見出し画像

【オルタナティブとしてのAIR】CROSS STAY Program|アイシュワリヤン・K(インド) アーティスト・トーク

2019年度のクロスステイ・プログラムにて招へいしたアイシュワリヤン・Kのアーティスト・トークの記録です。
PARADISE AIRではインド・バンガロールのアーティスト・イン・レジデンス「1Shanthiroad(ワンシャンティロード)」と提携し、バンガロールと松戸でアーティストの交換招へいを行なっています。

アーティスト・プロフィール

オープンスタジオ
日程:2020年2月7日(金)・8日(土)・11日(火・祝)
会場:PARADISE AIR ラウンジ
参加アーティスト:アイシュワリヤン・K、ニコラ咲菜恵

アーティスト・トーク
日時:2月11日(火・祝) 17:00-18:00
会場:PARADISE AIR ラウンジ
モデレータ:森純平(PARADISE AIRディレクター)
通訳:山田カイル

1Shanthiroadについて

<森イントロダクション>
2016年にアーティスト大和田俊とともにバンガロール・1Shanthiroadを訪れたことがきっかけ。当時バンガロールについてはほぼ知らない状態で行ったところ、アートシーンが盛り上がっており訪れる人が多いことを知った。

まずは2018年、1Shanthiroadディレクターのスレッシュ・ジャヤラニを招へい、松戸の街やPARADISE AIRを見てもらってから交換プログラムを開始。翌年の2019年にアーティストで1Shanthiroadスタッフのサンディープ・T・Kも招へい。今年で3人目。

アイシュワリヤン・K AIRでの活動

1Shanthiroadでも働くアーティスト。まずは自身がアーティストとして参加したAIRプログラムを紹介。

◉Theertha International Artists Collective(スリランカ)
ウェブサイト:http://theertha.org/
スリランカ・Pita Kotteに位置するAIRでのコラボレーション・プロジェクトで、冊子にまとめた。象の糞から作られた紙(参考情報)にドローイングすることを始めた。素材への興味をもつきっかけになった場所。

また、別の時期にPita Kotteで行われた国際会議をきっかけに開催されたプロジェクトでは、スレッシュがキュレーションを担当した展覧会も開かれた。
会議に参加した国の国境をかたどるドローイング(冊子)を象の糞の紙をつかって描いた。

スクリーンショット 2020-02-12 17.08.21

◉Bengaluru Artists Residency One(BAR1/インド・バンガロール)
ウェブサイト:??
バンガロールで最初のAIR。(1Shanthiroadの1年前にオープン)
そこでの「Re-Flex」展に参加、雑誌をまとめるためのゴムのような素材を使ってほうき?をつくる。政治を皮肉るアイコンでもあった。

スクリーンショット 2020-02-12 17.04.34

◉Theertha International Artists Collective(スリランカ)
ふたたび滞在。「Sethu Samudram Residency 5」というプロジェクトに参加。はじめての写真作品に挑戦。
現在の文化として、スリランカ王族の伝統的な衣装=スリランカの新郎の衣装となっている。
支配者の衣装がみなが着るようになったルーツをリサーチすると、スリランカ王朝の由来がケーララ(南インドに位置するケーララ州。アイシュの出身地)にもあるとわかった。アイシュの先祖は洗濯する人たちだったので、スリランカの文化と個人の繋がりを感じて制作した作品。

スクリーンショット 2020-02-12 17.11.51

◉Cholamandal Artists’ Village(インド・チェンナイ)
ウェブサイト:http://www.cholamandalartistvillage.com/aboutus.html
アーティストが自立運営するアートヴィレッジとAIR。1950年代後半に土地・家・制作施設をアーティストコミュニティ自らで購入し設立された場所。アイシュも3ヶ月間制作滞在した事がある。このような場所はオランダ以外ここにしかない、らしい。

あつかう素材

ドローイングにはよく自分の姿が登場するが、顔を描かないことで感情移入できる余地を残す。紙をメディアにあつかうアーティストを集めた展覧会でも自画像を制作。(かけられている花は遺影にかけるもの。いつのまにかあったそう・・)

スクリーンショット 2020-02-12 18.38.05

◉紙=素材の使い方
具象的なものを用いず/描かず表現してみたり(スレッシュがキュレーションした展覧会にて)。実験している。

スクリーンショット 2020-02-12 18.36.20

PARADISE AIRへ

◉日本のことを考えてみたときに
松戸に来るチャンスが有ることをはじめに聞いたとき、原爆・千羽鶴のことが思い出された。(小さい頃に聞いたことがあった)プロジェクトにしたいと思い、PARADISE AIRのスタッフに提案。

◉広島へのリサーチトリップ

原爆ドーム、平和記念公園・資料館、おりづるタワー、爆心地(の病院)などメモリアルな場所を巡った。今年は投下後75周年のタイミング。街はすっかり変化しているので、すぐに作品へ転換することはできなかった。
いきなり自分の感想・作品として即物的には出せないと思った。
千羽鶴をリサイクルした画用紙を手に入れたので、インドに帰ってから考えたいと思っている。

◉松戸に来てからの1週間

携帯が壊れ、外に出られず部屋にいたとき。カーペットの結び目が日本の文字の書き方(書のような)に感じて、作品を作っていた。
ドローイング作品≪Knotted Script≫をオープンスタジオにて展示。

画像6

≪Knotted Script≫(写真:加藤甫)

インドのアーティストとして思うこと

<質問タイム>
・AIRに行ったりすることは、インドのアーティストにとっては普通のこと?バンガロールは1Shanthiroadの存在が大きいような気がするが、どうか。
AIRはここ20年の文化。それまでのアーティスト像が崩れ始めたのが90年代。ギャラリーがどう扱っていいかわからない/アートマーケットが扱えない作家・作品が現れ、「自分の周りの問題とどう向き合うか?」という問いにアーティストがむかっている。
美しい絵を描き、ギャラリーが扱う、という形式も崩れ始めた。発表の場がギャラリーに求められないなら、ということでAIRへ向かうのでは。インドのアート市場も縮小している、オルタナティブとしてのAIRなのではと思っている。

・コチ=ムジリス・ビエンナーレ(南インド・ケーララ州コチ)が始まり。これからバンガロールのアートシーンはどう変化していく?

(インドで一般的に言われている事を話すと・・)アートの概念が拡張する中で、グローバルなアートコミュニティがインドにやってきている。
その多様性から見れば、ギャラリー文化で起きていた「排除」を取り除く動きだと思う。地域コミュニティに対してアーティストが向かうことを要請する形だと思うので。

・PARADISE AIRと1Shanthiroad 今後はどうなっていくべき?
アートに限らない交換が生まれるのはよいこと。1Shanthiroadでは提供している料理のCOOK BOOKを作ろうとしているので、今年、日本人のフードアーティストを派遣するのはタイミングも良い。
1Shanthiroadはどんなアーティストでもウェルカムだが、ビジュアルアーティストのためと思われがち。PARADISE AIRはもっと、パフォーミングアーツや音楽等色んなジャンルに開いていると思われていて、それが強み。
自分にとって、PARADISE AIRは日本のHome。ぜひまた来たい、プロジェクトもやりたいな。

アーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」の持続的な運営のために、応援を宜しくおねがいします!頂いたサポートは事業運営費として活用させて頂きます。