チャーミングさは再分配されなかった

人にはあって自分にはないものの中で、自分が欲しているものを、
「欠点」とか「弱み」、「デメリット」と呼ぶと思う。
私の中で明確に、自分にはこれが足りてないんじゃない?と思うのは、
「チャーミングさ」である。

チャーミング:魅力的で人の心をひきつけるさま。魅惑的。「チャーミングな笑顔」「チャーミングに振る舞う」    引用:goo辞書

人を惹きつける、魅了する力。チャーミングという言葉は、女性によく使われるが、実際はチャーミングさに性別は全く関係ないと思う。あなたの周りにもいないだろうか、その人の発言が特に面白いとか画期的とかいうわけでもないんだけど、なぜか話を深く聞き入ってしまう人。それは、その人のチャーミングさがそうさせているのだ。

例えば、職場の自分のデスクでお茶をこぼしたとする。お茶はデスクの上を広がってPCも少し浸水してしまった。

ここで、ノンチャーミング代表選手の私ならこうするだろう。
頭の中もしくは蚊が鳴くような声で小さくウワッ……と洩らし、周りの人に気付かれてないかキョロキョロする。周りが誰も見ていないとわかると、急いでお茶を拭く。そして黙ったままPCの安否確認。正常に作動していれば、それはもう何もありませんでしたけど?みたいな感じで仕事に戻る。もしPCに異常があれば、上司に淡々と報告する。それで終わり。

では、チャーミングな人はどうするだろうか?
まず、お茶をこぼした時点でワーッ!という。それが状況報告となり、声をかける人もいるだろうし、声をかけなくても、何かあったのかなとは思うだろう。おせっかい焼きな人なら拭いて拭いて!とティッシュを差し出してくれる。PCが動かなくなりました…というと、上司に報告しなよ、とか機材に強いやつに聞いてみる?と言ってくれる人もいる。問題が解決した後も、さっき騒いでたの何だったの?というコミュニケーションが生まれる。

チャーミングさってこういうことだと思う。マイナスな事で人を惹きつける例をあげたが、どれだけ他人を自分事に巻き込めるか、という能力。

何が言いたいかというと、こういう人間になりたいのだ。

悲しいほどにノンチャーミングな自分は、こういう人を心から尊敬するし、本当に憧れる。


最近、ノンチャーミングさを指摘された出来事がある。

ある日、職場で、チョコレートのお土産を配られた。少し暑くなってきた頃で、チョコは冷蔵庫に入れておくから持って帰ってね~とアナウンスされた。チョコ食べるの楽しみです~なんて会話もして、夕方になった。定時より早く、時短勤務の社員が帰る時間だ。数人の社員が帰宅した後、チョコの事が気になりすぎた自分は、「そういえば皆さんチョコ持って帰りましたかね~」なんていってお土産を持って来た人でもないのに冷蔵庫にチョコを見に行ったりした。そして定時。定時速攻帰宅をモットーに生きている自分は、「オツカレシャシター」とGetWild退勤を決めた。そう、冷蔵庫にチョコを置いたまま……。失敗に気付いたのは、家に着いてからだった。あーー!しまったチョコ冷蔵庫に忘れた。あれだけ人にチョコ喚起しといて忘れたのは恥ずかしいな…明日朝一でチョコを回収して昨日持って帰れた感じにしよう。そう思った。そして、家族に雑談としてチョコ忘れて帰ったから明日こっそり引き上げるわ、と言った瞬間だった。


「え、こっそり持って帰らずに、昨日あんなに言ってたのに忘れて帰っちゃいましたー!っていえばいいじゃん」

この一言にとてつもなく衝撃を受けた。
……確かに!確かにそう言ったほうが何かいい感じがする!こっそり持って帰るより!!

・人のチョコの所在を気にするほどチョコを楽しみにしていたが
・しかし間抜けにもそれを忘れて帰り
・次の日に持って帰る

この3つは何も変わっていないのに、こっそり持って帰るのとあっけらかんに言うのとではなぜか受ける印象が全然ちがう。

こっそり持って帰ったとして、それがほかの人に知られると、「ふーん、昨日あんなに喜んでたのに忘れて帰ったんだ」みたいなマイナスな感情に向く気がするし、宣言したら、「楽しみにしてたのに忘れるなんて抜けてる所があるんだなあ」とプラスな感情を抱かれる気がする。

後者のふるまいが思いつかず、前者のふるまいをしようとした自分は、根っからのチャーミング不適合者だと強く感じた。

ちなみに、次の日アドバイス通りにふるまうと、職場にちょっとした笑顔が生まれた。チャーミングさは世界を救う。


このことから、今までの自分を振り返ると、自分の身に起こった出来事を、隠そう隠そうとしていたような気がする。

小学校のグループワークの時間、嬉しくて飛び上がった瞬間に黒板の横にかけてあるデッケー三角定規に太ももを引き裂かれ大流血したが、場の空気を壊してはいけない…と思い何も言えなかったこと(今も刻印として太ももに存在しています)

友達のおばあちゃん家で開かれた刺繍教室でかわいい刺繍を完成させたが、できたーー!と持ちあげようとした瞬間、土台にしてたおばあちゃん家の座布団と刺繍作品を一緒に縫いあげ一体化させていたことに気付き、何も言わず急いで糸を全部ほどいたこと(これはバレてたら普通に怒られただけかもしれん)

小さい時からノンチャーミング街道まっしぐらである。

自分事に他人を巻き込めない理由は、たぶん色々とあるのだが、生まれた時からチャーミングさを欠けていたのかもしれない。
我が兄弟には、チャーミング大王の姉がいるからである。

チャーミング大王、大魔王、チャンピョンの姉はすごい。プラスの面でも、マイナスの面でも人を惹きつけまくる能力を持つ。

出先で姉が一声、あっ!と声を上げれば、家族はみな、瞬時に様々な想像を巡らせる。財布がないのか?右手に持っていた荷物が無いのか?今日何か別の用事でもあったのか?こういった家族の想像を超えた大爆弾を投げてくるのがチャーミングボンバーマンの姉である。

もし、一人の母親が産む子供に与えられる総チャーミング量が決まっているのなら、多分私の分のチャーミングはすべて彼女に与えられたのだろう。代わりに私は、隠蔽能力とか隠密の才を与えられたのだろう。いらねえ。


チャーミングさの総量はきっと変わらず、これからも自分にとって損な行動を一番に思いつき、実行してしまうだろう。
しかし、たまにはお茶をこぼしてアッ!と職場を騒がせてみたいと、ノンチャーミング代表は思う。


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