見出し画像

知恵者とコミュ(2)知恵者の笑顔

 前回、知恵者は孤独者と関わるべきだという話をした。関係の際、真っ先に習得しなければならないのは「笑顔」である。笑顔は表情の中でも特別な表情である。
 他の表情は出現であるのに対し、笑顔は表現的表情である。表現とは、文字通り表に現れるということである。ここで、賢明なる知恵者は疑問に思う。表があるということは、あの気味が悪い裏の顔が存在するのではないか。愚問だと思うかもしれない。しかし、この考え方ができるということは、礼儀が必ずしも普遍的な行為でないことを物語っている。礼儀を重んじることは重要だが、簡単なことでは本来ない。その答えは何か。
 そのためには表と裏の既成概念をまず注目すべきだ。皆表と裏は逆の概念だと考え、表が善いなら裏は悪いと考えがちだ。しかし、作ろうと思えばどっちも平等院鳳凰堂の十円玉も技術的には可能である。表から、裏が逆だと推し量ることは非常に実は困難なのだ。
 それに仮に相手が悪い心を持っていることが確実でも、態度というのは心から独立した個所を持っていることもまた本当のことだ。そもそも表に笑顔を出すということは、不可知なる裏の領域を不可知のままにして、自分の心を表から推し量ってほしいと思う行為である。これは自分のことを考えればすぐに類推できることだ。言ってみれば、愛の欠片しか持たないから、その欠片を出して愛の全体を思い描いてほしいということだ。
 それでもどうしても自分が変われないというなら、1%でいいから相手にチャンスを与えてみてほしい。自分の懐が見せられた時、相手に対して好意も見せられる。だからこそ私は孤独者の話をしているのである。
 まず、バスの運転手に、挨拶をしっかりとする。これは表現であるから、笑顔にもつながる練習になる。同じ心理状態を鍛えることによって、礼に抵抗がなくなっていく。笑顔であいさつができたとき、人はコミュニケーションに自信がつく。バスの運転手もまた、バスの中で唯一別のことをしている孤独者なのだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?