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口内炎だと思ったら「がん」だった話(3) 〜 本人・家族への告知と舌がんの基本情報

3月15日、私は退院しました。
当初の予定より3日早かったです。これもスパルタな(?)リハビリのおかげ。なんとか家族が話している言葉をわかるようになって、外食もできるようになって日常生活に戻れるレベルになりました。
主治医や言語聴覚士、管理栄養士がおっしゃっていましたとおり、ここで終わりではなく、今日がスタートなのだと。


これまでのあらすじ

総合病院から「がん専門」の総合病院に紹介され何種類もの精密検査を受けることに。そして雪が降った日、「がんの疑い」が絶対視されました。ええっ!これから派遣の仕事が始まるっていうときに!?さて、仕事と治療どちらを優先するのか?

★これまでの話は下記から読めます。

2月13日(火)

形成外科初診。

この日は切断する部分の舌の代わりになる身体の部位を探すため受診しました。
まず、私自身の基本的な情報(配偶者の有無など)について一問一答があり、その後、舌の機能を維持するため自分の身体のほかの部位から移植しなければならないこと自家遊離皮弁再建術、それの注意事項について説明がありました。

多くの人は、ふくらはぎ、太もも、お腹の柔らかい部分(皮下脂肪)を舌に移植すると形成外科の担当医から伺いました。
私は、右ふくらはぎ(の内側)を第1希望、右太もも(外側)を第2希望にする
と決まりました。(黒マジックペンで取る部分をマークします。)しかし、確定ではありません。術後に移植した組織が壊死したら、右ふくらはぎ以外の部位から移植し直さなければならないからです。

生命保険の営業時代は毎日平均2万歩を歩いてきた私の脚よ、がんばれ!きっと大丈夫だ。
私は心の中で応援せざる得ませんでした。

形成外科の受診が終了しましたら、口腔外科にて再診と病気の告知を受けました。(後日、診断書を見たらこの日が「告知日」になっていました。)

2月5日に受けた精密検査(CTとMRI)の結果を聞きました。

右舌癌のステージ4a
病理組織診断名は扁平上皮がん

口腔がんの8〜9割(要するに大半)が「扁平上皮がん」と診断されるそうです。
数パーセントしかない口腔がんの中でメジャーな状態です。私も「王道」の仲間入りができて少し安心しました。

主治医は前回と同じ舌とリンパ節の画像をつかって、病状の詳細と切除する部分の説明、手術の予定を組んだことを話しました。
本来、別の患者さんの手術が決まっていたそうですが、主治医の判断でその患者さんの手術は翌週にずらされました。(急遽割り込んでごめんなさい。)

病状についてネットでいろいろ調べたものの、この日を迎えるまで頭の中で整理されていませんでした。初日も、前回も、主治医の言葉一言一句を心に留め、噛み締めることで、なんとなく自分の状態を証明しているような感じでした。
「病理組織診診断報告書」を渡され、ようやく病気が自分のことだと実感しました。

(もしかしたら、この日にがんの原因に関するアンケートに答えたかもしれません。タバコは吸わない。お酒は嗜む程度。緑黄色野菜もほぼ毎日摂っている私のどこに原因があるのでしょうか?と思いたくなる内容でした。)

最後に、入院の日が確定したので入院受付の窓口に寄りました。
そこで限度額適用認定証が使えると初めて知りました。入院当日までに「認定証」が必要なため私はさっそく加入している健康保険組合に問い合わせ、所定の用紙(ホームページからダウンロードができる)を郵送しました。

そして、いよいよ家族に病気を伝える日が近づいてきました。
私も改めて、自分の病名、治療方法、治療のその後についてきちんと理解する日になりました。

2月15日(木)

口腔外科再診。家族に病気を説明する日。

朝9時半に病院の前で家族(父母)と待ち合わせ。
母はわざわざ仕事を休んでまで駆けつけてくれて申し訳なさでいっぱい!前日バレンタインデーだったので家の近くにあるチョコレート屋さんの焼き菓子を渡しました。

私が慣れた手つきで診察券と呼び出し機を外来受付の機械で操作していると、後ろのほうで両親がきょろきょろして呆然と立っていました。私が指でまっすぐ進む合図をして2人を引っ張りました。そして3人並んで待合室のソファに腰をかけました。

30分ほど経って診察室に呼ばれました。
お互い軽く挨拶をして、さっそく私の舌の状態について主治医が話し始めました。

ぺらっと紙一枚(病理組織診診断報告書)をバインダーに挟み、
腫れものが舌の中心部まで侵している「口腔がん」、その中でも症例の大部分を占める「 扁平上皮癌 」であることを告げました。

さらに、がん細胞がリンパ節に転移していることも付け加えました。
紙の空いたスペースに、細胞と血管を簡単な図に表して、転移が最も多い箇所を説明しました。やはり1番は頸部リンパ節。次は肺、そして全身へとがん細胞が広がっていく(遠隔転移する)と話しました。
CT画像で右側の首に3〜4つ腫瘍があると示しました。

がん全体の2〜5%しか当たらないため、舌がんに患った芸能人を一例に挙げました。その方は親世代のアイドルです。

しかし私はその方よりも20歳以上も若い。一般的に、口腔がん、特に舌がんを発症する患者の平均年齢は60代。本来ならば、両親が患者で娘である私が家族同席をするケースが多いはず。そのことに主治医も悔やんでいたそうです。

「9月に歯科(で診てもらって)からすぐに僕のところに来てくれれば…」(母談)

今更ながら歯科医を責めても仕方ないのですが、市販の口内炎の薬を塗って治りを待つのではなく、「おかしいな」と思う時点で病院に行くべきだったと私自身、反省しています。

病状の説明の次に、その治療法(口腔癌手術)について説明がありました。
口腔がんの標準治療は「手術で腫瘍を取り除くこと」。原始的なやり方だと主治医も話していました。CT・MRI画像で舌の腫瘍周辺から縦横1センチメートル余分に切除しなければならないと白く写った腫瘍部分を赤い線で囲みました。

手術以外の方法として、初めから放射線療法もあるとのこと。
しかしながら、私の場合はおすすめできないと説明されました。
その理由は2つあります。
まず1つ目は、リンパ節まで転移をしているから。
早期に発見できれば放射線療法で済む場合もあるようですが、ステージⅣ(リンパ節転移)だと放射線だけではがん細胞や腫瘍をすべて取り除くことが難しいようです。
2つ目は根治的治療法に不向きだから。
がんができる部位の中でも舌は放射線が照射しにくい箇所のようです。そのためがん細胞が残存し、手術で取り除いた場合と比べると、再発やほかの部位に転移する可能性が高くなるようです。
それらの説明から、私と両親は手術することに決めました。

手術は右舌半分を切除するほかに、
リンパ節のがん細胞を取り除く頸部郭清術
舌の右側を修復する遊離皮弁再建
手術中〜術後の呼吸機能を維持する気管切開
これら「医療行為に伴い起こりうる合併症及び危険性」について説明されました。

主治医は「再発、転移の可能性」の説明を最も力を込めて話していました。
手術でがんを取り除いても、術後の病理検査の結果でがん細胞が周辺の組織に広がり、がんの残存が予想される場合などは再発や転移は免れないようです。
特に、リンパ節転移がある場合、転移リンパ節を覆っている膜を破ってがん細胞が外に広がっている可能性があります<節外浸潤>
リンパ節の膜の外に広がったがん細胞は医師が検査をしても目に見ることは不可能で、特定できないようです。なので再発・転移の可能性が高くなると話していました。
術後の結果次第では、化学療法や放射線治療が必要だと説明されました。

すべての説明を終えて、
私は「手術以外の選択肢があれば怖くないのに」と少々不満に感じましたが、根治を目指して治療に挑むことにしました。
手術に関する説明書と同意書(病院提出用と患者保管用に分かれているから検査同意書と同様に大量でした。)を受け取り、診察室を後にしました。
私の両親は終始、主治医に「よろしくお願いします」とペコペコ頭を下げて頼りっきりでした。

その後、看護師による集中治療室(ICU、HCU)でのケアについて説明がありました。入院、手術も初めてなのに集中治療室なんて未知数。術後はそんなに深刻な状態になると想像もつかず、何も知らなさすぎて怖かったです。
そんな不安を取り除くように、丁寧に集中治療室での医療的ケアや必要な物品を説明し、さらにトイレやお風呂など私たち家族の疑問まで答えていただきました。
実際にICUやHCUに入ってみないとわからないですが、入院前になんとなくイメージがついたことは術後の生活をポジティブに捉えられました。

看護師からの説明も終わり、私たち家族は病院の食堂へ。
お昼ごはんを食べることと、同意書に署名することのために向かいましたが、
私を含め、気持ちを落ち着かせること、話の内容を整理することが必要でした。

これは退院してから父が話していたのですが、
がんの告知をされたとき、もうダメだと思ったそうです。
「ものすごくガックリきた」と話していました。
顔に表れていませんでしたが、相当ダメージを受けていたようです。
(誤って患者保管用に署名して、病院提出用の署名を忘れていたので動揺が続いていたのかもしれません。)

患者本人もダメージを受けますが、家族のほうが真に受けてしまうのかもしれません。

つづく。

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口腔がん(舌がん)について

(1)〜(3)まで、私の体験とAYA世代について触れました。
しかし、肝心な病気について基礎的な情報が足りていませんでしたので、口腔がん(舌がん)について罹患数が多い世代・性別や一般的な症状、原因などをまとめました。

罹患数・年代・性別

口腔がん、とりわけ舌がんは日本人に最も多く、口腔がん全体の54.2%を占めます。発症する年代は60歳代〜70歳代が多いですが、近年は20歳代〜30歳代の患者も。口腔がんは女性より男性のほうが多い傾向にあります。
2018年に舌がんと診断された患者数は日本全国で5148(例)人です。

発症する原因

口腔がんもほかのがんと同様に原因の特定はされていません。しかし、喫煙や飲酒、口腔内の不衛生(汚れ、虫歯、乾燥など)、炎症(歯肉炎、口内炎など)が関係すると言われています。

発症した患者さんにがんの原因に関するアンケートをとっています。
設問は全部で3つでした。
(1)喫煙の有無と本数
(2)飲酒の有無とその量(ビール、日本酒、ワイン、焼酎など種類ごとに)
(3)緑黄色野菜をとっているか。

症状

口腔がんでは、がんができた部分の粘膜が赤くなったり、白色に変色したり、形が変わったりします。口の中に硬いしこりや腫れができることもありますが、初期にはほとんど痛みや出血を伴わないため、口内炎と思い込んで、そのまま放置してしまうケースも少なくありません。2週間しても口内炎がなかなか治らないような場合は、注意が必要です。

症状|口腔がんの病気について|国立がん研究センター

まさしく私も同じでした。
舌の右側面に腫れていても、まったく痛みを感じませんでした。なので市販の口内炎薬を使い切るまで放置していました。(口内炎の薬を使い切っても治らなかったので歯医者に行きました。市販薬を使用して2週間経っても効果を感じない場合病院に行くべきですね。)

粘膜の赤色や白色への変色やただれ、しこりのほか、刺すような強い痛みを伴うこともあります。進行すると口が開けにくい、食事が飲み込みにくい、話しにくいなどの様々な症状があらわれます。
あごの下や首筋にできた無痛性のしこり(リンパ節)はリンパ節転移である可能性があるため、要注意です。

症状|口腔がんの病気について|国立がん研究センター

私も舌に腫れものができてから話しにくい状況がありました。前職の上司に指摘されたあたりで進行していたのだと思われます。
首筋のリンパ節の痛みは2024年2月に入って(がん専門の総合病院を受診して)から感じました。それまでは特に違和感もなかったです。

口腔がんは、体の中にできるがんと違って、自分で簡単にチェックすることができます。ふだんから鏡で口の中をよく確認し、異変があれば、耳鼻咽喉科や口腔がんの診療を行っている歯科口腔外科などを早めに受診するようにしましょう。

症状|口腔がんの病気について|国立がん研究センター

私も、構音トレーニングでお世話になっている言語聴覚士が舌の腫れを見て歯医者の受診を勧めてくれました。そこからリレーのように、がん専門の総合病院の歯科口腔外科につながりました。

「検査・診断」「治療」「療養」については下記国立がん研究センターのホームページをご覧ください。

参照

国立がん研究センター ホームページ

がん情報サービス