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こんなかっこいい未来、ありかも。|『14歳からの文楽のすゝめ』竹本織太夫|


「文楽」を見に行ったことはありますか?

私は、まだないです。

人形劇で、人形遣いの人がいて、読み上げる人がいて、三味線で、というなんとなくの感じだけ知ってはいるのですが、「じゃあ見に行こうか」となったことがない。

※この記事にはプロモーションを含みます。

『文楽のすゝめ』竹本織太夫著

こんな素敵な表紙の本を見つけたので、私と同じように文楽をなんとなく知っているだけで未経験の方は是非読んでみてください。表紙のフォント、デザイン、本の形、めちゃくちゃかっこいいですよね。
 著者は現役の太夫(語りの役)である六代目竹本織太夫さんで、ハッと目を引く美しい表紙と、各項目で非常に詳しいけれども実に読みやすくデザインされたその工夫に「初心者の方にも楽しんで読んでほしい」という文楽界からの熱い想いが伝わってきます。

 そしてなんと、『14歳からの文楽のすゝめ』というお若い方向けのバージョンと『ビジネスパーソンのための文楽のすゝめ』というバージョンもあるのです。(黄色い表紙)

「14歳からの文楽のすゝめ」は文楽のお話の内容だけにとどまらず「しごと」としての文楽もじっくりと紹介してしてくれています。舞台が出来上がるまでのスケジュールや、裏方さんへのインタビュー、研修生制度の話までたっぷりの内容です。高校生や成人した方にも是非読んでもらいたい内容です。

  自分がまだ学生だった頃、「勉強は大事」「勉強をするほどチャンスがたくさん増える」「良い出会いも増える」「今の時代大学ぐらいは行っておいたほうがいい」「勉強してからやりたいことを決めればいい」というような雰囲気があり、実際自分への言葉として言われた記憶もあります。

 小学校から大学生になるまでの12年間の間、ずっと「勉強」というものを浴びてきましたが、「職」「職業」「仕事」「生業」「労働」について詳しく教えてもらった経験が果たしてあったかなあと思い返すとほぼ何も思い出すことができません。もちろん様々なイベントがあったので、社会見学や観劇、歴史の勉強などもしましたし、高校には進路指導室という部屋もありました。そこには大学の資料がたくさん置いてあっただけですが。「世の中にはこんな風に様々な仕事があって、色んな道がある」と「仕事」に特化して具体的な例を教えてもらったことはありませんでした。そんなことを考える暇もなく「次のテスト」に向けてまた勉強するだけでした。

 社会人になってから、「え?こんな仕事があるの??」「こういう事をお仕事にしている人がいるのか」と驚くことが多かったです。お勤め、フリーランスに関わらず本当にたくさんの仕事があることに驚きました。私自身も初めて就職した仕事が少し珍しい仕事だったので、人から「そんな仕事があるんだね」と言われました。

 大人はよく小さい子どもや若い方に「将来何になりたいの?」と聞くことがありますし、毎年人気の職業アンケートなども発表されたりします。まだ職業についてほぼ知識がない子どもたちに「なりたい職業はなに?」と質問することに意味があるのかといつも疑問に思います。

「こういう職業があることを知っていますか?」というアンケートならどんどんやってもらいたいと思うのですが。

今は世界中の情報が家にいながらでも手に入る世の中です。毎年の夏休みごとに少しずつ「しごと」「はたらく」ということについてどんどん調べていってほしいと思います。

「文楽のすゝめ」(水色の表紙)

 前置きが長くなりましたが、本の紹介へ。
こちらの水色の表紙の本は大人が「楽しんで読める」ように構成されていて、文楽に行ったことがない人でも読んでいるだけで笑ってしまう面白さがあります。コーヒー片手に、お茶や和菓子と一緒に、お酒を飲みながらゆったり楽しみましょう。

「ダチョウ倶楽部より泣けるどうぞどうぞ」「伊勢ツアーコンダクター逆切れ殺人事件」「文楽は大河ではなく月9」などなどタイトルだけでもワクワクさせられます。また、江戸時代の文化が漫画やイラストで紹介されていたり、とにかくリラックスして楽しんで全て読み切ることができます。

Amazonの試し読みページで何枚か紹介されていましたので、ここでも少し抜粋して載せておきます。

文楽とえば「ダメ男」の話が結構あるらしいです。
心中物に憧れて実際心中してしまうカップルもいたらしいので今のSNSよりすごい影響力かも。


14歳からの文楽のすゝめ(ピンクの表紙)


 こちらはお若い方向けの文楽の紹介本。まず「知ってるかい?」から初めてくれる軽さと優しさが嬉しい。人形浄瑠璃文楽、略して「NJB」です。


他にも4コマ漫画でお江戸の恋愛事情や刑罰なんかも。

 名作の紹介と併せて、今も江戸時代も変わらない人の感情の揺れや悩みについて精神科医の名越先生と語り合います。


このコーナーはすごくいい。

メインとなる太夫、三味線、人形遣いの方の紹介はもちろんですが、裏方さんがどうやってこの世界に入ってきたのかを詳しく解説してくれています。例えばサッカーだったら選手の他に、「栄養士」「理学療法士」「グラウンドキーパー」など数えきれないほどの様々な職業の方がいますよね。こういうことを知っているだけでも、将来へのわくわくする気持ちにつながっていくと思うのです。

文楽の「研修生制度」はすごい!

 文楽は、歌舞伎と違ってごく普通の家に生まれても目指すことができる職業です。「中学卒業以上23歳以下の男性」という条件をクリアしていれば、全国から研修生制度に応募することができます。

 研修費はまさかの無料で、宿舎は格安で借りることができるそうです。適性検査に合格すれば要返還ですが奨学金制度もあるとのこと。何か特殊技能を学ぶ場合、普通は専門学校に100万、200万の学費を払って教えてもらう、という感覚だと思いますので驚きですよね。研修生ゼロの年はニュースにもなったぐらいですから、募集自体があまり知られていないのかな、という印象です。

 こういう職業に関する本はどんどん学校でも紹介してほしいと思いますし、今は調べればいくらでもいい本に出会うことができるので、夏休みには中高生に是非読んでほしいです。「読書感想文」にもいいと思いますので、課題図書に拘らず、「おしごと」の下調べにもなるしオススメの一冊です。

大人もお若い方もぜひ。
表紙、かっこいいですよね(二回目)


↓ 実際に購読した方のレビューも熱いものが多いのでぜひ参考になさってください。


 




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