冬の読書感想文 ヨーカンドー ファーストフードアンソロジー

 OZZYも参加させていただいた、サークル「ヨーカンドー」の、ファーストフードアンソロジー本です。
 前フリはざっくりばっさりして、早速本題へ。

【おでこさんと能勢ナツキさんによる、素敵すぎる書影】

 もう、見てくださいとしか言いようがない。とてもポップかつキュートに仕上がっております。最初に店主、服部ユタカ氏から「この方にお願いしようと思っています」と、おでこさんのTwitterアカウントを紹介頂き、画を見た時、「えー、いいないいなー。この方に描いて頂けたら、すごくいいなー」と思っていたのですが、実現して喜んだのは、きっと僕だけではないはず。そしてそして、能勢なつきさんのイイ感じのデザインにより、すっごくイイ感じ(←語彙力)の書影となっております。あと、ワイの名前そこで良かったですかー!? 特等席ぃぃぃー!!!!!

餅屋餅太郎:FIRST FANTASY

 ファーストインプレッションは、「餅屋さんが餅屋さんだ!」でした。な…何を言ってるのかわからねーと思うが、彼の既刊、「ゾンビ・オブ・ザ・デッド」、「ゴスラッターハウス」等をあわせて読むと、まさにこの一言になる。「優れたガッカリ感」を売りにしている彼だけれど、餅屋さんの「ガッカリ」は、決して損はさせないガッカリ。

戸城樹(OZZY-ZOWプロジェクト):フライドポテト

 拙作。僕自身の拗らせまくった青春の供養であり、ある女性アーティストへのラブレターでもある。どんなにブサイクでボロボロで、価値のないガラクタに見えたとしても、それこそが自分自身が積み上げてきた、大切な何かである。それに気づけた時、やっと前進できるのかな、と思います。

ぷらーな:タイムマシンをさがして

 短い、短い掌編。だけれど、この量の文章に、しっかりとキャラクターとストーリーを焼き付けるのがどれほど難しいことか、書いたことのある人なら、きっとわかる。とてもよい15分ドラマを見終わったような読了感。どん兵衛にスライスチーズは、今度試してみたい。

庚乃アラヤ:ギルティはマナの味

 難しい! これは説明が難しい! なぜならば、内容に触れようとすると絶対にネタバレを踏んでしまいそうなほどに、削ぎ落とされた、しかし濃密な掌編です。「ファストフード」ではなく、「ファーストフード」という捉え方で書かれた本作ですが、スッと世界観に引き込まれ、緊迫感を楽しむことができます。あぁ、クソッ! 語りたい! 是非読んでほしいです。

植木まみすけ:マックのポテト連作 *ひと箱目*ふた箱目*

 説明不要なご活躍の植木まみすけさんの作品。服部ユタカ氏から「植木まみすけさんにも寄稿いtd……」と聞いた時、食い気味に「マジすか!!」と返した記憶があります。口に含んだウィスキーボンボンが、はらりと砕けたようなほろ甘さの読後感のひと箱目と、胸をギュッさせる(←だから語彙力仕事しろ)、ひとつの魂が追い求める彼女と、彼女の中にあり続けるなにものかの記憶の物語。必読。

森とーま:飛ぶには、たぶん、重すぎる

 僕の中での森とーまさんの、ゾンビが出てこないゾンビの人、というイメージを払拭した、SF版ウーバーイーツな作品。作品全体に、味わい深い理系みがあり、「なるほど、迅速な出前の成れの果ては、多分こういうものか!」という面白みを感じた作品。

服部ユタカ:明日への糧

 物語全体に漂う「平均化」の薄気味の悪いディストピア感もさることながら、僕が彼の作品を読むたびに感じるのは、動体視力と瞬発力を鍛えられそうな、プリミティブな高揚をもたらす戦闘シーンです。彼の代表作、「東京、雨(現タイトル『東京、雨降りしきる廃都』)」もなのですが、一手一手の攻撃の流れが、ちゃんと人間の筋肉の動きに沿っているので、スピード感と緊迫感を、脳だけでなく身体全体で体感できる。このVR感覚は、是非体験して頂きたい。

 っと、ざっくりとですが紹介して参りました。ていうか、ざっくりとしか紹介できないよ! ネタバレたくないよ! だから是非、読んでみてね。


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