi(Trans Artis)コメント>
Trans Artisでは社会とアーティストをつなぐことが仕事。その一環で、昨年日本国内10箇所のAIRを見て回った。

日本視察の感想
みんな根本的には問題点は共通してると思うが・・日本では地域性を大事にしていることが印象的だった。オランダには50以上のAIR施設があるが、地域のコンテクストより(アーティストが)何をするか/できたかが大事にされている。

PARADISE AIRも行きました
運営チームが大切にしている「コレクティブ」で「クリエイティブ」で「FUN」であることは、実際に行って体験。小規模・小さなチームでおこなうコンテクストベースのレジデンス運営は、AIRの象徴だと思う。
小さなレジデンスは、小さい予算・小さいリソースから、アートとはなにか、アートはどう理解されるか、を泳ぎながら(運営しながら)考えられるから。そこからひとつの社会構造をボトムアップで作れることは、AIRの醍醐味だと思っている。

<Marie(On the Move)コメント>
Trans Artisでも勤務したことがある。Heidiの言っているビジョンはよく分かる。

プラットフォーム側から見てみると
On the Moveというアーティストのためのオンラインプラットフォームを8年間運営する中で、日本のAIRプログラムは人気が高いと知った。それは、滞在制作をするにあたって許されることが多いから(作品制作に対して許容度が高いから)。
日本のレジデンスの特徴はメディア(作品形態)にとらわれるのではなく、テーマ型でアーティストを集めるところ。そして、アウトプットの形態にとらわれないこと。日本が先進的な部分だと思う。
一方で、日本のアーティストが国外のAIRに行くことが難しいという話も聞いたことがある。

AIRの運営資金について

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日本では実験的なことに対して支援を得にくい、イノベーティブな試みは資金調達しにくいという問題があります。

<Marie(On the Move)コメント>
ファウンダー側から提供される資金が必要なところに届いているか、疑問をもっている。お金の行き先を考えるべき。旅費やわかりやすい作品、実績あるアーティストしか助成金を獲得できない、実験できないのは日本だけでなく世界でも問題だと思う。

<森(PARADISE AIR)コメント>
「どこに予算がいくか」という問題もあるが、単年度助成金についても考えたいと思っている。現状の助成金申請・採択・実施のサイクルでは長期スパンでの計画が立てにくく持続可能性を期待される割には謳えない、という課題も。

AIRに携わる中で

<吉田(城崎国際アートセンター)コメント>
AIR運営の仕事は薬剤師的なイメージ。「毒にもなる薬にもなる」アーティストの活動に寄り添っている。個人的には、地域のため、だけでやっているのではない。

<Heidi(Trans Artis)コメント>
AIRの運営はほんとうに忙しい。なので一歩引いて考える時間が取りにくい。現状の課題(AIR運営者の次世代育成や、根本的な意義について問いを立てて企画を練ること等々)をサポートするシステムがない。これは世界共通の問題だと思う。一緒にその問題を考えられる組織・場所として、エージェンシーが必要なんじゃないかな。
AIRを運営しているって、ほんとにすごい!自分を褒めてくださいね。

アーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」の持続的な運営のために、応援を宜しくおねがいします!頂いたサポートは事業運営費として活用させて頂きます。